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結論
診療看護師(NP)はこれからも増える
看護への貢献を忘れない
たくさんの施設で,どの程度の診療看護師(NP)が適正なのかはわからない
ただ未来を予測するのは,現存するNPのハイボリュームセンターが先駆けとなるはず
各施設における診療看護師(NP)の数
診療看護師(NP)の先駆けといえば,国立病院機構だと思っています.
これは個人的なバイアスが掛かっているかもしれませんが,半分はあっているはずです.
当時,認定看護師や専門看護師の手当てが,数千円だったのに診療看護師(NP)は6万円という決断をされた,当時の国立病院機構の理事長の矢崎先生らの先見の明には頭が下がります.
当然ですが,この時点でここまでの評価をいただいたおかげで,今の診療看護師(NP)が在ります.
看護師の場合は
例えばですが,この時点で認定看護師や専門看護師と同じ値段で良いだろう,という判断をされていたら今の診療看護師の世界は大きく変わっていたかもしれません.
認定看護師や専門看護師を卑下するわけではなく,これらの職種も診療報酬に直結する(お金になる)成果を導き出している部分もありますので,同額にするかはおいておいて,もう少し手当をつけても良い気もします.
といいますのも,各資格の存在意義(レゾンデートル)は,診療報酬の多寡に多くは依存します.
お金にならない職種をたくさん雇っても,病院側としては困るわけです.
一方で集団として評価されているのが看護師になります.
看護師の場合は,7:1などの患者看護師比率が決められています.
多くの病院は,このギリギリを攻めることになります.
ただ,ギリギリを攻めすぎると体調不良で休んだ際の代打不在になったり,日常の業務のクオリティが低下したりと,金銭面以上に不利益のほうが多くなることが予測されます.
ある程度は余裕を持って勤務表の作成を行う必要が本来はあるはずですが,多くの病院はそうではありません.
特に看護師は離職率が高いことでも有名です.
離職率を下げるには,1つは子育て世代のサスティナブルな活躍が挙げられます.
子育て世代の場合は,家庭でも忙しい代わりに仕事が終わると迎えに行く必要があります.
時間が決きめられているため,夕方5時の迎えであればその時間までに仕事を終わらせる必要があります.
加えて子育て世代の場合は,中堅以上が多くなります.
中堅の不足は臨床現場でも多くの混乱を生じます.
看護師の場合は,経営面から見ると給与が安くて休みの制限も少ない若手を起用しがちです.
しかし,若手の育成には多大な労力を使います.
専門的な仕事である看護師の場合は,誰でもできる仕事と思っている上層部との大きな乖離がときに見られます.
中堅かつ子育て世代の台頭は非常に重要だと思います.
一方で多様性の世代ですので,子育てを必ずしもする必要はありませんし,業務以外で勉強をする必要もありません.
勉強するひとは,パレートの法則(80:20の法則)のように,組織は上位20%により創られるというのと同じく,べ供している人が牽引して組織を醸成していけばよいわけです.
メリハリを付け,週末は休んで日中はきちんと仕事を行うという.
また子育て世代の場合は,週末の保育園が休みの影響で月~金で日勤業務が中心になります.
この勤務体制は実は理想的で,夜勤などのバラバラな勤務をつなぐ役割も担うことになります.
一般病棟に出る際には,これまでの経過もとても重要になりますが,経過の申し送りとTodoのような問題点を明らかにする作業は,トランジションという観点からもとても重要だと考えています.
臨床看護師は看護師の仕事をしなくてもよいのか?
これは難題かもしれません.
医学的な側面に強みを持つ診療看護師の場合は,看護師が看護業務だと思っている仕事を行うことにあまり魅力は感じません.
ポイントは看護師が看護業務だと思っている,という部分になります.
当然全ての看護師が該当するわけではありませんが,何も考えずに行っている業務のことを看護師業務と称している場合があります.
代表はおむつ交換や体位交換などです.
おむつ交換などは,介護士さんやヘルパーさんでもできるわけです.
ただし,集中治療室などの循環が不安定な場合は,看護師としての知識の実践が必要になりますね.
体位交換も同じで,ルーチンの体位交換ではなく,背景やベッドを踏まえ何を目的に体位交換をしているのかということが看護なわけです.
