はじめに
雑誌、Hpspitalist Vol.8 No3の内容を少し参照しています。
末梢静脈路確保は、おそらく医療処置で最も行われている処置の1つです。
血管を刺す、という行為だけとれば、採血も同じですが、その目的がルート確保ということに慣れば、その難易度はあがります。
また、ルート確保は上手な人の専売みたいな風潮がありますが、正しい手法を身につけることが成功への近道です。
ルート確保を失敗すると、医療者も凹みますし、なにより患者さんにとっての負担が増えます。
痛みもそうですし、何度も穿刺することで、さらに良好な血管はなくなり、皮下血腫になったりして、良いことはありません。
良質なルート確保には、良質な血管を探すところからはじまります。
しかし、その前段階として、処置全般に言えることですが、適切な前処置が最も重要です。
この前処置(準備)ができているかどうかで、その後の成功率が8割程度変わってくると思っています。
穿刺部位の選択
採血の場合は、肘前窩の静脈が最も選択されやすいです。
これは、外表面からも見えやすく、血管自体も動きづらく、痛みも比較的少なく、損傷しうる神経が少ないなどの理由から主に選択されています。
しかし、静脈ルートの場合は、肘を屈曲することで、輸液などが落ちづらくなります。
そのため、どうしても血管がない場合の緊急自体以外での、ルート確保時の選択としては使用しません。
下肢はさける
小児では、下肢の使用も良いようですが、成人では推奨されていません。
その理由は、感染や静脈炎のリスクが高いとされているためだそうです。
血液培養も、基本的には上肢からの採血が推奨されています。
これは、下肢の場合は汚染が起こりやすいという理由からです。
また、下肢の場合は深部静脈血栓なども起こりやすいので、可能な限り下肢を避けたルート選択が望まれます。
とはいえ、認知症のある高齢者の場合などでは、上肢にルート確保することで、抜去のリスクが高まりますので、そのあたりはエビデンスというよりは、リスクベネフィットの問題で、輸液をやめるか、下肢からルート確保を行うかというシチュエーションも存在するのかもしれません。
ただし、下肢からのルート確保はあくまでもオプションとして認識し、可能な限り上肢からのルート確保を行い、自己抜去されないような対策を講じるほうが一般的に、良い選択肢の上位にあたります。
穿刺
穿刺には、ベベルを意識することが重要です。
ベベルは、斜めにカットされています。
この斜めにカットされた先端が皮膚や血管に当たることで、先に進みます。
皮膚の場合であれば、よいのですが血管の中に入った後で、ベベルの先端が血管壁に触れてしまうと血管を突き破ってしまいます。
そのため、このベベルを血管の上縁に添わせて進ませることが必要になります。
そのためには、まず内筒と外套の長さの違いを意識することが必要になります。
この長さの差は、太い針になるほど大きくなります。
イメージとしては、血管の中にまず、内筒だけを挿入します。
この時、外套は血管の中に入っていません。
静脈瘤置針の、末端にだけ血液のバックフローが見えている状態です。
その状態になれば、針を弓なりになるように、上側にテンションをかけます。
そうすることで、ベベルの向きが血管と並行になります。
その状態になってから、外套を血管の中に少しだけ挿入します。
あとは、内筒のベベルで血管の壁を傷つけないように、内筒と外筒の分だけ内筒を引いてきます。
この状態になり、血管の中に外筒が入っていれば、内筒と外筒を同時にすすめてもよいですし、外筒だけを進めても良いです。
上側へのテンションのかけ方が難しい場合は、針を少し上向きに屈曲させて挿入するとテンションがかけやすくなります。
まとめ
よく行われる医療処置ほど、奥が深い
そのため、次善の策を持っておくことも必要
件数が多いほど、稀な合併症の発生頻度の増加も遭遇する可能性も高く、穿刺の一般的禁忌部位は周知しておく