新生児・小児 診療科

小児におけるマグネシウム吸入の効果

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/10.1001/jama.2020.19839

はじめに

マグネシウムについては、呼吸器内科の倉原先生が詳細なレビューを、ブログに掲載されています。

https://pulmonary.exblog.jp/21942174/

ブログの信頼性はおいといて、この様な根拠を持ったレビューが無料で見れるようになったということは良い時代になったなーと思います。
逆に、この様な重要事項における勉強も、無料という時代になってきていますので、医療者をはじめ身につけなければならない知識量は、段違いに増加しているのも頷けます。

マグネシウムに関しては、個人的経験では、重症喘息で考慮するということや、臨床試験も行われていました。
ほかには低体温療法に補助的に使用されたりしたこともありましたが、あまり効果はなかったように感じています。

今回の研究

マグネシウムの使いみち

小児の喘息発作に対する、マグネシウム製剤吸入の効果を検証しています。
マグネシウムは、切迫早産の妊婦さんにも使用されるように、平滑筋弛緩作用を伴います。
そのため、気管支平滑筋を弛緩させることで、喘息に対する研究も沢山行われてきたようです。

他にも、不整脈や下剤など様々な用途マグネシウム製剤にはあります。

JAMAに掲載

この領域に関しては、不案内なのですがJAMAというメジャージャーナルに掲載されていることより、インパクトの高いものであることが伺えます。
つまり、過去この様な研究は沢山行われてきましたが、未解決問題として残された臨床的疑問(Clinical question)の1つということです。

結論としては、小児に対するマグネシウム製剤の吸入のメリットはなかったようです。
一方、対照群のプラセボです5.5%の食塩水が使用されています。

高濃度食塩水の吸入

海水の塩分濃度が約3.5%程度とされていますので、吸入とはいえ相当しょっぱいのではないかと感じました。
二重盲検とはいえ、しょっぱいネブライザーを行うことでの、ホーソン効果も完全には相殺できていないような気もします。
とはいえ、ちゃんと読めばAppendixにはその理由が書いているのかもしれません。

通常、痰が出ない人に検査を行う際は、3%食塩水のネブライザーを行います。
3%食塩水は、点滴の場合は生理食塩水500mlから100mlを捨てて、その中に10%食塩水120mlを追加して臨床現場では作成しています。

吸入で使う場合は、そんな量を使用する必要はありませんので、生理食塩水(0.9%NaCl)10mlに、10%NaCl(塩化ナトリウム)3mlを混ぜて作成します。

高張食塩水の効果についても、過去にいろんな研究が行われているようですが、痰を出す以外の臨床的優位性を示す研究結果は乏しいようです。

マグネシウム製剤はオプション

ということで、難治性の喘息発作に対してはオプションとして知っておいても良いのでしょうが、少なくともルーチンでの使用にマグネシウム製剤の吸入における有用性はなさそうです。

Effect of Nebulized Magnesium vs Placebo Added to Albuterol on Hospitalization Among Children With Refractory Acute Asthma Treated in the Emergency Department

<背景>
重要性 マグネシウムを静脈内投与することで難治性の小児急性喘息患者の入院を減らすことができるが、侵襲性と安全性の懸念があるため、使用方法は様々である。入院を予防するためのネブライザーマグネシウムの有用性は不明である。

<目的>
初期治療後も中等度または重度の呼吸困難が残る小児急性喘息患者に対するネブライザーマグネシウムの有効性を評価する。

<デザイン,設定,参加者>
カナダの7つの三次医療小児救急科を対象に,2011年9月26日から2019年11月19日までの期間に,無作為化二重盲検並行群間比較臨床試験を実施した.参加者は、経口コルチコステロイドによる1時間の治療と、アルブテロールとイプラトロピウムの吸入治療を3回行った後、Pediatric Respiratory Assessment Measure(PRAM)スコアが5以上(12点満点)と定義された中等度~重度の喘息を有する2~17歳のその他の健康な小児であった。スクリーニングされた5846人の患者のうち、基準により除外されたのは4332人、参加を辞退したのは273人、その他の除外されたのは423人、無作為化されたのは818人、解析されたのは816人。

介入群 参加者は、硫酸マグネシウム(n=410)または5.5%食塩水プラセボ(n=408)のいずれかを用いたアルブテロールのネブライザー3回投与に無作為に割り付けられた。

<主要アウトカムと測定>
主要アウトカムは、24時間以内の喘息による入院であった。副次的転帰として、PRAMスコア、呼吸数、60、120、180、240分後の酸素飽和度、20、40、60、120、180、240分後の血圧、240分以内のアルブテロール治療が含まれた。

<結果>
無作為化された患者 818 例(年齢中央値、5 歳、男性 63%)のうち、816 例が試験を終了した(409 例にマグネシウム、407 例にプラセボ)。マグネシウムを投与された409人のうち178人(43.5%)が入院したのに対し、プラセボを投与された407人のうち194人(47.7%)が入院した(差、-4.2%;絶対リスク差95%CI、-11%~2.8%;P = 0.26)。ベースラインから240分までのPRAMスコア(変化の差、0.14ポイント[95%CI、-0.23~0.50];P=0.46)、呼吸数(0.17呼吸/分[95%CI、-1.32~1.67];P=0.17。 32~1.67];P=0.82);酸素飽和度(-0.04%[95%CI、-0.53~0.46%];P=0.88);収縮期血圧(0.78mmHg[95%CI、-1.48~3.03];P=0.50);またはアルブテロールの追加治療の平均回数(マグネシウム。1.49、プラセボ:1.59;リスク比、0.94[95%CI、0.79~1.11];P = 0.47)。吐き気/嘔吐または喉の痛み/鼻の痛みは、マグネシウムを投与された409人中17人(4%)、プラセボを投与された407人中5人(1%)に発現した。

<結論と関連性>
救急科で難治性急性喘息を発症した小児において,アルブテロールを含むネブライザーを用いたマグネシウム投与は,アルブテロールを含むプラセボ投与と比較して,24 時間以内の喘息による入院率を有意に低下させなかった.この結果は,難治性急性喘息の小児におけるアルブテロール入りマグネシウムのネブライザーの使用を支持するものではない.

DEEPーLで翻訳
https://amzn.to/3fJqzG6

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