2時間毎に体位交換を行うだけであれば,誰でもできるわけです.
そして,鎮静の調整も看護師で行えますので,状況次第では患者さん自身で行える場合も意外にあるはずです.
インスリンを使っている方の血糖が低い場合も,血糖が低いことを共有するまでは良いのですが,アセスメントが抜けがちであるのが問題になります.
診療看護師がこのあたりの,アセスメントを補うことも可能であると感じます.
診療看護師のHigh volume center
診療看護師の成果の場合は,過去は1ー数名の比較的優秀な診療看護師により成果を提示してきました.
ただこれからの時代は,ある程度数も増えてきますので集団としての成果が重要になります.
集団としての成果を提示しつつ,ここの能力を活かして行く形です.
独立型の救命センターでは,スペシャリティは救急になりますが,サブスペの場合は各診療科の得意な集団で形成されています.
臓器た横断的な救急という側面からは,ベーシックな知識・技術をもちつつ,ベーシック部分の上乗せとしてのスペシャリティを各自が持つことで,優秀な組織が醸成されることになります.
診療看護師の場合はどのように活躍するべきか
わたしの場合は,集中治療・総合診療をベースとして育ってきましたので,これらの知識・技術を活かすというのが最も得策だと思っています.
診療看護師を多く採用している,大病院ほどこのような診療看護師が求められると個人的には思っています.
大病院の場合は,内科・外科問わずそれぞれ専門的な検査・治療を行うために,病棟不在の場合が多くなります.
例えば,外科系の場合は全診療科手術がメインになりますね.
内科系の場合は,循環器内科であれば経皮的大動脈弁置換や僧帽弁クリップなど,消化器内科であれば内視鏡や肝臓癌の焼灼や血管内治療,腎臓内科でも生検やシャント増設,脳神経内科でも血漿交換や血管内治療といった具合に,病棟不在のことが多くなりがちです.
そして,スペシャリティをもつ医師に心地よく専門領域の治療や診断にあたってもらうのも,診療看護師の役割だと思います.
治療の途中で,あの人の血糖がとか血圧が,と病棟の細かな連絡が来るようでは治療に集中できないですよね.
そのため,わたしの場合はベーシックな知識・技術は,総合診療・救急・集中治療をベースに組み立てるのが理想であるように思います.
病棟業務の8割が担えるようになれば,それだけで看護への貢献に繋がります.
医師の場合も,指示を見直さずに活動範囲がベッド上になっていたり,不要な尿道カテーテルの抜去を行っていなかったり,といった怠惰といっては失礼ですが,抜けが生じることもあり得るわけです.
特に近年はアンケート調査も容易に可能ですので,自施設の看護師への貢献は調査可能です.
看護師への貢献と看護への貢献
これは,師の有無以上に大きな問題を含みます.
看護師への貢献は,先程も述べたように看護師の業務への貢献ということになります.
例えば,体位交換やおむつ交換を手伝う,といったのは看護師への貢献になるかもしれませんが,看護への貢献になるのかと言われれば,この時点ではまだよくわかりません.
看護とは科学的であるはずですので,何らかの根拠を持ち思考し判断する必要があるわけです.
思考しないままのルーチン業務を診療看護師が手伝えば,看護業務への貢献≒看護師への貢献となるかもしれませんが,これでは本質ではありません.
実は診療看護師でも同じ問題を抱えていますが,医師の指示がないと動けないということは同じです.
診療看護師の場合は,指示の代行入力などを行っていますので,先に上げた不要なカテーテル類の抜去やバイタルサインの不要な測定などの変更もタイムリーに行っています.
食事やリハビリテーション,転院調整なども各スペシャリストと相談しつつ進めていますので,実はこのあたりは看護の延長線上であり,看護への貢献といえます.
また,メディカルな側面からも病態の生理学的アプローチなどを含め,医学的考察がADLや食事,必要な薬剤の削減など看護への貢献に繋がってくると考えます.
今回はこのあたりにしたいと思います.
結論
診療看護師の未来は,診療看護師のハイボリュームセンターが牽引していく必要がある
看護への貢献は忘れがちだが,とても重要
看護師への貢献は,また別問題なので首から上を使った貢献が重要