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HCU(High care unit)でまず評価すべき事項
ICUと病棟との中間で,一般的な流れとしてはICU→HCU→病棟となっています.
逆の流れ,病棟→HCUというのもあって良いと思います.
加算の関係もあり我々の施設では行われていないのが現状です.
By system
ICUでは,臓器ごとにアセスメントを立案するBy systemという方法がとられている施設があります.
これは単純に上から下まで,それぞれ抜けなく行うためのものです.
例えば,#脳・神経という大枠があり,その下に#脳梗塞 などのプロブレムが入る形になります.
- 【脳神経】
- #脳梗塞
- #高血圧
#Covid-19で呼吸障害のある場合
デキサメタゾン・レムデシビル・ヘパリンカルシウムの治療が行われます.
デキサメタゾンは,血糖を上昇させたり.胃潰瘍の原因となる可能性もあります.
(ステロイドに関しては明確な関連性とまでは言えないようですが)
そのため,最後全体を見渡しストレス潰瘍予防や血糖管理が抜けていないかチェックする必要があります.
By problem
By systemと対をなす存在です.
By problemは分わかりやすさがあります.
先の#Covidの場合だと,この中に予防や血糖管理などが含まれることになります.
By systemだと,血糖管理は
#代謝内分泌
で評価されますし
#予防
でストレス潰瘍予防の適応を評価することになります.
とはいえ,まずは抜けのないようにBy System的な観点から始めてみようと思います.
By system大枠の評価
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脳神経
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循環
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呼吸
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消化器・栄養
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腎電解質
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代謝内分泌
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血液・凝固
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感染症
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その他
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デバイス
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予防
概ねこのような感じでそれぞれの臓器別に評価が行われます.
我々が行う,最も基礎的な部分を挙げてみようと思います.
脳神経
頭蓋内の問題
ここでは,頭蓋内の問題が扱われます.
例えば,脳梗塞,脳出血,くも膜下出血,頭部外傷(TBI)などです.
通常は2次性脳損傷予防の頭文字であり,GHOST-CAPやMANTLE bundleなどがあります.
Mild TBIくらいは触れても良いのかもしれませんが,後回しにしようと思います.
PADIS
意識しないとプロブレムに上がってこないので注意が必要です.
それぞれの頭文字で,疼痛・不穏・せん妄・不動・睡眠になります.
例えばベンゾジアゼピンは,高齢者のせん妄や転倒リスクにもなるとされています.
とはいえ,不眠時の指示として現在でも当たり前のように使われている場合があります.
このあたりを,基礎的な部分から少しだけ実践に使える形式に落とし込んで見たいと思います.
循環
ショックの分類
循環は,ショックがあれば,ショックの原因を4つに分類する作業から行われます.
4つのショックを2つに分ける
ショックは大きく2つにわかれます.
頸静脈が張るタイプ(心原性・閉塞性)と頸静脈が虚脱するタイプ(循環血液量減少・血液分布異常)です.
当然,臨床的にはOverlapしています.
まずはショックの原因で最も多い敗血症の初期蘇生としての対応を実践に落とし込める形で行いたいと思います.
どうしてもボリュームが多くなりがちなので,細かくスペシフィックに行おうと思います.
デカルトは,困難は分割せよと言いました.
そのように,分割して行っていきたいと思います.
呼吸
循環とおなじく,低酸素血症の原因を大きく4つに分類して評価を行います.
呼吸不全は I型とII型に分類されます.
シャントの際のPOS(Platypnea orthodeoxia syndrome)などは応用編なので,肺塞栓の評価なども実践では重要かもしれません.
消化器・栄養
肝障害
消化器で多いのは肝障害ですね.
薬剤性が多いので,いつからどの薬剤を使用しているのか,という観点から評価が行われます.
薬剤性の場合は薬剤をOFFするだけでよいのですが,胆嚢炎など重症患者さんでは多いのでこのあたりの評価もコモンです.
栄養管理
栄養は栄養士さんがいれば,大抵は任せているのが現状です.
介入してくれるようになってから,1つ考えることが減りとても楽になりました.
また,クオリティも上がっているはずです.
ここでは,経路・目標カロリー・蛋白量,再栄養症候群(Refeeding syndrome)の層別化などになると思います.
また,便秘も多いので評価が必要です.
便秘や下痢もそれぞれ定義がありますので,きちんと評価したいですね.
腎電解質
急性腎障害
ここでは,急性腎障害(AKI)が最も多いでしょうか.
まずは,Stage IのAKIは必ず覚えましょう.
Stage I AKIはこれから患者さんが悪くなるサインの1つなので,必ず評価する必要があります.
電解質異常
電解質は,ICU/HCUではよく補正が行われます.
何をどのように,どのような根拠で補正を行うかは実践において,必要な知識ですね.
ここでは酸塩基平衡も入ります.
ボストン法やスチュワート法などで評価されます.
まずは血液ガスの基本的な評価と,その後見落としがちなケトンなどの評価になります.
スチュワート
スチュワート法では,外から動かせる要素は3つとされています.
- Na-Clを代表としたSID
- 人工呼吸中は,PCO2
- 弱酸であるアルブミンのAtot
これらのSIDの部分は,電解質補正を行う際に必要なアセスメントになります.
代謝内分泌
血糖管理
ここでは血糖管理ですね.
ICUでの血糖管理は140-180mg/dlというのが,NICESUGAR Trial以降一般的になっています.
この目標を達成するためにどうすればよいのか,とスライディングスケールは基本的には悪だということを学んでもらいます.
他には,甲状腺や副腎機能,頭部外傷や蘇生後脳症後でのホルモン補充の評価などは,HCUでは必要な知識かもしれません.
血液・凝固
血液検査の結果により,それぞれプロブレムが立案されます.
貧血があれば,MCVを見て精査を行う.
鉄欠乏性貧血であれば,鉄補充をしつつ原因精査の内視鏡を行う,というのはHCUでは必要ないかもしれません.
病棟や退院後に繋ぐ,という観点からは必要な知識になります.
感染症
感染症は最も多いです.
まずは上位4つくらいを市中と院内に分けて考えることが必要だと思います.
感染症の議論を行う場合は,トライアングルと呼ばれる,抗菌薬・感染臓器・病原微生物は必ず抑える必要があります.
加えて,本人の免疫状態もどこまで細菌やウイルスをカバーするのかという観点からも,重要になります.
抗菌薬は院内で使える頻度の高いものとしては,片手で数えられる程度だと思います.
それらの抗菌薬を,内服スイッチも踏まえて議論したいと思います.
ただ,個々の部分は長くなるので,このあたりも分割して行って行く必要がありますね.
その他
その他は,例えば外傷の骨折やSocial面などが入ると思います.
ひとまずは,後回しにしようかどうかと言った感じですが.
Social面は割と重要な問題なので,やはり取扱ったほうが良さそうですね.
デバイス
デバイスは必ず毎日評価し,その必要性を評価する必要があります.
尿道カテーテル留置の基準もあります.
有害性の理解が必要ですね.
予防
肺炎,深部静脈血栓症,ストレス潰瘍予防が大きな3つの柱です.
他には,
- 骨粗鬆症
- インフルエンザやCovidのワクチン
- ステロイド使用の際のPCP(肺炎)予防
- 脾臓摘出や広範囲に塞栓した脾梗塞などの肺炎球菌ワクチン
- 免疫が極度に低下している方のNTM(非結核性抗酸菌症)
なども評価されます.