結論
- 極論、寝なくても大丈夫
- とはいえ、入院中の方にはせん妄予防のアプローチとして睡眠は極めて重要
- 使うなら、ベンゾジアゼピンは最終的に検討
不眠
不眠に関する書籍もたくさんあり、ドラッグストアにも睡眠薬が比較的たくさん置かれる時代になってきています。
つまり、不眠とは国民病の1つといえる存在です。
わたし個人的には、不眠には一切困っていません。
とはいえ、たまに眠れない時があると、なんで眠れないのだろうとモヤモヤする、焦りのような状態を感じる事があります。
焦ることで、ますます眠れなくなるという悪循環です。
慢性不眠の方は、毎日このような状態なのだと思います。
そして、アルコールなどからはじまり、アルコールに加えて睡眠薬を併用したりと、だんだんエスカレートしていくことは問題です。
不眠の原因の1つが、ブルーライトなどの光であるとも言われています。
光は結構重要で、メラトニン作用を促進し日内リズムをつけるためにも必要な行動の1つです。
ところが、ブルーライトの影響で夜にメラトニンが出てしまうと、脳が勘違いして不眠の原因になってしまいます。
夜間にかけては、スマートフォンなどの電子デバイスは使わないほうが良さそうです。
仮に使う場合も、代替できるものがないか、なければ光量をギリギリまで下げるなどで対応すると多少は良さそうです。
睡眠はルーチン
スポーツ選手を見ていると、ルーチンの行動を行う人がいます。
有名所では、野球のイチロー選手や、ラグビーの五郎丸選手などが思いつきます。
睡眠も同様に、脳を騙すことが必要です。
勤務が不規則な人には無理ですが、毎日同じような時間にお風呂に入り、寝る前に水を飲み、本を読みながら寝るといった具合にルーチンにしてしまうことは有用とされています。
わたしの場合は、本を読みたいのですが毎日のルーチンのため、本を読み始めると1ページも読めないまま毎日寝てしまいます。
これはこれで困るのですが、仕方ありません。
他にはリラックス法といって、ヨガなどを取り入れた瞑想なども有用とされています。
例えば、同じアロマで寝ていると自然に眠くなってしまうのと同じです。
他には手足に力を入れて、すっと力を抜くとリラックスできたような感覚に陥ります。
このように、脳を騙してリラックスするというのは、薬に頼らない睡眠としても有用です。
睡眠薬に頼る
最終的には、睡眠薬に頼るしかありません。
最も有名な睡眠薬の系統で、ベンゾジアゼピン系という薬剤があります。
略してベンゾは、いろんな副作用があります。
筋弛緩作用では転倒を増加させます。
健忘作用では、せん妄を増加させます。
GABAに作用するため、連用で依存性を生じます。
高齢者に限りませんが、特に高齢者の場合転倒を来すことで、寝たきりになる確率が増加します。
寝たきりになった結果は、肺炎などの併存疾患で死亡すると言ったことも稀ではありません。
せん妄の増加も同様に、いくつかの研究では死亡率を増加させるとされています。
このように、睡眠薬には負の側面があるため、慎重に本来使用されるべき薬剤です。
特に海外旅行の際に知らずに持ち込んだだけで、重大な罰則を強いられる場合もあります。
色んな意味で、気をつけなければならない薬剤といえます。
それでも使うなら
オレキシン
病院でよく使用される睡眠薬は、オレキシン受容体拮抗薬というものがあります。
オレキシンは覚醒に作用する物質ですので、オレキシンの経路を遮断することで睡眠に作用するという比較的新しい薬剤です。
オレキシン受容体拮抗薬は、筋弛緩作用がない(少ない)とされていますので、比較的使いやすい薬剤といえます。
また、慢性不眠症のガイドラインでも推奨度の高い薬剤です。
メラトニン
次にメラトニン受容体作動薬という薬剤があります。
メラトニンは、先に書いたように昼夜のリズムを付けるような薬剤になります。
欠点は、即効性がないことです。
ジェットラグにも効くと聞いたことがありますが、その根拠は知りません(なんだか効きそうですが)。
メラトニン受容体作動薬は、慢性不眠ガイドラインでの推奨度はそれほど高くありません。
つまり、効果が弱いということなのかもしれません。
トラゾドン
トラゾドンは、抗うつ剤に分類されます。
単純にその副作用を使って、睡眠に作用する薬剤と言えます。
トラゾドンは、認知機能に影響の少ない薬剤とされています。
慢性不眠ガイドラインでの推奨度も低いのですが、米国では不眠に対する処方量が増加しているという報告もあります。
臨床的にも使いやすい薬剤ですので、ベンゾジアゼピンを使うよりは、トラゾドンを先に使うほうが多いような気がします。
ヒスタミン受容体作動薬
日本では、不眠時ポララミンといったオーダーがよくあります。
ヒスタミン受容体は主に3つあります。
H1、H2、H3です。
H1は皮膚などのかゆみ、H2は胃薬として、H3は脳に作用します。
H3ブロッカーというものは、寡聞にして知りませんが、脳に作用するということは弊害もそれなりにあります。
弊害の代表が、せん妄です。
胃薬として使用される、H2ブロッカーも少ない比率ですが、脳に作用することになります。
脳に作用すると、せん妄の原因になりますので、通常このような薬剤は使用すべきではないでしょう。
不眠の原因が、かゆみなどであれば話はまた異なりますが、作用機序を理解して使用すべき薬剤の1つです。
まとめ
- 睡眠は非常に重要
- 人生で最も多くの時間を費やすだけに、長期に渡る付き合いが必要
- 安易な薬剤は、連用のリスクになりうる
- どうしてもだめなら薬剤に頼ることになるが、その場合でも副作用や依存リスクの少ないものが望ましい