結論
- 動脈ラインとマンシェットでは、実測は動脈ライン
- どちらが正しいかと言われると、それぞれ一長一短ある
- どちらを指標にするかは、その時々で判断するが、集中治療室では動脈ラインを指標にする
実測の血圧
集中治療室(ICU)では、動脈ラインというものが入っています。
動脈ラインは、通称Aラインと呼ばれています。
動脈は英語で、Arteryです。
その、Aのことです。
ICUでの血圧測定は、マンシェット(NIBP)とAラインがあります。
多くのICUでは、NIBPで測定している血圧のことを、実測と言っています(たぶん)。
そもそも、NIBPは間接的に血圧を測定しているので、実測ではありません。
けれども何故か、NIBPでの測定を実測と言っています。
実測の由来はわかりませんが、Aラインの血圧を見て高いとか低い場合にNIBPで測定することがあります。
そこで、実際に血圧を測ってみた値のことを実測といっているのかもしれません。
そこまで同僚に聞いたことはありませんので、あくまで想像です。
実測は「実際にNIBPで血圧を測ってみた」の略であるのを、わたしが知らないだけかもしれません。
そうだとしたら、Aラインが実測とか言っているなんて、恥ずかしいです。
マンシェットでの血圧測定
マンシェットでの血圧測定は、利点や欠点があります。
利点は、すぐに測定できる。
欠点は、マンシェットのサイズや服や測定体位による影響を受けます。
マンシェットのサイズが大きいと、血圧は低く出ます。
マンシェットのサイズが小さいと、血圧は高く出ます。
服の上からだと、低く出ます。
他にも、血圧が高い場合や出血傾向の場合は、点状出血を起こします。
点滴が入っていると測定しづらいです。
動脈ラインでの血圧測定
動脈ラインにも当然、利点と欠点があります。
成書に書いてあるので、簡単に書きます。
利点は、持続的に血圧の変動がわかることや、採血できることが大きな利点です。
他には、血圧の変動をみることで体液量の評価や、特殊な機械を繋げば心拍出量の測定を行うことができます。
もう一つ重要な利点は、平均血圧を持続的に測定できるということです。
欠点は、侵襲的で感染のリスクがあること、などでしょうか。
そもそも血圧とは
血圧に3種類あります。
収縮期・拡張期・平均です。
この中で最も重要なのが、平均血圧です。
集中治療室では、平均血圧しかほとんど見ません。
平均血圧は、臓器血流の指標になります。
例えば、酸素化を規定する因子の1つに平均気道内圧というものがあります。
これは、持続的に気道に圧をかけることで酸素化を良くするという概念です。
血圧も同じで、持続的に圧をかけた平均が臓器血流を評価する上で最も重要になります。
収縮期血圧は、動脈性出血のコントロールで使われます。
外傷の場合は、Permissive hypotensionといって、敢えて血圧が低いのを許容して、出血をコントロールするという戦略があります。
その場合は、収縮期血圧を目安にします。
収縮期血圧の場合は、出血が増えるといっても心臓が収縮している間だけです。
平均血圧が高くなれば、心臓が収縮しているとき以外も出血の懸念が増加します。
そのため、収縮期血圧も重要ですが、平均血圧も下げた方が動脈にかかるテンションは下がりますので、出血のコントロールは行いやすいはずです。
このあたりの血圧の指標は、ガイドラインにより平均血圧なのか収縮期血圧なのか書かれています。
後もう一つ重要な血圧が、拡張期血圧です。
拡張期血圧は、平均血圧に最も影響を与えます。
平均血圧を上げたい場合、収縮期血圧ではなく、拡張期血圧を上げることが最もリーズナブルな選択です。
拡張期血圧が上がれば、全体の血圧がそのまま上がるので拡張期血圧も結構大事なのです。
理論的には、頻脈だと収縮期血圧と拡張期血圧の比率としては、収縮期の時間がふえますので、平均血圧も上昇するのでしょうが、頻脈は色々と問題になりますので、平均血圧を上げるために頻脈にするということはしたことがないですし、実際に平均血圧が上がるのかもわかりません。
あと、通常の心拍数の場合、冠動脈血流は拡張期が有意とされてますので、このあたりも意外に重要です。
血圧とは
血圧は、1回拍出量 x 末梢血管抵抗という式になります。
心拍出量は、1回拍出量 x 心拍数です。
ここで重要なのは、血圧の上昇は必ずしも心拍出量を増加させるわけではないということです。
ちなみに、輸液を行うのは血圧を上げるためではなく、心拍出量を上げるために行います。
輸液で血圧が上がるのは、心拍出量が増えた結果血圧が上がっているためです。
血圧は、末端に行くに従って高くなります。
高くなると言っても、収縮期血圧が主に高くなります。
平均血圧は同じになります。
通常心臓から大動脈にかけての血圧が、血圧の始まりになります。
左室流出路と言われる心臓の出口は、成人の場合だいたい2cmくらいあります。
しかし、心臓から離れるに従い動脈の経は細くなっていきます。
脈を触れることができる、橈骨動脈では数ミリですし、足背動脈はそれよりも細くなります。
細くなるということは、収縮期血圧が上昇しますので、血流の速度が早くなります。
血流は他にも粘稠度などを考慮しないといけませんが、単純に末端に血液を送り届けるためには、収縮期血圧が上がるのは理にかなっていると言えます。
まとめ
- 血圧には、3種類ある
- 大事なのは、平均血圧
- 実測の血圧は、本来は動脈ラインでの血圧のこと