Contents
結論
中心静脈血液ガスでは、中心静脈血酸素飽和度のチェックができる
動脈血液ガスでは、酸素化の指標ができる
中心静脈血液ガスと動脈血液ガス同時採取の場合は、CO2 gapがわかる
はじめに
日経メディカルナーシングに、表題の件が掲載されていたので、個人的な復習も兼ねて書いてみました。
血液ガスは、ベッドサイドで計測するとても身近なツールですが、その目的は十分に理解しておく必要があります。
とはいえ、わたしを含めちゃんと理解している人は少ないと思います。
血液ガス
血液ガスには動脈血液ガスと静脈血液ガスがあります。
静脈血液ガスは、さらに中心静脈と通常の静脈血液ガス分析に分類されます。
動脈血液ガス
動脈血液ガスの利点は、おもに酸素化の評価が得意です。
酸素化とは、PaO2で評価します。
これに、FIO2(吸入気酸素濃度)で割あると、P/F比というものがでます。
例えば、通常の状態ではPaO2は80くらいとして、FIO2は0.21になります。
式にすると、80 / 0.21になります。
つまり、380です。
この値を、臨床的には「P/Fは380でした」みたいな感じで使います。
PaO2は酸素化の指標には使えるが酸素運搬の指標には使えない
PaO2の使い方は、先に書いたようにFIO2と併せて使います。
以前は、パルスオキシメーターがありませんでしたが現代では、5つ目のバイタルサインと言われています。
コロナに罹患した人には、配布されたと思います。
酸素運搬には、3つの要素が重要とされています。
ヘモグロビンとSPO2と心拍出量の3つになります。
まずは、血中の溶存酸素を増やす必要があります。
これをCaO2(動脈血酸素含量)と言います。
式にすると、CaO2 = (1.34 x Hb x SaO2) + (0.003 x PaO2) になります。
CaO2とは、100mlの血液中に含まれる酸素の量になります。
この式に、3つの要素のうち2つ(ヘモグロビンとSao2)が含まれています。
CaO2に心拍出量を掛け算すれば、Do2と呼ばれる血液運搬に必要な要素が含まれます(実際は単位をあわせるためにx10をします)。
PaO2が血液中の溶存酸素に与える影響は0.003倍
CaO2の式をみてもらえれば分かるように、PaO2は殆ど影響していません。
PaO2を擁護する派の人は、少しでも影響あるんだからPaO2みた方がいいだろと言われることもあります。
それも、もっともな意見ではありますが、実際は桁違いということになります。
SPO2 100%はPaO2 100でも、PaO2 500でも同じ100%
ショックの初療では、高炭酸ガス血症の懸念がない場合は、酸素はリザーバーで使用します。
初療の場合は、他のノイズをへらすために、とりあえず大量酸素でもよいです。
集中治療室や病棟に入室した後は、酸素100%は避けたほうが良いとされています。
集中治療室での一般的な酸素目標は、SPO2で88-92%です。
重症肺傷害の場合は、もう少し高めでも良いことがわかっています。
近年は、余計な酸素は使用しないほうが良さそうです。
当然、このあたりは個別化が必要ですので、現時点では重症頭部外傷などの場合はもう少し高めが目標になります。
静脈血液ガス
静脈血液ガスの利点は、利便性にあります。
通常静脈から採血を行います。
そのついでに血液ガスを見れば、酸塩基平衡の状態が何となくわかります。
逆にPaO2の値に関しては、無視です。
何をみているかというと、pH・PaCo2・HCO3-などです。
動脈血液ガスとの多少の乖離はありますが、多少補正をすれば評価ができます。
特に電解質の状態を見る際には、血液ガスは必須といえます。
これは、細胞内シフトの影響がどの程度あるのかを評価するためです。
中心静脈血液ガス
中心静脈血液ガスの利点は、酸素飽和度であるSaO2を見る目的があります。
2000年代前半に流行した、敗血症でのEGDT(早期目標思考型管理)で有名になりました。
EGDT自体は、3つの大規模研究とそれらのプール解析などで否定されました。
しかし、生理学的に中心静脈血酸素飽和度(SCVO2)は現代でも十分利用できます。
その解釈には多少コツが入りますが、単純にEGDTの様に酸素の需給バランスを計る上でよく利用されています。
例えばLOS
LOSとは日本語なのですが、Low output syndromeのことです。
一般的には、LCOSでLow cardiac output syndromeになります。
低心拍出量症候群ですので、何らかの新機能低下により心拍出量が低下した結果、SCVO2が低下するような状態を評価できます。
SCVO2は動脈血液が組織でどの程度消費されたかをみる指標になります。
65-70%程度が指標になります。
ということは、動脈血のSaO2が95%だとして、組織で20%消費されて肺に入る前の血液が75%になります。
これが通常の状態です。
酸素消費が亢進すると、組織での酸素需要が増加しますのでSCVO2は低下します。
この場合は、挿管したり鎮静をかけて代謝(VO2)を下げてあげることが必要になります。
LOSの様に心拍出量が低下して、SCVO2が低下する場合は心拍出量を増やしてあげることが必要になります。
心拍出量を分解すると、1回拍出量 x 脈拍数になります。
このどちらかにアプローチする必要があります。
一般的にはドブタミンなどが必要になりますが、ドブタミンはその一方で組織代謝を亢進させます。
基本的には必要悪と考え、必要最低限使用し、SCVO2や心拍出量をモニターしながら減量していくことが多いです。
重要なのは、血圧と心拍出量は全く別物と考える必要があります。
血圧が高くても、LOSである場合はよくあります。
LOSは四肢が冷たいとか食欲がないとか、他のパラメータと併せて総合的に判断していきます。
動脈血液ガスと中心静脈血液ガス
ようやく本題にたどり着きました。
単純に、ここではCo2 gapをみます。
端的にここでのGapが6以上だと、何らの循環障害があると考えます。
例えば、乳酸の上昇は組織代謝の亢進などがあります。
組織代謝が更新しているのであれば、組織代謝を落とすか組織代謝に見合うだけの心拍出量の増加で対応します。
その結果、SCVO2が70%以上あればひとまずは安心ということになります。
CO2 gapのおもな原因は、心拍出量の低下になります。
乳酸も上昇せず、SCVO2も正常の場合には、心拍出量の低下や微小循環傷害などを疑い心拍出量を見直します。
極論でまとめると、乳酸は組織代謝、SVCO2は酸素需給、CO2gapは心拍出量の評価になります。
本来は、こんな簡単ではありませんが・・
まとめ
動脈と静脈の血液ガス同時採取には、Co2 gapが評価できる
循環の評価には、乳酸・SCVO2・CO2 gapが使いやすい