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結論
肥満、といってもBMI≥40では、カテーテル関連血流感染症のリスクが増加します。
カテーテル関連血流症とは
医療現場では、様々なデバイスが存在します。
デバイスの代表は、尿道カテーテルや血管内留置カテーテルです。
これらは、医療関連感染症の代表的医療における合併症です。
医療関連感染症は、死亡率の増加やコスト・入院期間の延長など良いことはありません。
特に米国では、医療関連感染症はゼロにできるはずだということで、キャンペーンを行ったり、医療費の支払いを停止したりということもあるようです。
日本でも、当然ですがこれらの感染症はよく起こります。
この、よく起こるという感覚は、本来正しくありません。
よく起こると感じる場合は、本来サーベイランスを行うべきです。
その結果、国際的な標準と比較して自施設の医療関連感染症の数が多いのか少ないのかを検討しなければなりません。
その結果は、全ての医療従事者に周知されるべきです。
そして、その結果をもとに、改善策の提示がなされるべきということになります。
カテーテル関連血流感染症の診断
血流感染症ですので、血液培養が陽性になるということが必要です。
ただし、今回の研究でも提示されていますが、カテーテル先端の培養陽性だけでは、カテーテル関連血流感染症の診断にはなりません。
カテーテル先端と、血液培養で検出された細菌が同一の場合は、カテ感染と診断しやすくなります。
他には、Time differential positivityといって、カテーテル採血と通常の採血を行い、同量の血液を同時に提出し、2時間早くカテーテル採血が陽性になれば、カテ感染というものもあります。
とにかく手洗い
手洗いに関する研究は、山のようにあります。
基本的には、患者さんに触る前後行うべきです。
さらに、WHOは手洗いの5つの機会を提言しています。
手洗いには、流水と手指消毒薬による主に2種類があります。
殆どの場合は、効率の良い手指消薬による手洗いが推奨されています。
流水の場合は、目に見える汚染がある場合に限定されています。
流水の場合は、手荒れの問題やペーパーを使用するための、ゴミの問題などたくさんあります。
つまり、医療関連感染症の現在の状況と手指消毒剤の使用状況をモニタリングすることで、因果がはっきりしてきます。
手洗いをいかに行うか、は医療における最も重要なテーマであり課題であると言えます。
肥満とカテーテル関連血流感染症
以前から、カテーテル関連血流感染症と肥満との関連性は指摘されていました。
今回の研究では、BMI≥40をカットオフとしています。
BMI40は、160cm100kg程度になります。
日本では、かなりの肥満になります。
そういった観点からは、日本ではあまり参考にできない結果かもしれません。
掲載されたジャーナルは、Intensive care medicineという、もはや集中治療系でのトップジャーナルとしての立ち位置を確立した感じのあるジャーナルになります。
Intensive Care Medicine volume47, pages435–443(2021)になります。
目的
肥満とカテーテル関連血流感染症のデータは少ない。
4つの無作為化比較試験を用いて、検討した。
方法
集中治療室に入室し、中心静脈・動脈・透析用カテーテルが挿入された成人の肥満患者が分析されました。
結果
32施設の合計2282人の肥満患者と4275本のカテーテルが、分析に含まれました。
全体として、66(1.5%)のメジャーなカテ感染、43(1%)のカテーテル関連血流感染症、399(9.3%)のカテーテルコロニゼーションが確認された。
BMIの上昇とともに、カテ感染は増加した。
BMI≥40では
- メジャーなカテ感染(HR 1.88、95%CI 1.13-3.12、p=0.015)
- カテーテル関連血流感染症(HR 2.19、95%CI 1.19-4.04、p=0.012)
- コロニー形成(HR 1.44、95%CI 1.12-1.84、p=0.0038)
- ドレッシング破棄(HR 2.03, P=0.05,[ BMI<40ではHR1.68])
のリスクがそれぞれ増加した。
結論
BMI≥40では、カテテール感染症のリスクが増加した。
私見
- カテ感染は、とにかく手洗いなどの清潔操作が重要です。
- 特に、挿入時は主に医師側のプロトコル遵守が重要です。
- 留置後は、主にナースのカテーテル管理が重要です。
- 医療関連感染症の発生目標は、ゼロです。
- つまり、頻繁にあってはならないという認識が必要です。
- そのため、カテ感染が発生した場合は、すべての症例で振り返ることが必要です。
- そして、何が悪かったのかを次に活かさなければ、医療関連感染性は減少しません。
- 同じ事を繰り返しているようでは、米国のように医療関連感染症への医療費が削減される可能性もあるかもしれません。
- とはいえ、一番困るのは患者さんです。
- 病気で入院したはずなのに、医療が原因の合併症で死亡していては、本末転倒です。
- そんな病院には入院したくありませんので、とにかく手洗いが必要になります。