総合診療内科 診療科

出直し看護塾 x 岩田健太郎先生

結論

ワクチンは打ったほうが良い

はじめに

出直し看護塾という、看護系セミナー等を中心とした会社があります。

今回は、あの有名な岩田健太郎先生とのコラボ企画ということで、シェアしてくださいとのことでしたので、ついでに一部を備忘録として記事に残しておきます。

問題になるコロナウイルス感染症は3種類

  • SARS(重症急性呼吸器症候群)
  • MARS(中東呼吸器症候群)
  • Covid-19(新型コロナウイルス感染症)

なぜこの3つのコロナウイルスが問題になるのか

通常のコロナウイルスは、いわゆる風邪の原因となるウイルスです。

ウイルス単体で議論した場合は、コロナは風邪というロジックが成立するでしょう。

しかし、この3つのコロナウイルスは重症化するリスクが高く、死亡率も高いとされています。

よって、現在も特別な予防対策が必要になっています。

すなわち「コロナは風邪」ではありません

ここ100年で最もたちが悪いウイルス

世界3大感染症があります。

結核・マラリア・AIDS/ HIVです。

この3大感染症に、2つ加えた5大感染症があります。

肺炎と下痢症です。

これらの5大感染症が問題となり、死亡率が問題となるのは、主に途上国での話です。

肺炎に関しては、日本でも死因の3位になったりと高齢化とともに問題となっています。

途上国なら良い、よいという訳では全くありませんが、新興国で流行している感染症は大きな問題です。

例えば、麻疹などの空気感染する病気は、先進国でも流行を来すリスクが極めて高い病気です。

特に麻疹は、すれ違っただけで感染するとされています。

しかし、現代にはワクチンがありますので、集団免疫により守られていると言えます。

一昔前は、日本でも麻疹の流行が起こり問題となっていましたが、現在は封じ込めに成功しているようです。

先進国での感染症の流行

先進国で感染症の封じ込めができないということは、イコール感染症が世界的に流行する懸念があります。

実際、SARSやMARSも世界的大流行(パンデミック)を来す可能性が十分にありましたが、封じ込めが成功した事例と言えます。

これだけ死亡率の高い、重症化しやすいコロナウイルスですので、今後も8番目のたちの悪いウイルスが出てくる可能性はありそうです。

当初、Covidは中国の武漢で流行しました。

多くの人は、対岸の火事でSARSやMARSのように恐れつつも、なんの根拠もなく終息するだろうと思っていたはずです。

わたしも、そう思っていました。

ところが、このたちの悪い3つ目のコロナウイルスは、現在誰しもが知るウイルスになってしまいました。

Covid死亡者数

Worldomaterというサイトでは、2021年2月22日の時点で、世界中で約250万人の命を奪おうとしています。
~worldometers~

そして、感染者数は1.1億人です。

世界の人口は、約76億人として、76人に1人が感染していると言えます。

これは、驚異的な数値と言えます。

日本の場合は、まだ周囲で感染したという人は少ないでしょうが、世界的に見るとパンデミックという言葉通り、沢山の人が感染しています。

重症者は別

Covidの問題点は、重症化するという事です。

当然、重症化すると死亡率も増加します。

重症化している間では、特に先進国では集中治療室で管理がなされます。

最重症では、膜型人工肺(ECMO)が使用されます。

ECMO1台回すのに、沢山の医療者が必要です。

飛行機一台飛ばすのに、数百人が関与しているかのごとく、多くの専門家により管理されます。

ということは、医療が逼迫するのも当然と言えます。

日本でも、7000人以上が死亡し、現在も多くの重傷者が集中治療室で治療を受けています。

仮に運良く、サバイヴ(助かった)しても、長い後遺症に悩まされる方がほとんどです。

例えば、低酸素血症による認知機能の低下、呼吸機能の低下で、日常の生活が送れなくなるケースもあります。

生活を一変させても感染が増加したわけ

日本の感染対策は甘いといわれつつも、緊急事態宣言に伴う飲食店の閉鎖や早期終了など、生活を一変させられています。

そして、マスクや手洗いはもちろん、密集などの3蜜を避ける対策が大々的に行われています。

そして、問題は「これだけやっても、こんなにひどい状態になる」という事です。

インフルエンザや小児で流行しやすい感染症は、ほとんど見なくなりました。

これだけの対策を行えば、インフルエンザは封じ込めることができるということです。

つまり、コロナとインフルエンザは全く違う病気である、と言えます。

累積発生率という考え方

Covidの場合は、「今日の感染者数は○人でした」とニュースで言っています。

インフルエンザのような、比較的短期間の罹患で収束する場合には、定点観測にも意味を持つでしょう。

しかし、Covidの場合は、今日の感染者が少なかったとしても、2周間前に重症化した人は今も病気と戦っています。

ですので、累積での発生率は重要になります。

Covidにかかったから、それで終わり、というわけにはいかないのが厄介なところです。

特にCovidの場合は、積み重なっていきますし、現在その数が多いので医療を逼迫することになっています。

単位時間あたりの感染率

Covidとインフルエンザ(Flu)を比較すると、Fluのほうが単位時間あたりの感染率は高いそうです。

Fluの場合は、罹患から発症までが約2日と短いとされています。

ところが、Covidの場合は14日間にも渡り感染のリスクが付きまといます。

非常に厄介なウイルスと言われる所以です。

検査陰性という安心感

Covidが流行するはるか昔から、診断は医師が行うものであり検査が行うものではないとされてきました。

