看護

プロ野球選手に見る看護師の報酬体系

結論

  • ただいるだけで給与が発生する仕組みは、おかしい
  • 成果に応じた報酬を支払うべき
  • 看護部の上層部の多くの働き方は生産性に乏しく、給与に見合っていない

プロ野球選手の給与

 

プロ野球が特別好きというわけではありませんが、プロ野球の場合給与がいくらであったかを毎年トッププレイヤーの方々は会見で公表しています。

サッカー選手でも同じです。

他の競技に関しては、日本の場合プロフェッショナルな競技のシステム自体、明らかに公にされているのはサッカーと野球が代表といえます。

世界に視野を広げると、野球だとアメリカ、サッカーだと欧州を中心に、膨大な金銭を得ているプレイヤーがたくさんいます。

プロ野球選手の報酬の対価とは何なのでしょうか。

この場合は比較的わかりやすく、チームの勝利に貢献できたか否かということに焦点が当てられます。

この公式の場合、強いチームほど巨額の給与をもらっているともいえます。

ところが、強いチーム、イコール給与が高いというわけではありません。

それは当然といえば当然なのですが、経営母体によります。

選手に支払う給与に余力があるほど、経営としては良質な成果を示しているといえます。

プロ野球の場合どこからお金が入ってくるのかと言うと、1つは人気のある球団の場合は観戦料や放映料などが代表的です。

勝負の世界では、勝つことに大きな意味があります。

当然、負けても良い試合だったということもありますが、結果としては何も残りません。

難手術を乗り越えたところで、患者さんにその難しさは伝わらないのと同じです。

手術を乗り越えて普通に生活しているということが、結果としては重要ということになります。

 

医療の場合

 

医療の場合の勝利とは、死亡率の改善でした。

「でした」というのは、それは過去形であり現在形でもあります。

以前は、28日死亡率という基準が一般的でした。

近年の研究では、28日から90日が一般的になってきているように思います。

交通死亡事故の場合、事故から24時間以内の死亡というのが1つの基準でした。

ところがその指標を用いると、どんな手を使ってでも24時間生存させれば交通死亡事故の警察庁の定義からは外れてしまいます。

当然交通事故の場合は、全力で救命しますので、どんな手を使ってでも救命を試みます。

その代表が、現場での開胸大動脈交差クランプなどが代表的かもしれません。

けれども、それは「勝利」とは言えない状況がしばし存在します。

医療の場合の大まかな勝利を敢えて定義するとすれば、もとの状態に戻れるようにすることかもしれません。

これも心臓外科の手術では、もとの状態より良くなるのが普通ですので、なんとも言えません。

とはいえ、具合が悪くなる前と同じくらいの状態にするというのが、1つの目安になります。

この「患者さんの具合が悪くなる前くらいの状態に戻す」ことができるようにするということを1つの指標にするのであれば、患者さんをその状態にすることに最も寄与した人材から順に給与が支給されるべきです。

 

医療の場合の給与

 

手術をして良くなったのであれば、手術をした医師が最も給与を享受すべきでしょう。

一緒に手術に入った看護師も同じく手術のメンバーではありますが、手術を行うために必要な人材ではあるものの、手術という診療報酬上の定義からすれば、周囲の人材ということになります。

とはいえ、当該患者さんが良くなった場合には、メンバーとして評価されるべきでしょう。

手術もとても重要なファクターですが、術後合併症という言葉があるように、術後には様々なイベントが生じます。

その様々なイベントを抑制し、患者さんを元通りにして自宅に帰すことができたのであれば、それはそれで手術ほどインパクトのあるものではありませんが、同じように評価されるべきといえます。

さらには、術中術後管理で薬剤調整を行う薬剤師であったり、栄養管理を行う栄養士、診断のために必要な画像を撮像する放射線技師、検査で日々重要な情報を与えてくれる検査技師を始め、医療現場にはたくさんの医療従事者が介在しています。

とはいえ、多職種のチームが必ずしも良いとは言えない場合もあり、大切なことは同じ方向を向いて(同じ目標に向かって)介入ができているか、という点が最も重要です。

この点に狂いが生じなければ、当然多職種で介入したほうが様々な視点から患者さんにアプローチが可能となるため、有用であることはそれほど疑う蓋然性に乏しいかもしれません。

ここで患者さんに関わる医療従事者ですが、誰がどのくらい寄与したのかというのは、正直なところわかりません。

多分多くの人は医師と答えるでしょう。

以前のNEJMという雑誌の編集長である、インジェルフィンガー氏は医療の80%は良くも悪くもならず、10%で良くなり、10%はむしろ悪くなると言っています。

これは、当時の編集長を行っていた時期は、薬剤市場の活性化で、医療を営利目的に利用していたことが問題になっていた時期であるとも言われています。

これらの過去の経験より、現在では多くの学会でCOIの明示が義務付けられています。

 

わかりづらい看護師の患者さんへの貢献度をどのように測定するか

 

結局は、プロ野球選手のように年俸提示額に対して、「安い」とか「妥当」とか「高い」というには、「成果」の提示が必要になります。

医師の場合は手術件数や、救急車応需など比較的簡単に算出できるかもしれません。

一方看護師は、医療の中心とはいえ、自分で決断できることが少ないことから他の専門職からすると、下に見られている場合もあるかもしれません。

何でもかんでも、看護師に聞けば分かるというのはむしろ利点のような気がします。

看護師は本来、自らのそれらの利点を活かして「成果」を提示すべきなのです。

ホームランを何本打ちましたと同じような、指標を看護師は持つべきなのです。

そして、最も重要なのがその金額を成果とともに公表して、競争させることが必要なのです。

E.ポーター先生の、競争戦略に代表されるように、医療は非営利組織であるとはいえ、競争の原理により健全化するはずです。

以前の薬剤業界のように、利益目的になってしまっては、どこに向かっているのか分からなくなりますが、常に患者さんを中心とした介入と成果を提示することで、看護師一人ひとりに適切な給与を支払うべきといえます。

看護部で座っているだけの人と、現場で働きながら成果を提示し続ける人では、後者のほうがおそらく貢献しているでしょう。

もっと、看護の世界も競争の原理を導入すべき、なのです。

つまり、給与の安い看護師は成果の提示ができていないという事になりますので、患者さんへの貢献度が低いということになります。

営業成績と同じです。

営業成績を張り出すことで、成果は変わらないと言われていますが、可視化は可能です。

そして、上層部はどのようにすれば個々の看護師が、成果を提示できるようにすべきかを手伝うノウハウを持つべきと言えます。

 

まとめ

  • 看護師も、年棒制を
  • 人事評価を、年収に直結すべき
  • 競争戦略をもっと取り入れるべき
  • 医療における目的を明確にする

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