総合診療内科 診療科

鑑別疾患の語呂合わせ

病気の診断

病気の診断は、町のクリニックに行けば、殆どは一発診断だと思いますが、実はそんな簡単ではありません。
また、時間経過をみなければ診断できないものもあります。

診断医

総合診療のなかでも、Diagnosticianと呼ばれる診断医がいらっしゃいます。
診断医は診断すれば、それで終わりというわけではありませんが、膨大な鑑別診断から1つの診断の可能性を探っていきます。

それは、ときに出身地がヒントになることもあれば、海外渡航がヒントになることもあります。
診断がなぜ必要かといえば、診断と治療はパラレルなものだからです。
つまり、適切な診断がつかなければ、適切な治療に結びつきません。

一般論として、診断なくして治療なし

救急の場合など、患者さんの状態が切羽詰まっている状況では動きながら考える必要があります。
そのため、対象的療法を行いつつ、診断の可能性を探っていきます。

一方、患者さんの状態が、比較的時間に余裕のある場合は、一般論としては診断をつけてから治療介入を行います。

例えば、感染症か自己炎症性疾患の場合

例えば、発熱の原因が感染症なのか、自己炎症性疾患なのかでは治療方針は大きく変わってきます。
感染症の場合は、抗菌薬やドレナージが主な治療戦略になります。
自己炎症性疾患の場合は、ステロイドを中心とした免疫抑制作用のある薬剤を使用することもあります。

テキストと臨床ではその肌感覚は大きく異る

このように、書面で読めばこれは感染症以外考えられないとか、感染症は考え難いとか、ある程度わかります。
けれども、実際の患者さんはよくわからないプレゼンテーションで病院へ訪れます。
そんなときに、ホントは感染症なのに免疫抑制作用のあるステロイドなどの薬剤を使用することで、感染症はより悪化してしまいます。

副作用に対して知らずに薬剤を新たに追加することも

また、ピットフォールでもありますが、少しだけ珍しい病気を診断して、免疫抑制作用のあるステロイドを使用する事になったとしても、隠れていた結核や肝炎ウイルスなどは必ずチェックが必要です。
この時、珍しい病気を見つけたことで、勢いでステロイドをつかう前に、一通りステロイドを導入する際に必要なものをチェックする必要があります。

たとえば、ステロイドの治療を開始したけど、血糖測定を忘れていたことにより、高浸透圧性高血糖性昏睡に陥る可能性もあります。
これは、最近流行しているCovid−19でも同様です。

Covid-19治療におけるステロイドの場合

Covid-19で死亡率改善効果が示されているのは、デキサメサゾンです。
デキサメサゾンは糖質コルチコイド作用の強いステロイドですので、ときに高血糖による弊害の可能性もあります。
最も、このあたりはナースを含めたチームでミスをリカバリーすることが重要です。

診断困難症例

診断が簡単につかない場合は、ひとまずいろんな可能性を考慮する必要があります。
その1つが、VINDICATEと呼ばれる語呂合わせです。
ヴィンディケィトと呼んでいます。

例えば、医原性が抜けていたりすることもあります。
医原性の可能性は常に考慮する必要があります。
治療のために薬剤を使用しても、その結果副作用が強く出るような場合は、その薬剤の中止を含めた検討が必要です。

よくありがちなのが、先にも書いたように副作用に対し副作用と気づかずに新たな薬剤を足してしまうような場合です。

例えば、甲状腺機能低下症の治療を行っている場合に、貧血に対して鉄剤を使用してしまうことで、甲状腺ホルモン剤の効果が相殺されてしまうような場合もあります。

VINDICATE

有名なものとしては、VINDICATE-Pというものがあります。
Iは3つ、Pは2つあります。

Vascular(血管系)
Infection(感染症)
Neoplasm(良性・悪性新生物)
Degenerative(変性疾患)
Intoxication(薬物・毒物中毒)
Iatrogenic(医原性)
Idiopathic(特発性)
Congenital(先天性)
Autoimmune(自己免疫・膠原病)
Trauma(外傷)
Endocrine(内分泌系)
Psychogenic(精神・心因性)
Pregnancy(妊娠)

とはいえ

これを見ただけで、理解するのは難しいと思います。
そのため、いろんな可能性があるということを考慮し、結局全ては病歴というところに行き着きます。

けれども、病歴がわかったとしても診断のことをわかっていないと、適切な診断にたどり着くことは困難です。
適切な診断は最初は星の数ほどあります。

その星の数ほどの診断から、例えば、北の方角のクラスターの可能性が高いなど、少しづつ絞り込みます。
そして、最終的に1つの診断にたどり着きます。

これは、将棋にも似ています。
藤井棋士は、AIが6億手先まで読んで下した1手を、23分で指したと話題になっていました。

https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20200629-00185551/

診断の世界でも、AIの台頭が話題になっています。
診断も同じように、最終的には最善の1手にたどり着くはずです。
そして、現段階では診断医のほうがまだ、AIに勝っているとされています。

HIVMEDICATION

VINDICATEに似たようなもので、HIVMEDICATIONという語呂合わせもあります。
正直なところ、この2つの棲み分けはわからないのですが、抜けを無くすことといろんな方面から1つの診断の可能性を探っていく事が必要なのだと認識しています。

Hematological(血液疾患)
Infection(感染症)
Vascular(血管疾患)
Metabolic(代謝性疾患)
Endocrine(内分泌疾患)
Drugs(薬剤)
Inflammatory(炎症性疾患)
Congenital(先天性疾患)
Allergic(アレルギー性疾患)
Trauma(外傷性疾患)
Idiopathic(特発性疾患)
Others(その他)
Neoplasm(悪性新生物;がん)

まとめ

  • 診断が難しい場合は、いろんな方面から抜けの無いように、これらの語呂合わせをつかうことは有用
  • ただし、手持ちの鑑別診断自体がすくないと、あまり意味のないものになる可能性もありそう
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