そして、現在のCovid流行における代表的な検査がPCRです。

PCRはCovidに関わらず行われる検査ですが、Covidの影響で知らない人はいない程に流行したワードです。

通常、検査が陰性であることは、病気ではないということにはなりません。

一方、検査が陽性ということも、必ずしも病気であることを意味しません。

検査とは、そういうものなのです。

じゃあどうするのか、と言われれば医者が病気の可能性が高いと思ったから検査をした場合に、診断に寄与します。

一方、病気の可能性が低いと考えた場合に検査をし、陰性であった場合に病気でない可能性が考慮されます。

検査とは、医療者があって初めて成立します。

闇雲に行っても、検査の意味をなさないばかりか、かえって悩みが増える結果となることもしばしばあります。

このあたりは、検査の事前確率と事後確率により、診断が成立することになります。

この診断の可能性に加え、代替診断の除外も必要になります。

診断に関する検査を行う場合は、感度と特異度という検査特性は知っておくべき事項になります。

検査陰性の場合の対応

検査陰性は、Covidでは無い可能性をほとんど担保しません。

現段階でCovidは症状に乏しいので、検査に頼るしかありませんが、検査陰性の場合のプラクティスは考えておく必要があります。

検査陰性ということは、病歴からCovidの事前確率により算出されます。

Covidである可能性(事前確率)が、50%を超えるようであれば、Covidの可能性は極めて高いと判断されます。

逆に、事前確率が30%であれば体調に気をつけて、十全な予防策を講じることで対応可能かもしれません。

事前確率という概念は分かりづらいですが、主観と客観の掛け算により算出されます。

まさに、ベイズの定理の診断への応用です。

ベイズの定理

ベイズの定理はとてもむずかしいので、1つだけ例を挙げます。

サイコロを6回振ればそれぞれ異なる数が出るはずです。

これは、確率論的なあくまでも、客観に過ぎません。

頻度論者は、この確立は等しいという前提から始まります。

ところが、4回連続で6が出たとします。

この事象は偶然とは言い難いです。

ベイズの定理では、このサイコロには細工がしてあるのではないか、といった主観を統計学的処理に組み込まれています。

診断も同じく、過去の経験や患者さんが発する雰囲気等・主観等も含めた結果の診断になります。

結構診断とは、複雑なのです。

ワクチンは自己免疫を高めるため

ワクチンというと、特に日本は嫌う人が多い印象があります。

実際どうなのかはわかりませんが、メディア操作によりその様な印象を植え付けられているだけなのかもしれません。

とはいえ、ワクチン反対論者は未だにいらっしゃいます。

そもそも、反対論者が元気で生きてられるのは、集団でのワクチン接種の賜物であるはずなのですが、科学的な考察ができないとこの様な偏った意見になってしまいます。

科学とは、客観性や再現性が重要視されます。

ワクチンを打った場合は、打たなかった場合では、それぞれどのようになるのか、といったことです。

Covidを例に挙げますと、ワクチンを打ったけどCovidに罹ってしまう人もいれば、ワクチンを打たなかったのにCovidに罹らなかったという人も必ず出てきます。

けれどもそれは、稀な事象であり、科学的に再現性を持った結果の提示を求めると、ワクチンを打ったほうがCovidには罹らないという結論に達します。

これは、現代の科学の限界ですが、この結果を覆すことは今の所できません。

そして、ワクチンは大豆のような遺伝子組み換え技術といったものではなく、自己免疫を高めるために作用しているだけです。

ワクチン作用に関しては、あまり詳しいことはわかりませんが、体の中にウイルスと戦うために特別な装置を組み込んでいるわけではないということです。

あくまでも、正常な反応の手助けをしているだけに過ぎません。

これは、抗菌薬も同じく、抗菌薬を入れておけば感染症に対峙できるというのは、全く間違ったプラクティスであることと同じです。

Covidの変異株について

7番目のコロナウイルスである、Covidですが微妙に変化をしたものが見つかっています。

これは、インフルエンザウイルスが毎年形を変えているのと似ているような気がします。

インフルエンザウイルスも、時にウイルスの大幅改定(変異)が起こることで、重症化や大流行の懸念がされ続けて来ました。

Covidもその様なリスクは常につきまとっています。

局所の流行であれば、多少変異したとしても終息するのでしょうが、Covidの場合は1億人以上が既に罹患しており、毎日増加しています。

この様な大流行の状況ですので、変異を来しやすい環境は整っていると言えます。

そして、この変異株にもワクチンは効くのではないかと言われています。

対策こそがすべて

Covidは、未知の感染症から、既知の感染症となりました。

ある程度対策の方法もわかってきました。

そして、治療薬はありませんが、治療する術も多少わかってきました。

極論ですが、2週間家から出なければ、2週間で終息します。

けれども、現代ではそんなのは無理です。

だからこそ、7割程度のワクチン接種を目指す必要があります。

特に医療従事者は、科学的に医療を行っている人たちです。

ですので、報告された論文を読み、自分の判断でワクチンを打つという決断をしてくれるはずです。

医療の専門家である医療者が、ワクチンを忌避するようでは、ワクチンを打ちたいという人は少数波になるでしょう。

科学的な知識と技術を持ち合わせている医療者は、ワクチンこそが残された対策であることを知っています。

みんなで力を合わせるしか無いです。

One teamとなって。

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