Contents
用語の種類
- APC(Advanced care planning)
- BSC(Best supportive care)
- ターミナルステージ
- エンドステージ
- DNR/DNAR( Do not attempt resuscitation)
APC
現在、医療現場で多く使用されている用語の1つでは無いでしょうか。
BSCと言われても、わからないという人もまだ多いと思います。
わたしもその一人です。
BSCという用語は、以前少しだけ話題になりました。
適切な日本語が無いということが問題の1つではないかと言われ「人生会議」という日本語が使われているところもあるかと思います。
実際に、(少なくともわたしの周りでは)人生会議は病院内で使われることはありません。
「人生会議」に関しては、色々な意見があると思います。
個人的意見にはなりますが、人生を見直す機会として悪くないネーミングなのでは無いかと思っています。
そもそも、APCとは病院に入院してきてその方針を決めるという短期間のプロセスではありません。
人間の死亡率は当然ですが、100%です。
すべての人がいつかは亡くなります。
ところが、多くの人は自分や自分の家族が亡くなるという事は考えていません。
これが、病院に搬送されるにあたって大きな問題の1つになります。
人間の死亡率は100%と言いましたが、亡くなる時期は大抵の場合似通っています。
一般的に、平均寿命が用いられます。
平均値の問題点は、例えば0歳で死亡した場合など、一気に平均値を下げてしまいますのであくまでも平均です。
日本全体での、国民の出生からの平均的を知りたい場合は、平均値で良いのですが、死亡する時期を推定するには、最頻値の方が良いとされています。
日本の場合、最頻値は90歳くらいとされています。
つまり、年を重ねるにつれ90歳位が、一つの寿命の目安ということになります。
先にも書きましたが、90歳で状態が不良になっても、なんとしても生きてほしいと希望する家族もいらっしゃいます。
それが悪いわけではありません。
当然ですが、死亡率の最頻値が90歳ということであれば、いくら全力で治療したとしても、奇跡的に回復する可能性はそもそも低いと言わざるを得ない場合もあります。
そして、全力で治療を行うということは、そこに医療資源が注ぎ込まれますので、人的・金銭的・時間的コストの増大にも繋がります。
例えば、昭和天皇のように全力で治療を行うこともあるかもしれませんが、90歳で病院を訪れた人に全員同様の治療を行うと、医療は破綻することになるでしょう。
このように、いつかは亡くなる、そしてその平均は80歳くらいで、最頻値は90歳くらいという前提で人生会議を行っておく必要があります。
年を重ねるに連れ、がんなどにも罹患しやすくなりますし、老衰ということもあります。
そのプロセスが、APCと言えるでしょう。
ある程度年齢を重ねた場合は、APCに関する話し合いを意図的に行う必要があります。
そして、実際に具合が悪くなり病院に入院することになります。
その際、あの時話し合っておいてよかった、といえる場合がおとずれるかもしれません。
当然、病院に入院する必要は無い方が良いに決まっています。
ただし病気は突然やってきます。
昨日までは元気だったのに、という事はよくあります。
そんなときのために、意図的に話し合いをしておくことは本人や家族の心の準備を整えるという観点からも必要な事です。
BSC(Best supportive care)
BSCは、以前の緩和ケア(Palliative care)と似たような概念です。
有名なものとしては、がんの場合のモルヒネが有名です。
モルヒネ自体は主に、痛みや呼吸困難感を緩和してくれる薬剤です。
使用する量が多すぎると、呼吸が停止してしまいます。
昔は、モルヒネを使うとすぐに死亡するということで、使いたくないという人もいるという話はよく聞く話です。
つまり、モルヒネに代表されるオピオイドは、専門家が患者さんの状態を見て使用量や使用のタイミングを決めるということになります。
テキスト通りに使ったとしても、その効果は半減するばかりではなく、有害にすらなりえます。
そのため、緩和ケアに関わる医師は緩和ケアに関する講習を受けています。
とはいえ、この講習を受けたからと言ってオピオイドが使えるようになるわけではありません。
緩和ケアという治療介入への一貫ですが、キードラッグであることに間違いありません。
緩和ケア(Palliative care)とは、痛みや呼吸困難感の緩和のために、薬剤を使って緩和します。
緩和ケアをもっと広い概念で捉えたものが、BSCという概念になります。
緩和だけを行うのではなく、家族ケアなど全てを含めた概念ですので、患者さんを中心として、全ての医療職者と患者さんの家族を含めた、介入が必要になります。
ターミナルステージ/エンドステージ
ターミナルとは、終着駅の事です。
人生における、終着駅に向かっている概念になります。
エンドステージも同様です。
人生には、様々なステージがあります。
例えば、学生から就職を経て、結婚、子供の誕生、子供の結婚や退職などです。
多様なステージを経て、最終ステージに向かっているということで、エンドステージと称される事があります。
とはいえ、これらのコトバは最近はあまり使わなくなってきたように思います。
やはり、総合的に捉えた概念である、BSCが近年は最も使われています。
そのプロセスには、SDMといわれるSheared decision makingと言われる話し合いも必要になります。
全員でシェアした内容を踏襲し、人生の最後まで全力で介入を行います。
DNR/DNAR( Do not attempt resuscitation)
DNRの問題は、国際的ガイドラインでもDNRからDNARへ用語が改定されたことからも、コトバの難しさが露呈されているといえます。
ちなみに日本語訳だと、DNRは蘇生を行わない、DNARは蘇生を試みるな、といった日本語訳だったような気がします。
たしか、2000年初頭の頃のガイドラインだったように記憶しています。
実はこのDNARというコトバは、病院によっては正式な名称として規定されています。
コトバとは、誰が見たり聞いたりしても同じような事象を想起できる必要があります。
DNARの問題点は、医療者の中でもその捉え方が全く異なることにあります。
特に看護師の場合は、DNAR=何もしないと認識している方が圧倒的に多い気がします。
急変時DNARという表現もおかしな表現になります。
急変した場合は、通常は救命処置が必要になります。
このあたりのコトバの定義は、臨床の状態とパラレルに動いていますので、一言で表現できるものではありません。
心停止した場合は、何もしないということで良いですが、心停止に至る可能性がある「急変」への介入は当然必要になります。
これが、BSCという緩和ケアを含む概念であっても「何もしない」ということではないというのは、先に書いた通りです。
DNARというコトバを用いる場合には、可能であれば各組織で規定された用紙があったほうがベターです。
そして、その書面を患者さんやそのご家族と共有し、その結果合意形成に至るということが自然なプロセスになります。
病院に入院するということは、特に高齢者の場合は死亡するリスクもそれなりに含まれます。
入院になり、医療者はDNARのオーダーを取得しますが、患者さん側としては決めきれない場合があります。
そのために、先に書いたACPという概念が必要になります。
まとめ
- BSCやDNARなど、これらのコトバは一連の流れにより、相互に依存しています
- 患者さんを多方面から考察し、家族を含めたチームで最良の医療を提供していくことが、本来必要です
- これらの概念を全ての医療者は認識し、共有することで医療の質はより一層向上します