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末梢留置型中心静脈カテーテル(PICC)とは
入院を要する様な、患者さんの場合の多くに点滴が必要になります。
点滴は、抗菌薬や利尿剤など、薬剤の投与を行います。
中心静脈カテーテルは、中心静脈である上大静脈や下大静脈に先端を留置する方法です。
PICCの利点
- 通常の末梢静脈ラインと比較して、定期的な入れ替えが不要であること
- カテーテルの種類によっては、造影が可能であること
- 皮下に漏れる心配が無いこと
PICCの欠点
- 感染の可能性があること
- 血栓ができやすくなる可能性があること
- 透析用のシャントを作成予定の場合は、一般的に禁忌であること
- 手技的な問題
- 感染の可能性があること
欠点の補足
中心静脈カテーテルは、通常のものと、PICCと2種類あります。
PICCも感染を起こせば、中心静脈カテーテル関連血流感染症(CLABSI)になります。
通常のカテーテル関連血流感染は、CRBSIと呼ばれています。
そのため、CLABSIはCRBSIに含まれる概念といえます。
CLABSIの場合は、カテーテル感染が起これば、カテーテルの抜去が原則です。
その様な、対応の違いもあり、CLABSIは臨床的には分けて考える必要があると思います。
PICCの留置の手順
手順1
エコーで刺入予定の尺側皮静脈を描出します。
このとき、上下左右、縦横にエコーを動かし3次元的に静脈を捉えます。
尺側皮静脈の見つけ方は、上腕動脈を見つけるのがポイントです。
上腕動脈の左右に上腕静脈が走っています。
通称ミッキーです。
ミッキーマウスの様に見えるからです。
ミッキーを見つけたら、内側にエコーをずらせば尺側皮静脈が見えてきます。
ここでなるべく太くて浅い部位の血管を探します。
刺入点は可能なら肘から10cm程中枢側にあれば、後の固定などの管理が楽になります。
手順2
刺入点が決まれば、カテーテルの長さを計ります。
刺入点ー腋窩ー鎖骨頭ー第3肋間の長さが一般的です。
身長や刺入点にもよりますが、だいたい35cm程度になります(だたの経験です)。
1%以上のクロルヘキシジンアルコールで刺入部位を消毒します。
イソジンだと、カテーテル感染が増加しますので、クロルヘキシジンアルコールをおすすめします。
クロルヘキシジンは残存効果もありますので、カテ感染が少なくなるともされています。
手順3
手を洗います(消毒でもOKです)。
清潔になります。
マキシマルバリアプリコーション(MBP)になります。
MBPとは、大きなオイフ、帽子、手袋、ガウン、マスクです。
とにかく、清潔野を広くすることがポイントです。
手技がいくら上手でも、カテ感染が増えてしまえば、なんの意味もないので、入れるときは正しいファッションで行います。
極論ですが、5分で入れてカテ感染を起こすよりも、1時間かけてカテ感染を起こさないほうがだいぶマシです。
手順4
駆血帯で駆血します。
局所麻酔薬(1%キシロカイン)を、刺入部に撒きます。
表面麻酔の効果があるようです。
刺入前の皮下麻酔は、行うのなら27G針で少量のみ行います。
エコーガイド下に尺側皮静脈を描出して、穿刺します。
可能なら、後壁穿刺は行わないようにします。
この穿刺は、末梢静脈ラインの留置と同じですので、シリンジは不要ですし、むしろやりづらくなるのでおすすめしません。
通常の穿刺は前壁穿刺のみですが、後壁穿刺とは血管の上と下をそれぞれ突き破ることになるので、血腫の問題など起こりますし、おすすめしません。
血管内に外筒を留置したら、ガイドワイヤーを進めます。
抵抗なく進むことを確認します。
エコーで血管内に留置されていることを確認します。
分かりづらいときは、ガイドワイヤーを動かして確認します。
エコーで血管内にあることが見えたら、駆血を解除します。
ガイドワイヤー刺入部に麻酔を行います。
ダイレーターで刺入部を拡張します。
このときはなるべく、根本を持ちなるべく抵抗が少なくなるように刺入します。
あまりに、抵抗が強い場合は、皮膚をカットしますが通常は不要です。
ダイレーターを抜去します。
この時血が出ますので、軽く押さえます。
本カテのおしりからガイドワイヤーが出てくるのを確認します。
ガイドワイヤーを掴んで、カテをゆっくり進めていきます。
このときは、カテを入れている側に顔を向けてもらうことで、鎖骨下静脈からの分岐で右房側に誘導できるとされています。
ガイドワイヤーを抜去します。
逆血があることを確認します。
ヘパリン生食でロックします。
固定して手技終了です。
エコーで内頚静脈を確認して、カテーテルがないことを確認します。
このときは、ガイドワイヤーが入っているときのほうが見やすいですし、修正も効きますので先に見ておいた方が良いです。
まとめ
- PICCは一般的な手技なだけに、準備できるようになる
- 基本的には、末梢静脈留置が上手ければ誰でもできる
- 重要なのは、カテ感染をおこさないこと