結論
- 職人気質は後進が効率よく育ちづらい
- 職人は職人を望む顧客により残存している
- とはいえ、長年の経験は重要
- テクノロジーを使うことで職人は減っていく
職人とは
職人とは、いわゆる頑固で怖い師匠のようなイメージがあります。
例えば、寿司職人がいます。
巷では、回転寿司を求めて多くの顧客が行列を作っています。
回転寿司は2貫100円程度でもありますが、職人の寿司はその10倍も20倍も、それ以上です。
何故、同じ米と魚を使って造った、凄くシンプルな寿司がこれほどまでにも値段が異なるのでしょうか。
職人を望む顧客
職人を職人たり得ているものとして、顧客があります。
顧客は、職人を求め職人の創る寿司はとても美味しいものであると認識されます。
その結果、この寿司は美味しいということで、噂が広まり職人の寿司を求めて集まるということになります。
寿司と似たようなもので、うなぎもあります。
うなぎに関しても、さばくのに数年、焼くのに数年といった感じで、一人前になるのには10年以上かかるとされています。
多分、素人が食べた寿司やうなぎは3年目の職人と15年目の職人とでは、食べ比べなければよくわからないはずです。
一方、食べ比べれば分かるかもしれません。
問題点は、食にそこまでこだわるかどうかということです。
世界には、グルメと呼ばれる顧客や評論家がたくさんいます。
個人的には、あまり高価な料理には興味もありませんしお金もありません。
けれども、舌が肥えてくるとその微妙な味の違いが分かるようになってきます。
ワインなどのお酒も同様に、1本1000円のワインもあれば1本100万円のワインもあります。
つまり、グルメとはお金を「そこ」に費やすことができる人にとっての特権であり、趣味ということになります。
趣味の延長線上の職人であれば、職人の存在意義はあります。
本当に職人は必要なのか
一方、趣味ではなく日常生活の延長線上の職人は不要といえます。
つまり、日常生活では毎日高価な食事に時間もお金も費やすことは通常困難です。
けれども、職人が創る寿司は美味しいのです。
おいしい食事を食べたいという、我々一般市民にとってはコストありきです。
つまり、コスパが良いということにつきます。
値段が安く、美味しく、さらには健康にも良いという三方良しの状態であれば、顧客は増えます。
顧客の増加に対応するには、回転を上げる必要があります。
つまり、寿司職人を増やすのではなく、寿司職人を模倣したテクノロジーを使うというのが最も効率が良いです。
寿司職人の場合は、その日の体調によっても多少握り方や切り方が異なる可能性がありますが、テクノロジーなど機械化を行えば同じ様に創ることができます。
現代では、ニンゲンの手が入りますが、手術ですらロボットが使われる時代になってきています。
採血なども、機械化が導入されようとしています。
だんだん、以前のような職人技は不要になってきています。
特に、医療業界においては、ロボットを使わない理由はないように感じています。
寿司職人と異なるのは、結果だけが全てでは無いということです。
結果とは、医療業界の場合は例えば手術をロボットで行ってうまくいった、ということになります。
寿司職人の場合は、ロボットと職人の寿司を食べ比べて同じ味だったとしても、目の前で職人が握って会話をして提供する、というこのプロセスこそが重要になります。
先に、医療業界のロボット化についても触れましたが、手術前後のプロセスに関してはやはり人間ですので、ナラティブこそが重要ということになります。
人には、様々な歴史があります。
その歴史(ナラティブ;ものがたり)を無視して、医療を提供するということは論争の原因となり得ます。
妥協点を設けたとしても、お互いの納得が必要なのは、現代の医療においては最も重要なのかもしれません。
テクノロジーである程度は代替可能
テクノロジーの利点については、先に書いたとおりです。
職人と言っても、人ですのでプロゴルファーのスイングを真似しようと思えば出来るのと同じで、職人の真似をすることができます。
角度や包丁など、握り方などを分析して機械も同じように寿司を握ることができます。
さらには、原材料である魚も、現代では近大マグロの様に養殖も可能となっています。
養殖の利点は、ある程度同じような魚を育てることが可能という点です。
100点の魚3匹で20点の魚30匹くらいのバランスよりは、80点の魚33匹のほうが生活の延長線上のグルメには良いということになります。
テクノロジーを使えば、100点の魚を33匹育てることも可能になるかもしれません。
この様に、テクノロジーは常に進化しています。
一方、医療の専門である大学病院や総合病院ですら、診療録の一部は紙を利用しており、いろんなコストの圧迫に寄与しています。
カルテは常に最新情報であり、紙にプリントした古い情報を使って実践することは本来危険を伴います。
紙は紛失のリスクもありますし、基本的には欠点のほうが多いです。
とはいえ、それぞれ利点と欠点がありますので、デジタルネイティブ世代の台頭によりテクノロジーの利用を推進してほしいものです。
まとめ
- 職人はこれからも需要がある限り生き残る
- けれども、テクノロジーと職人の差は埋まってくる
- その差をスキル以外の何かで埋め合わせすることがこれからは必要
- テクノロジーの利用は結果以外の、ナラティブが重要