診療看護師(NP)

勉強会の内容は何からはじめようか

HCU(High care unit)ベースから

HCUとは,集中治療室(ICU)と一般病棟の間のような認識の病棟です.

Step down unit(SDU)とも言われます.

一般床より重症度が高く,集中治療室よりは低いということになります.

関与している方々からすると,割とあたりまえの認識ですね.

 

HCUの役割

1つは,重症の患者さんであるということ.

もう1つは,病棟への移動を見据えた( SDU)としての役割です.

重症患者さんへのアプローチは,一般的なICUでのプラクティスを応用すればよいわけです.

ただ,ICUの場合はナースの数も比較的潤沢ですし,患者さんの相対的な数も少ないわけです.

例えば,4時間毎の採血や,2時間毎の尿量や輸液量のバランス計算したりなどは困難です.

このような,ICUでのアプローチをHCUでも適用しようとする場合があります.

そうなると,病棟への移動も見据えていないですし,HCUに見合った戦略では無いということになります.

つまり,ICUに準じた戦略をとった場合は,受け入れる病棟のスタッフは困るわけです.

突然,こんな内容で治療を継続する必要があるのか?と。

 

ICU管理の延長ではいけない症例

以前,ICUから転院してきた患者さんがいました.

典型的な低活動性せん妄で,話している間に眠ってしまうような状況でした.

中心静脈カテーテル(PICC)・Aライン・尿道カテーテル・ADLもベッド上に制限され,気管切開されていました.

経口摂取も始まっていませんでした.

ICUからすれば,これが最適な治療なのかもしれません.

ICUでの経過を一旦棄却し,普通に考えて不要なライン類を協議の結果抜去し,リハビリを強化しました.

傾眠の割に,夜間の不眠がありましたので睡眠薬も精神科と協議し調整し睡眠環境も整えました.

その結果,数日で劇的な回復をみせ,本来はとても陽気な人であることが判明しました.

すぐに気管切開チューブも不要になりました.

診療看護師が単独で行っているのではなく,チームで行った結果です.

 

ICUではMedicalな側面を極限まで追求するため時に見えなくなる部分もある

結局,ICUのいち部分しかみていないと,Medicalな側面からのアプローチが相対的に強くなり,特に若い医療者ほどそのような傾向にあるように思います.

PICS(集中治療後症候群)の概念やバンドルが提唱されて久しいです.

まだまだ先を見据えたアプローチができているのかと言われると"Yes"とは言えないでしょう.

ICUの当たり前を見直すことは必要なことです.

ICUだからご飯を食べてはいけない,トイレに行ってはいけない,というのはおかしいわけです.

 

不要なカテーテル類は即抜去

そして,ライン類がADLの制限になりますし,感染の原因にもなります.

加算の問題もありますが,不要なラインは即刻罰する必要があると感じています.

そして必要になればまた留置すればよいわけです.

経鼻胃管も同様に,気管挿管をした際のサンプチューブが長期間留置されているケースを散見します.

サンプチューブはドレナージの目的です.

本来であれば抜管の際に同時に抜去します.

そして,嚥下評価の結果必要に応じて栄養目的のチューブに入れ替える必要があります.

太いチューブは副鼻腔炎・不快感・嚥下などの観点から,良いことありません.

ただ,ICUでのMedicalな治療を適用した場合,医療者としては楽なわけです.

不穏になれば鎮静をかけ,痛みがあればオピオイドを増量し.

ICUの役割は立て直すことなので,それで良いのかもしれませんが,やはり先を見据える努力はすべきです.

 

クレイジーとコモンセンスは時に紙一重

たしか2010年のLancet誌に無鎮静管理の有用性が示されました.

その後の追試では良好な結果は得られませんでした.

筆頭著者のStrom氏は,その後Crazy idea or common sense?というコメントを出していました.

当時のナースはCrazyだ,かわいそうだ,と言っていたのを記憶しています.

当時,わたしが勤務していた施設でも無鎮静管理が標準でした.

そして自己抜管が多いと言われたこともありました.

けれども,データを見返すと2例程度しか発生していないことをわかりました.

データというのはこのように使うとよいですね.

そして,データは嘘をつきません.

 

利尿可能性ヒューリスティック

これは,身近でおきた体験を過剰に意識してしまうことです.

例えば,風邪の診断をした人が後に心筋炎だとわかり,しばらくは風邪(だと思っている)に心電図が多発するような状況のことです.

 

重大性とよく起こる事象

物事は,ConsequenceとLikelihoodに分けられます.

飛行機事故が最もわかりやすく,飛行機事故で亡くなる人というのは,自動車事故と比較にならないほど少ないわけです.

ただ,事故の衝撃が大きいためにセンセーショナルに発表されます.

あたかも,飛行機事故で死亡する人が多い印象をメディアは植え付けます.

そして,それは利用可能性ヒューリスティックとおなじく,病院でも起こっています.

 

まとめ

話が少しそれた部分もあるかもしれませんが,HCUの目的を意識して,先を見据えたアプローチを模索してみよう

そして,トランジションともいえますが,ナースのケアが増える場所でもあるので,共同して良質な成果を提示していく必要があります

 

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