診療科 集中治療科

レムデシビルの立ち位置

https://www.bmj.com/content/370/bmj.m3379

はじめに

Covid治療バンドル

わたしの所属する施設では、レムレシビル・デキサメサゾン・ヘパリンに加えて、セフトリアキソンとアジスロマイシンなどの治療を、酸素需要のあるCovid-19の患者さんに行っています。

レムデシビルに死亡率改善効果はない(現時点で)

そもそも、レムデシビルの効果は、中等症以上における酸素使用期間を2日程度減らすものであり、死亡率減少効果までは検討されていませんでした。

WHOも勧告

Yahoo!ニュースでも、レムデシビル不使用に関するWHOの勧告を大々的に掲載していました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d1542487766b9d2bb361e77b5c1d1991f349f2f6

とはいえ、この状況だから使うしか無いのか?

Covid−19に対する治療薬は、この程度しかないのだから、使うしか無い!
もし使わずに患者さんが不幸な転機をとってしまえば、と考えるのであれば多くの医療者は使うことを選択するのかもしれません。

わたし自身も、この様な情勢なので、根拠としては弱いけど他に適応な薬がないから、使うしか無いのかなと思っていました。

けれども、Dr.内野のブログをみて、ハットさせられました。

https://blog.goo.ne.jp/druchino/e/0fcf0d76c0ec810139fb69647ee84840

歴史は繰り返される

これは、過去の集中治療の歴史を繰り返している様な気がしたからです。

重症患者さんに対しては、考えられるすべての治療介入を行うことが、当然という時代がありました。
例えば、DIC(播種性血管内凝固症候群)に対する治療や、アルブミンなどの血液製剤などがその代表かもしれません。

結局湯水の如く考えうるすべての治療を行った結果、患者さんを助けることができず、今回も仕方なかったね、という時代がありました。

大切なのは、こんなときでも根拠に基づく医療の実践

最近では、根拠に基づく医療(EBM)の流布により、その様な治療を行っている施設は大分減りました。
結局、重症患者さんを助けるための魔法の薬は、殆どないことに気付かされたはずでした。
けれども、現在はCovid-19により、世界中がパニック状態ともいえる情勢ですので、思考停止になっていた部分も個人的に会ったような気がします。

Covidを理由にしない

入院中の患者さんに対しても、以前のように頻繁に会うこともできませんし、身体診察も以前のようには行なえません。
そのような、Covid渦中における医療者としての欺瞞だったような気がしており、個人的に反省すべきと感じました。
もちろん、他の医療者がどうこうではなく、わたし自身に対するメッセージです。

現時点での推奨

https://www.bmj.com/content/370/bmj.m3379

こちらに詳しく、記載があります。
このシェーマが非常にわかりやすいです。
そして、クリックすると研究の症例数なども掲載されており、まるでスライド作りのお手本のようです。

Covid-19の重症度分類

Covid-19は、主に3つの重症度に分類されています。

非重症:Non severe

非重症は、重症化の徴候のない患者さんです。
重症化の徴候がないとはいえ、熱はでますし咳もでますし、倦怠感も非常に強いものにはなりえます。
けれども、肺炎に代表される臓器障害が無いということで、非重症に分類されます。

重症(中等症):Severe

重症(中等症)は、主に肺炎症状がある方です。
カッコして中等症と書いているのは、日本では酸素需要がある状態では中等症と呼ぶ場合があるので書いています。

  • 酸素飽和度が室内気で90%未満
  • 呼吸回数が31回以上(子供の場合は、ベースラインよりも呼吸回数が増加)
  • 重症呼吸窮迫症候群の徴候がある

といった、徴候を伴えば重症(中等症)と判断されます。

クリティカル:Critical

クリティカルな状態とは、適切な日本語がありませんが、専門家による適切な治療介入がなければ数時間で死亡するリスクがある様な状態といえます。

  • 生命維持のための治療が必要
  • 急性呼吸窮迫症候群
  • 敗血症(敗血症性ショック)

レムデシビルの推奨

レムデシビルは、軽症〜クリティカルなフェーズのいずれにおいても、推奨されていません。
ちなみに、コルチコステロイドは重症以上での推奨となっています。

エビデンスプロファイルでも、

  • 死亡率
  • 人工呼吸
  • 重篤な有害事象
  • 7日時点でのウイルスクリアランス
  • 急性腎傷害
  • せん妄
  • 臨床的な改善
  • 入院期間
  • 人工呼吸器使用期間

これらの項目に対し、レムデシビルはプラセボと比較して有意差なし、と判断されています。

コルチコステロイド

最も推奨されているのは、デキサメサゾン6mg/dを7−10日です。

ステロイドは、

  • クリティカルと重症の患者さんの死亡率を改善させます。
  • ステロイド使用により、高血糖は増加します。

他の検討項目としては、

  • 消化管出血
  • 感染症の合併
  • 神経筋力低下
  • 神経精神的効果

等においては、有意差なしと判断されています。

一方、非重症患者さんに対しては、死亡率増加の可能性も示唆されています。

まとめ

  • Covidだからこそ、思考停止になるのはよくない
  • レムデシビルは使わない方向が、現時点での正しいあり方
  • 現時点では、Covidに対する唯一の死亡率改善効果を持つ薬は、ステロイド(デキサメサゾン)
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