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診療看護師(NP)の役割
保健師助産師看護師法に定められた看護師の業務 (療養上の世話、診療の補助行為)を自律的に遂行し、患者の「症状マネジメント」を効果的、効率的、タイムリーに実施すること。
https://www.jonpf.jp/document/np.pdf 日本NP大学院協議会ホームページより一部改変引用
診療看護師(NP)の必要とされる7つのコンピテンシー
1)包括的健康アセスメント能力
2)医療処置・管理の実践能力
3)熟練した看護実践能力
4)看護マネジメント能力
5)チームワーク・ 協働能力
6)医療保健福祉制度の活用・開発能力
7)倫理的意思決定能力
https://www.jonpf.jp/document/np.pdf 日本NP大学院協議会ホームページより引用
看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)の概要
“看護師のクリニカルラダーは看護師の能力開発・評価のシステムの1つです。看護師の看護実践能力を段階的に表し、各段階において期待される能力を示し、到達度によって看護師の能力が示されるシステムです。クリニカルラダーの活用により、看護師は能力段階を確認しながら自己研さんや人材育成を目指すことが可能です。”
https://www.nurse.or.jp/nursing/education/jissen/kaihatsu/index.html 日本看護協会ホームページより引用
クリニカルラダーにおける問題点
看護師のクリニカルラダーは、日本看護協会が示すように、能力開発・評価システムの1つとされている。しかし、ラダーのステップアップにより給与面への反映などは各施設の判断に委ねられている。
医療においては、高度化ともに専門性の追求がなされておりジェネラリストとされる看護師においても、専門性の追求はなくてはならないものとなっている。
これは、内科の医師が外科手術ができないのと同様で(逆も同様)、横断的診療科(総合内科、麻酔科、集中治療科、救急科など)においても、また同様である。
すなわち、膨大な領域に渡る医療全体を俯瞰した際に、看護師のコンピテンシーに基づくラダーを、単純に5段階で客観的評価を行う事への妥当性は明らかではない。
看護師のラダーは各施設単位で作成されており、コンピテンシーや過去のポートフォリオ等に基づき評価されるものとなる。
診療看護師(NP)におけるクリニカルラダーも同様で、7つのコンピテンシーを客観的妥当性に耐えうるものとしなければならない。
これら7つのコンピテンシーは診療看護師の基礎部分であり、実際の働き方としては、基礎部分(1階)に加えた応用部分(2階)で主に臨床的に活動を行っている。
当然だが基礎部分である1階部分である、7つのコンピテンシーが伴わない状態での臨床業務は、地盤の安定しない建物と同様である。
これらの2階建て理論は、医師・看護師をはじめ、全ての医療従事者においても同様の理論構造が成立する。
例えば、医師の場合、倫理的妥当性の判断の選択を行うシチュエーションが多く存在する。しかし、医師一人で全ての意思決定を行うようであれば、それは医療ではなく倫理的妥当性も担保でき無いことになる。つまり、基礎部分としての未熟さを露呈することになる。これは、診療看護師(NP)も同様で、看護師との共同がコンピテンシーにも盛り込まれているが、看護師を卑下するような態度が好ましくないのと同様である。
診療看護師(NP)版クリニカルラダーの在り方について
日常の活動において組織貢献を体系化し、その結果として給与への反映が必要と考える。
これは過去の給与体系の刷新を意味する。
過去の本邦における給与体系は、年控序列が中心であったが、これからは組織貢献度に対する貢献度を給与へ反映する必要がある。
ただし、より長く勤務することでの残業代による給与は、生産性の観点からは好ましくない。
与えられた時間内で最大限の組織貢献(成果の提示)を行うことこそが、プラスアルファとしての給与へ直結するという考え方こそが、ラダーの有効活用に直結する。
例えば、看護師のラダーを給与に直結させれば、看護師の多くはより高いラダーを目指して成果の提示を行うために思考するはずである。
診療看護師(NP)も同様のロジックである。
診療看護師(NP学会)版ラダーの作成について
日本NP学会における、推奨されるクリニカルラダーは2020年時点ではない。
すなわち、施設独自、特に多くの診療看護師(NP)を抱える施設において必要な事である。
実践への影響
多くの場合、診療看護師(NP)は専門的な開発や臨床能力を認めてもらうための、組織的サポートを受けずに実践を行っている。
コンピテンシーベースのNPCL(Nurse Practitioner Clinical Ladder)プログラムの目標は以下の通りである。
(a)新卒NPのための専門的な進歩の基盤
(b)NPの実践レベルの定義と構造化されたメンターシップ
(c)NPの行動能力の開発
(d)NPの実践的な説明責任
(e)NPの仕事の満足度と定着率
National Database of Nursing Quality Indicators (NDNQI)では、市場賃金の分析は行なわれていたが、NPの業務満足度をベンチマークするデータが不足していた。
2011年にNPに特化したオンライン調査(Misener Nurse Practitioner Job Satisfaction Survey)が行なわれ、尺度の要因は以下の6項目が評価された。
(a)臨床内のパートナーシップ/協調性
(b)挑戦/自律性
(c)専門的、社会的、地域社会的相互作用
(d)職業的成長
(e)時間
(f)利益
NPの満足度は、実践範囲の拡大、組織方針への関与、管理面でのサポートの充実の項目で低かったとされた。
NPに必要とされるものとして、
- 同僚としての尊重
- チームビルディング
- リーダーシップ
- 機能的コミュニケーション
- 広範な知識ベースと臨床スキルセット
- エビデンスに基づいた実践
- 質の高い医療成果の達成に関連した質の高いNPのケア提供
Bennerの5つのレベルを基盤とした、3つのNPレベル
- レベル1Aと1B: 専門的なNP実践を初めて行うNP
- レベル2: その役割を経験しているNP
- レベル3: 臨床実践の専門家やコンサルタントであるNP
NPレベル1A: NP臨床経験2年未満の新規採用者
NPレベル1B: どのような状況でも、NPとして2年以上の臨床経験が必要
NPレベル2: NPとして5年以上の臨床経験を持ち、レベル1Bのコンピテンシーパフォーマンスを超えている事が必要。
NPレベル3: NPとして8年以上の臨床経験を持ち、レベル1Bのコンピテンシーの基準を超えていることが必要。博士号取得もしくは、それと同等の経験と実績を有している事が必要