結論
- 初学者は、プロブレムを挙げる練習から
- By systemとは、臓器(System毎)ごとの評価
- By problemとは、プロブレムごとの評価
- 多臓器に渡るプロブレムがある場合は(重症患者)By system
医療における問題点の把握
医療現場では「診断名」に、多くの主要な情報が詰まっています。
例えば「#肺炎」という診断に対し想起される病態としては、8割程度は同じ肺炎の状態が想起されます。
肺炎とは、一般的に胸部X線で浸潤影があり、低酸素血症を伴い、膿性痰や発熱を伴い、咳などの呼吸器症状を伴う場合が多いです。
診断名で、#肺炎 というプロブレムをあげた場合でも、8割程度しかわからないと言ったのは、肺炎以外に、重症度や患者さんの背景を含んでいないためです。
すなわち、だれが聞いても同じような病態に近いプレゼンテーションを行うことが必要になります。
そのためには、背景情報が必要になります。
20歳男性の肺炎と、90歳男性の肺炎ではそもそも、病原微生物の観点からも異なります。
原因も、高齢者の場合は誤嚥性肺炎の可能性も考慮されます。
誤嚥性肺炎は一般的に、嚥下機能低下により起こりますので、意識に問題のない高齢者の肺炎の場合は、考慮する必要があります。
もう一つの重要な情報が、重症度です。
同じ「肺炎」でも、多臓器に渡り障害されている場合は、気管挿管などの集中治療を要する確率が増加します。
また、感染症の場合は敗血症に移行する可能性を常に含んでいます。
このように、問題点は診断名を含みますが、診断名だけでは現在の患者さんの問題点を網羅出来ていない場合も多くあります。
効率の良いプロブレムの立案方法は、もれなくダブりなくです。
問題点を細かくしていくほど、漏れはすくなくなりますが、ダブリは多くなります。
逆に問題点をまとめるほど、ダブリは少なくなりますが、漏れが多くなります。
このあたりが、By problemとBy systemの大きな違いと言えるかもしれません。
By systemとBy problem
By systemは、先に書いたように、臓器ごとに物事をアセスメントしていく方法です。
大まかに、大事なところ、つまり頭のてっぺんから始まります。
神経 → 循環 → 呼吸 →消化器・肝臓 → 腎電解質 → 内分泌 → 血液凝固 → 感染症 → その他 → デバイス →予防 といった感じになります。
個人的には、まずプロブレムをあげてそのプロブレムを各システムごとに振り分けるようにしています。
このあたりは、個人のやりやすいように行っています。
神経の場合は、鎮静やせん妄などのプロブレムここで扱われます。
いわゆるPADIS(鎮痛ー鎮静ーせん妄ー不動化ー睡眠)の評価と介入になります。
例えば、今日は鎮静剤を中断して評価する、せん妄を伴う不穏があるので抗精神病薬を追加する、などです。
当然、肺炎が主要なプロブレムであった場合でも、呼吸の問題を扱うのは、神経 → 循環 → 呼吸の順番に評価していきますので、後回しにされます。
一方、By problemの場合は最初に、#1.肺炎 というプロブレムに対し評価介入されます。
By problemの場合は、何が問題なのかが非常にわかりやすいです。
カルテも基本的には、問題となっている事象から順番にプロブレムを記載していきますので、何が最も困っているプロブレムなのかがわかりやすいです。
たとえば、無事肺炎の治療終了したけど、自宅で生活するにはまだ難しいと言った状況は、特に高齢者の場合はよくあります。
その場合は、#肺炎のプロブレムは、プロブレムアウトし、代わりにSocialプロブレムが冒頭に来ます。
一般的には、By problemの方がわかりやすいです。
By systemは、先程書いた# PADISや# Volume statusといったプロブレムが個別に作成されます。
By problemの場合の、#肺炎であれば、Volume statusの評価も特別困っていなければ、#肺炎のところで議論されます。
By problemとBy systemの利点と欠点
By systemは、繰り返しになりますが、臓器ごとにアセスメントされますのでダブりが多くなります。
例えば、#肺炎の場合は、呼吸のSystemでアセスメントされ、感染症のSystemでもアセスメントされます。
ここに血流感染などがオーバーラップしている場合は、また別途感染症でアセスメントし直す必要があります。
重症患者の場合は、感染症のオーバーラップも稀ではありません。
そのため、感染症というSystemでひとくくりにしてアセスメントされます。
肺炎だけが主要な問題の場合は、呼吸のSystemでアセスメントされることの方が多いです。
このあたりは、指導医により様々だと思います。
By problemの特徴は、なんと言ってもわかりやすいことだと思います。
何が問題なのか、By systemの場合はわかりにくいことが多いです。
まとめ
- 多臓器に渡る障害の場合は、By system
- 臓器別のプロブレムが少ない場合は、By problem
- By systemはわかりづらく、ダブリも多いが、漏れは少ない
- By problemは、わかりやすく、ダブリも少ないが、漏れは増える可能性がある