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結論
- 重症患者において、早期リハビリテーションは生命予後やコストを改善させる(かもしれない)
- 日本からの研究であり、この結果の有用性は高い
- とはいえ、単施設研究なので仮説に過ぎない、かも
重症患者での早期リハビリテーション
早期リハビリテーションに関しては、わたしの知る限りでは、コントラバーシャルという認識です。
つまり、早期リハビリテーションは有益という結果とあまり利益はないという結果が混在しているという状況です。
早期リハビリテーションは、個人的には大好きです。
というのも、看護師にはこういった見た目の変化がわかりやすいというのもあります。
例えば、重症病態で鎮静をかけて管理を行ったあと、鎮静剤を中止したことで意識が改善すると、驚嘆する看護師は多いです。
このシチュエーションでは、ある程度意識が改善すると分かっていても、鎮静剤中止後に覚醒した患者さんをみると、安心できるのだと思います。
この意識が戻るという事実を確認するまでは、余談を許さないという状況であることに変わりありませんが、実際にそれらの情景を見ることで、生活に寄り添う立場が強い看護師は単純に嬉しいのだと思います。
とはいえ、医師にとっては全て予想の範囲内というシチュエーションであるかもしれません。
今回の研究は、日本からの研究です。
それも、今話題の膜型人工肺(ECMO)を含む患者さんを包括しています。
このような重症患者さんは、過去筋弛緩まで用いて管理するという事が日常でした。
それが、ここ20年ほどで1日1回の鎮静剤の中止に始まり、鎮静剤を極力使用しない人工呼吸管理へ変遷してきています。
とはいえ、冒頭にも書いたように、それらの”根拠”といった観点からは、まだ懐疑的と言わざるを得ないでしょう。
リハビリテーションを行うということは、特に重症患者さんの場合その労力が増大します。
当然人員も多数いなければ、重症患者さんのリハビリテーションは成立しません。
ということは、カテーテル類の抜去などの事故が増加する可能性もありますし、そもそも早期リハビリテーション自体が思っているほどの恩恵を受けられない可能性もあるということです。
それでも、個人的には少しでも入院中の(重症患者によらず)患者さんのアクティビティは向上させたいと思います。
日常になるべく近いシチュエーションを提供するということは、医療における使命だと思います。
特に昨今(とってもだいぶ昔ですが)では、せん妄が患者さんの生命予後や長期機能予後へ影響する可能性が示されています。
せん妄の原因の多くは、原疾患ではありますが、原疾患の改善とともにせん妄を離脱するというところが目標に設定されるべきです。
というのも、せん妄予防プログラムとは、結局日常生活というところにたどり着きます。
現時点では、せん妄に対して予防や治療効果を示す薬剤は、個人的には知りません。
つまり、看護ケアこそが重要になります。
その一環としての、早期リハビリテーションの今回の結果は一読に値するのでは無いでしょうか。
A Progressive Early Mobilization Program Is Significantly Associated With Clinical and Economic Improvement: A Single-Center Quality Comparison Study
https://journals.lww.com/ccmjournal/Abstract/2019/09000/A_Progressive_Early_Mobilization_Program_Is.24.aspx
DEEP-Lで日本語訳し、一部修正。
目的
早期リハビリテーションプロトコルが,院内死亡率や総入院費などの患者の転帰を改善するか、検討しました。
方法
デザイン:後方視的前後比較比較研究
セッティング:12床のクローズドICU
対象:18歳以上、除外基準に該当する患者や48時間以内にICUを退院した患者は除外した。
期間:2014年1月から2015年5月までの患者を介入前群(A群)、2015年6月から2016年12月までの患者を介入後群(B群)とした
介入:前橋早期動員プロトコルを使用した
結果
A群は204名、B群は187名の患者を対象とした。
ベースラインの特性として、年齢、重症度、機械的換気、体外式膜酸素化を評価し、B群ではさらに併存疾患とステロイドの使用を評価した。
病院での死亡率はB群で減少した(調整後ハザード比、0.25;95%CI、0.13-0.49;p<0.01)。
この早期動員プロトコルは、鎮静剤などのベースラインの特性を調整しても、死亡率の低下と有意に関連している。
病院の総費用は29,220ドルから22,706ドルに減少した。
この減少は介入を開始してすぐに起こり、この効果は持続した。
推定効果は患者1人当たり5,167ドルで、27%の減少であった。
また、ICUや病院での滞在期間、人工呼吸の時間、退院時の身体機能の改善も見られた。入院時と最大時のSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアが同程度であったにもかかわらず、介入後にSOFAスコアの変化とICU退院時のSOFAスコアが有意に減少した。
結論
漸進的な早期動員プログラムの導入後、院内死亡率と総病院コストは減少し、死亡率の減少と有意に関連していた。
コスト削減は介入後早期に達成された。
因果関係を調査するためのさらなる前向き研究が必要。
まとめ
- 重症患者での早期リハビリテーションの有益性が報告された
- 日本からの研究であり、医療文化的背景より、より利用しやすい
- とはいえ、結局は単施設研究なので、結論にもあるように因果は不明
- 個人的には、早期リハビリテーションは、多職種のテンションが上がるためオススメ