今回の論文
Crit Care 27 , 368 (2023). https://doi.org/10.1186/s13054-023-04653-w
Critical care に掲載された論文です.
論文のタイトル
Sonometric assessment of cough predicts extubation failure: SonoWean—a proof-of-concept study
というタイトルです.
はじめに
人工呼吸からの離脱は昔から現代に至るまで,様々な手法が活用されてきました.
最も一般的なものは,自発呼吸トライアルでSBTと呼ばれるものです.
SBTは,例えばPEEP5,PSV5,FIO2<0.4 といった条件で行われます.
この最終テストをクリアすれば,抜管の確率が高くなるということになります.
とはいえ,SBTは毎日のルーチンと言っても過言ではありません.
SBTをクリアすれば,抜管の確率が高まるのですが,抜管後において問題になるのが咳の力になります.
これは,咳をする力と痰の量を天秤にかけ,通常は気道クリアランスを保てるだけの咳の力がある場合に抜管を行うということになります.
しかしこのあたりの咳の力を評価するためには,SBTという試験はさほど寄与していません.
多くは,このあたりが問題になります.
Cough peak flow
そのため,臨床的によく利用されているテストとして,Cough peak testというものがあります.
患者さんに任意に咳をしてもらって,咳のPeak flowが60を超える場合は(いろんなカットオフが用いられます)気道クリアランスを保てるという判断になります.
今回は,咳の音を定量的に評価したものになります.
評価には,定性評価と定量評価があります.
定性評価とは,強い・弱い・そうでもないといった感じの評価方法です.
定量評価とは,数値で表示されます.
例えば,弱いは20・強いは40,といった感じです.
今回の研究です
24時間以上の人工呼吸管理を受け,SBTに成功した患者さんが対象となりました.
SBT終了時に,3回の連続した定量的音波試験を行い,3回の咳の音量を定量的に評価しました.
著者らは,これをSonoscoreと表現しました.
結果
1年間で106名が対象となり,年齢は65歳,男性60%でした.
人工呼吸期間は4日で,抜管失敗は14%で発生しました.
Sonoscoreは抜管失敗群で58db,成功群で75dbでした.
ROC曲線を描くと,0.91がカットオフで,sonoscore<67.1dbは感度93%,特異度82%でした.
コメント
とても興味深い研究方法といえます.
抜管失敗が14%というのは,割と一般的なのですが,日本においてはやや多い印象があるかもしれません.
100人抜管して,14人は再挿管ということは,10人抜管したら1人以上は再挿管ということになります.
この再挿管率は,実は所感であって定量的に評価しなければわからないものです.
そのため,自施設のデータは必ず振り返り還元されるべきといえます.
結局のところ,咳が弱い場合でも,お試し的にSBTクリアしていれば抜管し,やっぱりダメだったね,ということで再挿管になることが多い気がします.
それは,つまるところ抜管してみないとわからないという事もあるからです.
咳の原因にもよりますが,シチュエーション次第では再挿管なし,という前提で抜管されることもありえます.
過去は意識障害の抜管は,お試し的に行われていましたが,現在はENIOスコアなどが用いられています.
ENIOに代表されるように,過去感覚でおこなっていたことを,定量的に評価し実践することはとても重要だとおもわれます.
そして,今回の研究の興味深いところは,音を評価している点です.
今回は,人工呼吸の抜管に使用していますが.再挿管のリスク評価にも使用可能と思われます.
他には,高齢者の気道クリアランス評価目的でも.使用されると評価が幅広くなるように思いました.