救急科 診療科

気管支喘息

 

重症度評価

臨床所見による評価

  • 重篤な発作の兆候:頻呼吸(>30回/分)、頻脈(>120回/分)、呼吸補助筋使用、発汗、完全な文章での会話困難、仰臥位困難、奇脈(収縮期血圧12mmHg以上の低下)
  • これらの所見は感度が低く、重篤な気道閉塞患者の50%は異常を示さない

客観的評価

  • ピークフロー測定:最も重要な客観的評価法
    • 200L/min未満は重篤な閉塞を示す
    • 予測値の50%以下で重篤、50-70%で中等度の発作
  • 酸素飽和度:SpO2 <90%は生命に関わる状態
  • 血液ガス分析:ピークフロー25%未満または150L/min未満で適応

救急外来管理

酸素療法

  • SpO2 <90%の全患者に投与
  • 目標:SpO2 >92%(妊娠中は>95%)
  • 重篤な発作では93-95%を目標とし、高濃度酸素は避ける

短時間作用性β₂刺激薬(SABA)

  • 標準治療:アルブテロール2.5-5mg、20分毎に3回、その後1-4時間毎
  • MDI投与:スペーサー付きで4-8吸入、20分毎に3回
  • 持続噴霧:重篤例で10-15mg/1時間

全身性糖質コルチコイド

  • 適応:中等度以上の発作、初期SABA治療に反応不良例
  • 用量:プレドニゾロン40-60mg(メチルプレドニゾロン32-48mg)/日、5-7日間
  • 投与経路:経口と静脈内は同等の効果
  • 早期投与:1時間以内の投与で入院率低下

イプラトロピウム(抗コリン薬)

  • 適応:重篤な発作(中等度でも考慮)
  • 用量:500μg噴霧または4-8吸入、20分毎に3回、その後1時間毎最大3時間
  • 効果:入院率を24%から42%に低下(重篤例)

硫酸マグネシウム

  • 適応:生命に関わる発作、初期治療に反応不良な重篤例
  • 用量:2g静脈内、20分かけて投与
  • 効果:入院率低下の限定的エビデンス

治療反応評価と入院適応

1時間後の評価

  • 症状改善、ピークフロー>80%予測値:退院可能
  • 不完全な反応、ピークフロー60-80%:追加治療継続
  • 悪化、ピークフロー低下:入院必要

入院適応

  • 数時間の治療後も改善不良
  • 自己管理困難な症状持続
  • ピークフロー≤60%予測値
  • 新規発症、複数回入院歴、経口ステロイド使用中

生命に関わる発作

機械的人工呼吸

  • 適応:呼吸数低下、意識レベル低下、呼吸努力維持困難、悪化する高炭酸ガス血症、酸素飽和度<92%
  • 迅速導入法を推奨

非標準治療

  • 麻酔薬:ケタミン、ハロタン、イソフルランなど
  • ヘリウム酸素混合ガス:限定的エビデンス
  • 体外膜酸素化(ECMO):最終手段

入院管理

薬物治療

  • SABA:徐々に1時間毎から4-6時間毎に減量
  • 全身性ステロイド:経口移行、5-7日間継続
  • 吸入ステロイド:早期開始、適切な吸入手技確認
  • LABA併用:SABA頻度減少後に考慮

治療抵抗性の検討

  • ウイルス性気管支炎・細気管支炎
  • 気管支拡張症、副鼻腔炎、肺炎
  • 胃食道逆流症
  • 心不全(高齢者)
  • その他:強皮症、肺塞栓症など

退院準備

全身性ステロイド

  • プレドニゾロン40-60mg/日、5-7日間
  • 筋注製剤:服薬コンプライアンス不良例
  • 再発予防効果確認

維持療法

  • 吸入ステロイド:全例に処方
  • ステップ4治療または現治療の1段階アップ
  • 抗炎症性レスキュー療法:アルブテロール-ブデソニド、ICS-LABA併用など

患者教育

  • 喘息に関する教育
  • 誘発因子回避
  • 個別化された行動計画作成
  • 2-7日以内の外来フォローアップ

推奨されない治療

  • ロイコトリエン受容体拮抗薬:急性期投与は推奨されない
  • メチルキサンチン:テオフィリン、アミノフィリンは効果不十分
  • 経験的抗菌薬:大部分がウイルス性のため不要
  • その他:補液、去痰薬、抗ヒスタミン薬、胸部理学療法

主要な推奨事項

  1. 酸素:SpO2 <90%で投与、目標>92%
  2. SABA:迅速投与、アルブテロール2.5mg×3回または4-8吸入×3回
  3. 全身性ステロイド:中等度以上で推奨、早期投与が重要
  4. イプラトロピウム:重篤例で併用推奨
  5. マグネシウム:生命に関わる発作または治療抵抗性で考慮
  6. 退院時:ステロイド継続、吸入ステロイド開始、患者教育、フォローアップ確保

このガイドラインは、喘息発作の適切な評価から治療、退院まで体系的なアプローチを提供し、患者の予後改善と医療の質向上を目指しています。

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