看護

輸液の選択

結論

  • まずは、極力シンプルに考える
  • シンプルとは、スターリングの曲線や、フォレスターの分類が代表的

輸液の選択

 

輸液には、大きく分けて2種類あります。

  • 細胞外液
  • 細胞内液
 

この2種類があります。

 

細胞外液

 

細胞外液は、生体における血漿中の電解質と似たような組成となっています。

注目すべきは主に、以下の3つの電解質です。

  • ナトリウム(Na)
  • カリウム(K)
  • クロール(Cl)
 

細胞外液を更に分けると、以下の2つに分類されます。

  • 生理食塩水
  • 一般的な細胞外液(Ballnaced crystralloid)
 

生理食塩水は、NaとClのみで組成されています。

生理食塩水はつまり、ただの塩水です。

一般的な細胞外液は、Kやバッファーと呼ばれる乳酸や酢酸やカルシウムイオンなどいくつかの電解質が入っています。

近年は、生理食塩水に含まれるClが悪さをすることがわかってきましたので、大量に生理食塩水を輸液することはありません。

 

細胞内液

 

細胞内液は、いわゆる維持輸液になります。

全身状態が落ち着いていますが、食事が採れない人の維持をするために行う輸液という認識になることが多いと思います。

だいたい体重あたり、30mlの輸液量が必要とすると、50kgの人では1日量1500mlの細胞内液の輸液が必要になる計算です。

一般的な輸液製剤は、1本500mlですので1日3本必要な計算です。

持続投与の場合だと、だいたい1時間60mlの速度で投与する計算になります。

前提として、全身状態が落ち着いている人ということになります。

 

ショックのときの輸液

 

ショックとは、血圧が下がる事ではありません。

結果的に、血圧が下がることになりますが、最も大事な要素は酸素需給バランスを適正に保つことになります。

ショックは4種類あります。

  • 分布異常
  • 循環血液量減少
  • 閉塞性
  • 心原性
 

この4種類は、実は1つだけでショックになっているというよりは、相互に作用している場合が多いです。

そのため、どの要素がどのくらい寄与しているのかをアセスメントする必要があります。

例えば、最も多いショックの原因として敗血症があります。

敗血症は代表的な分布異常のショックになります。

とはいえ、分布以上が起こるということは相対的に脱水(血液喪失:Volume deplesion)の状態になります。

相対的に脱水なのであれば、ノルアドレナリン等での昇圧が理にかなった対応になります。

とはいえ、敗血症の主病態は全身性炎症反応に伴う臓器不全です。

ということは、全身の臓器に炎症が起きているのと同じになります。

全身の臓器とは、血管も含まれます。

血管に炎症が起こると、グリコカリックスと呼ばれる血管内皮の損傷を来たします。

その結果、血管内の血液は喪失します。

そのためショックの際は、その種類によらず輸液を行うことになります。

 

輸液をなぜ行うのか

 

輸液を行う主な理由は、ショックの是正のためです。

ショックとは、酸素需給バランスの破綻でした。

つまり、血圧が維持されているショックもあるという事です。

組織代謝が行われない状態の場合は、ショックという認識を持つことが重要です。

ショックを可視化する代表的パラメーターが、乳酸やSVO2(SCVO2)と言われるものです。

最も簡便なものは乳酸です。

集中治療を行うような状況では、少なくとも非専門科にとっては、乳酸の上昇はショックとほぼ同義という認識で良いと思います。

輸液をして、乳酸が下がればそれで良いのかという話もありますが、適正な輸液戦略がやはり重要になります。

輸液は少なくぎても多すぎても、死亡率をあげてしまいます。

ところが、臨床現場ではその適正な輸液がどのくらいなのか、ということが非常にわかりづらくなっています。

そのため、いろんなパラメータが開発されてきましたが、これといったものはなく、それぞれを組み合わせて使うことが必要な場面もあります。

例えば、1つの指標を目安に治療を行うこともトレンドでみると良いのですが、そのトレンドが正しい方向を向いているのかはいくつかの指標を組み合わせてアセスメントしたほうが信頼性は向上します。

逆に、2つ以上の指標を用いて、それぞれが異なるアセスメントになったとしても、それはそれで指標の1つになります。

 

輸液反応性

 

血行動態が不安定な状況での選択肢としては、いくつかあります。

敢えて、2つに絞ると以下のような戦略が立ちます。

  • 昇圧剤(ノルアドレナリン)を使うか
  • 輸液を行うか
 
  • もう一つ足す場合は、心収縮力を増やすか
 

といった、シンプルな戦略になります。

とはいえ、実臨床ではシンプルではありませんが。

  • 輸液は前負荷
  • ノルアドレナリンは後負荷
 

と換言することもできます。

輸液の目標は、心拍出量を増加させることが目的です。

ここでもショックの指標である、酸素需給バランスの破綻という部分への介入が必要になります。

酸素を組織に運搬するには3つの指標が必要になります。

  • 酸素飽和度
  • 心拍出量
  • ヘモグロビン
 

この3つの要素が極めて重要です。

例えば、血圧が低い場合には血圧で評価するのも戦略の1つですが、心拍出量はどうなのかという問いを立てることが必要になります。

血圧が低い、イコールショックという認識は、半分間違いです。

至適な血圧は人それぞれで、普段から収縮期血圧90くらいで生活している人もいらっしゃいます。

その人たちは、当然ですが、ショックではありません。

血圧低下の結果、心拍出量が低下、その結果酸素需給バランスの破綻を来たし臓器障害に至る一連のプロセスがショックという認識になります。

輸液を行うということは、心拍出量の増加を期待して行います。

輸液により心拍出量が増加することを、輸液反応性があると言います。

少量の輸液で、心拍出量が最大になる事が輸液における最大の目標です。

臨床的には、心拍出量のモニタリングや、エコーでVTIを輸液の前後で測定することで輸液反応性を測定している事が多いと思います。

近年(と言っても15年以上前ですが)の研究では重症患者の場合、輸液バランスは少ない方が人工呼吸器が必要な期間は少ない事が示されています。

そのため、極論すると血圧や尿量が最低限維持でき、乳酸値上昇やSCVO2の低下がなければ輸液は不要ということになります。

看護師の場合は、よく気管吸引が話題にのぼります。

気管吸引も極論すると、気管が閉塞する前に吸引すればよいということになります。

その行動が本当に正しいのかどうかはわかりませんが、医療行為とは時に過剰になりがちです。

Less is moreとは、医療における格言とも言えますが、やりすぎはやはり良くないという認識が正しい在り方であるように思います。

 

まとめ

  • 輸液を行う場合は、その目的を明確にする事が必要です
  • 目的とは、極論すると輸液反応性の評価ということになります
  • つまり、輸液が必要でない状況の場合は、輸液は害になりえます

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