看護

黄色ブドウ球菌(MSSA)に対する抗菌薬

結論

看護師の初学者向けに、黄色ブドウ球菌にたいする抗菌薬の使い方をかいてみました

基本的には、セファゾリン(CEZ)でOK

髄液移行性を考えるなら、CEZでは戦えない

Inoculum effectも少し考える

グラム陽性球菌

グラム陽性球菌とは、Gram染色でまるい形をして、青く染色される細菌全般のことです。

Gram染色が臨床的に問題になるのは、ほとんどグラム陽性球菌とグラム陰性桿菌です。

そのため、まずはこの2つを憶えましょうと言われます。

グラム陽性球菌の代表は、黄色ブドウ球菌です。

グラム陰性桿菌の代表は、いろいろありますが大腸菌でしょうか。

黄色ブドウ球菌は特別

何が特別なのかというと、1つは血液培養のフォローが必要な細菌の代表です。

なんで培養フォローが必要なのかと言うと、「ねちっこい」からです。

黄色ブドウ球菌は、めちゃめちゃ急激なショックになることは少ないですが、一度血液培養から検出されたらどこかにくっつきやすいです。

どこにくっつくかと言うと、骨とか異物(人工弁や人工関節など)です。

これ、一回異物にくっついてしまうとバイオフィルムの形成などで、基本的には異物の除去以外に選択肢は少ないとされています。

とはいえ、人工関節や人工弁を「じゃあ取りましょう」なんてことは安易にはできません。

ちなみに、バイオフィルムはお風呂場にできるヌルヌルです。

基本的には擦って物理的に除去しないと落ちませんし、他の選択肢ではカビキラーのような強力な洗浄剤が必要になります。

当然人体には、抗菌薬を使いますがなかなかコントロールできないことも珍しくありません。

まとめると、黄色ブドウ球菌はねちっこいからいろいろな場所にくっつきやすい、だから培養のフォローが必要だし治療期間も血液培養陰性後から14日間が一般的です。

培養

培養の基本は、血液・尿・痰の3つ取ればオッケーです。

なんでかと言うと、多くの感染症の原因をカバーできるからです。

この3つ以外には、フォーカスを探して局所の培養を提出します。

例えば、腸腰筋膿瘍であれば、腸腰筋をCTガイド下穿刺してもらい培養に提出します。

黄色ブドウ球菌の場合は、先にも書いた様に「血液培養陰性化」の確認が必要な細菌です。

一般的には、治療開始後48時間程度で培養を採取することが多いです。

陰性が確認できなければ、抗菌薬治療期間は延長します。

つまり、持続菌血症ということになります。

持続菌血症の代表は、感染性心内膜炎です。

黄色ブドウ球菌による血流感染のことをSABと言います。

つまり、持続菌血症や黄色ブドウ球菌の場合はSABバンドルが適用されます。

バンドルとは束のことで、培養フォローだけでなく心エコーで感染性心内膜炎がないか、抗菌薬の治療期間や抗菌薬の狭小化などが含まれます。

まとめると、黄色ブドウ球菌の血流感染(血液培養陽性)には、感染性心内膜炎の所見がないか、骨髄炎の所見がないか、異物がないか、フォーカスはどこかということをチェックする必要があります。

抗菌薬

Definitive therapy

De-escalation

Targeted therapy

Narrowing

これらは、培養結果に基づいて抗菌薬のカバーする範囲が最も狭いものに変えるという考え方です。

つまり、培養を提出しなければこれらの抗菌薬の変更はできません。

狭いとか広いと言われても、わたしも最初は意味がわかりませんでした。

たとえば、広域抗菌薬と言われてもメロペネムが広域ということはわかりますが、セフトリアキソンはどうなんだろう?と思っていました。

調べても、広域の基準がクリアカットに書かれていません、多分。

どこからどこまでが広域かと言うと、一言で説明するのはやはり難しいです。

とにかく最も狭い範囲で治療できるものに、なるべく早く変えるという戦略こそが重要ということです。

狭い範囲(カバーする範囲)の抗菌薬の代表は、セファゾリンやペニシリンなどです。

これらは、セファゾリンの場合は世代が上がる、ペニシリンの場合はペニシリナーゼ阻害薬の合剤といった感じでカバーする範囲が広くなっていきます。

まとめると、適切な培養検体を提出した結果検出された細菌を、最も狭い範囲でカバーできる抗菌薬に早期に変えるということです。

Inoculum effect

めちゃざっくり言うと、細菌の量が多い場合は狭い範囲の抗菌薬では効きづらくなるイメージです。

細菌の量が多い代表は、膿瘍や感染性心内膜炎などがあります。

膿瘍の場合の基本戦略は、抗菌薬ではなくドレナージになります。

例えば、セファゾリンが培養結果で効くからといってセファゾリンを選択すると、効きが悪くなることがあるらしいです。

通常はMSSAであれば、セファゾリンで戦えますが、膿瘍や感染性心内膜炎の場合は、敢えてセフトリアキソンで戦うことがあるようです。

基本的には、Definitive therapyで良いはずですが、抗菌薬の治療効果判定はあくまでも臨床的改善です。

臨床的に改善が乏しいようであれば、抗菌薬をセフトリアキソンに変える事もあり、なのかもしれません。

MSSAに対するセフトリアキソンとセファゾリン

繰り返していますが、MSSAにはセファゾリンの1対1関係で憶えても良いくらいです。

MSSAへの強さはセファゾリンの方が上です。

しかし、観察研究レベルでのメタ解析(PMID: 34839007)では、MSSAにはセファゾリンの優越性は認められていませんでした。

セフトリアキソンを考慮する場合は、髄膜炎の場合です。

髄膜炎に対する使い方は、2gを12時間毎になります。

セフトリアキソンは肝排泄なので使いやすいのですが、時に胆嚢炎を誘発するのでチェックが必要です。

その場合は、セフォタキシム(腎排泄)を変わりに使います。

まとめ

MSSA菌血症には、SABバンドルで対応する

MSSA菌血症には、セファゾリンでよさそうだが臨床的に改善が乏しい場合はInoclum effectを考慮することもある

セフトリアキソンは使いやすいが、広域抗菌薬と考える

セフトリアキソンは胆嚢炎を起こしやすいので注意

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