診療科 集中治療科

VOLUME STATUS≒血管内容量

結論

  • Volume statusとは、血管内の容量の評価
  • 初学者には、Volume statusの評価にまず突き当たる
  • 集中治療の8割を占めると言っても良いかも


はじめに

 

Volume statusの問題は難しいです。

そもそも、英語で「#Volume status」というプロブレムが立案されます。

これは、Volumeの評価やアプローチが難しいことの裏返しともいえます。

普通の人でしたら、腎臓も賢いので多少の輸液負荷であっても調整してくれます。

ただし、重症患者さんの場合は、腎傷害になっていたり、輸液の量がそもそも多くなりがちですので、難しいということになります。

また、メカニカルサポートといって、いわゆる蘇生目的で使用されるECMO(人工心肺)に代表される機械的補助は、Volume statusの問題をさらに複雑にします。

繰り返しますが、普通の患者さんの場合では立案されないプロブレムが立案されるということは、極めて慎重な評価・管理が必要になるということです。

 

シンプルに考える

 

Volume statusには、様々な要素が絡み合います。

つまり、評価が複雑になります。

その評価を複雑にさせている要因が

  • 輸液を入れるべきなのか?
  • 輸液をやめるべきなのか?
 

という命題に突き当たるからです。

これらを複雑にさせているのが、Volume statusの評価方法です。

シンプルに考えるには

  • 輸液反応性があるのか?
  • 輸液反応性が無いのか?
 

この1点に極論しても良いでしょう。

以前は、CVPといって中心静脈圧を指標として、輸液の量を選択していました。

しかし、この戦略はたくさんの研究やメタ解析の結果を受けて、コイントスと同じ程度の精度しか無いことがわかりました。

つまり、CVPを計って、評価して、つまり苦労して輸液を選択しても、コイントスの裏表を使って輸液の要否を選択しても同じということになります。

これは、FACT FULLNESSという本がありますが、高度な(余計な)知識を持つ人より、チンパンジーに選択させた方がよほど高いという結果をいくつも紹介しています。

この事象と似たようなものでは無いでしょうか。

輸液の要否には、指標がほしいというのは万人が求める事ですが、指標もなしに輸液を行うことと実はあまり変わらないのかもしれません。

とくに近年(とっても20年以上経ちます)では、輸液バランスは少ない方がよいとされています。

Volume statusがよくわからないと思い始めた初学者は、「輸液反応性があるのか否か」という1点にフォーカスをあてて評価することをオススメします。

 

輸液反応性

 

輸液反応性とは、過去いろいろな人がたくさんの研究を行ってきました。

その代表が、CVP(中心静脈圧)です。

中心静脈圧はあくまでも「圧」ですので、直接的に血管内の「量」を測定することは難しいということはなんとなく分かると思います。

圧と量は、比較的パラレルな関係性ですが、因果があるとは言えません。

輸液反応性とは、輸液を行うことで「心拍出量」が増加する事です。

よくある間違いが、輸液を行うことで血圧の上昇をモニタリングしている人もいます。

輸液は「心拍出量」を増加させるために行うということも、また意識すべきです。

心拍出量は、特殊なモニタリングが必要になります。

その代表が、肺動脈カテーテルです。

見たことある人は分かると思いますが、肺動脈カテーテルは侵襲が比較的高いです。

また、肺動脈までバルーンの先端を進めていくということは、肺動脈を損傷する可能性も生じるということにもなります。

血圧は、1回拍出量 x 末梢血管抵抗です。

心拍出量は、1回拍出量 x 心拍数です。

つまり、1回拍出量を測定したいのです。

とはいえ、当然規定因子には、前負荷・後負荷・心収縮の3つの要素が重要になります。

そして何故心拍出量なのかというと、酸素を細胞(ミトコンドリア)に届けるためには、3つの要素が重要だからです。

その3つの要素とは

  • 心拍出量
  • 酸素飽和度
  • ヘモグロビン
 

この3つでバランスをとっています。

例えば、貧血の場合は心拍出量が増加します。

心拍出量を間接的に測定するには、エコーでの測定を行います。

エコーでは、VTIを測定します。

VTIとは、時間速度積分値などと訳されます。

通常、左室流出路と呼ばれる部分は、狭窄があったとしても、1回拍出量は変わりません。

人により左室流出路径は異なりますが、異なったとしても同一人物でVTIを測定することで、輸液による変化が分かるようになります。

つまり、VTI10の人が輸液を250ml行うと、VTIが15に増加したとします。

この場合は、輸液反応性があると判断します。

極論すると、輸液によりVTIが増加するかどうか、ということになります。

持続的に心拍出量の測定が行える場合は、PLRといって半坐位の状態から臥位での足上げ試験を行うことで心拍出量が増えるかどうかを測定します。

これ以上書くと、分かりづらくなる可能性がありますので、ここで終わりにします。

 

まとめ

  • 輸液を行うかどうかは、輸液反応性の有無を確認する
  • 輸液反応性は、エコーでのVTIや心拍出量持続モニタリングが有用
  • 注意すべきは、輸液をして血圧が上がることではないということ

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