循環器内科 診療科

循環器疾患におけるコルヒチンの効果

コルヒチン

コルヒチンと呼ばれる、古典的な薬があります。
炎症を抑える薬ですが、薬理学的な機序はよく分かりません(成書を参照されてください)。

一般的にどの様なシチュエーションで使用されるのかは分かりませんが、個人的経験では痛風・偽痛風や、家族性地中海熱といった病気に使用されるように思います。
痛風・偽痛風と書きましたが、これらの病気の第一選択は、NSAIDsと呼ばれる非ステロイド性消炎鎮痛剤です。

NSAIDsが一般的であるがゆえに、セカンドラインとしてのコルヒチンの使用は比較的敬遠されているように感じます。
敬遠される理由の一つには、副作用への懸念もあります。
食思不振や下痢などの消化器症状が全面に出てしまうことで、役剤の継続が困難となる場合もあります。

そんな個人的によくわからない薬である、コルヒチンですが近年その根拠のレベルが向上してきています。
それも、思っているよりも副作用は少なそうということもわかります。
今後どうなるかは分かりませんが、一般的に使われるべき薬剤となる可能性があります。

COLCOT Trial 2019年NEJM

https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1912388?articleTools=true

近年コルヒチンを一躍有名にした研究です。
この研究は、最も研究の根拠が高いとされるランダム化比較試験(RCT)です。 

かつ、見られていることでの試験へ与える影響を避ける目的で、二重盲検という被験者も処方医も何を使っているかわからない状態で試験が行われます。
見られていると、ホーソン効果といってバイアスの原因になりますので、如何に盲検化を行うかは試験における主要な課題の1つです。

割付は、コルヒチン0.5mgを1日1回使うか、見た目は同じ形態のプラセボ(偽薬)で比較しています。

主要評価項目(プライマリアウトカム)

その結果、プライマリアウトカムと呼ばれる主要評価項目は、心血管複合死亡、心筋梗塞の蘇生,心筋梗塞,脳卒中,または冠動脈再灌流術に至る狭心症による緊急入院等を評価項目に用いています。

結果的に4745症例が集積され、解析されています。
その結果、プライマリエンドポイントの発生は、5.5%(コルヒチン群)vs 7.1%(プラセボ群)の結果となりました。
結果としては約2%の”差”が生じました。

結果

この2%の差は臨床的に有意なのか、という点に加え統計学的に偶然とは言えないほどの差が生じたのか、という点より検討されています。
その結果は、相対危険度というハザード比で示されています。
 (hazard ratio, 0.77; 95% confidence interval [CI], 0.61 to 0.96; P=0.02).

ハザード比は0.77ですので、プラセボを使用した場合と比較して、コルヒチンを使用した場合の主要評価項目におけるリスクは、23%減少するといえます。
ただこれは、相対的な比率ですので絶対的な差としては、約2%ということですので、臨床的にコルヒチンを導入しても、その効果を実感できるほどではなさそうです。

副作用

試験で重要なポイントは、副作用への懸念もあります。
コルヒチン群では肺炎発生が0.9%に対し、プラセボ群では0.4%(P=0.03)と有意に肺炎発生が増加していました。
こちらも、偶然では説明できないほどの差ですが、0.5%の差になります。
0.5x200=100ですので、ざっくり200人に1人くらいは有害事象が増加するのかもしれません。

COLCOTまとめ

まとめると、コルヒチン0.5mg1日1錠の内服は、最近の心筋梗塞患者において、虚血性心疾患のイベント発生率が低下したという事です。

LoDoCo2 Trial 2020 NEJM

https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa2021372?articleTools=true

この研究も、二重盲検無作為化比較試験で、陳旧性心筋梗塞5522症例を対照とした研究です。
COLCOT研究と同じく、コルヒチン0.5mgを1日1回内服する群とプラセボ群での比較検討です。

主要評価項目(プライマリアウトカム)

主要評価項目も、複合心血管死亡率を含む、複合血管疾患としています。
その結果主要評価項目は、6.8%(コルヒチン群) vs 9.6%(プラセボ群)でコルヒチン群の血管関連の死亡率を含むイベントが減少していることが示されています。

死亡率について

一般的に死亡というのは、最も重篤な状態ですが、最もイベント数が少ないですので、有意差を出すのが困難となります。
そのため、死亡率の減少効果が示されたということだけでも、インパクトのある結果といえます。
とはいえ、複合アウトカムですので本当に死亡率減少効果が示されたのかは、少し異なる解釈が必要です。

副作用

ちなみに副作用は、有意差なしですのでコルヒチンに伴う有害事象はそれほど気にしなくて良いのかもしれません。
副作用の1つである痛風は、むしろプラセボ群で有意に増加しています。

LoDoCo2まとめ

LoDoCo2研究のまとめとしては、COLCOT研究と同じく、心血管死亡率を含む心血管複合イベントがコルヒチン0.5mgを1日1回服用することで抑制できた、というものです。

コルヒチン全体のまとめ

コルヒチンは、よくわからない薬剤ですが血管リスクを伴う場合は積極的な導入が今後なされるべきかもしれません。
ただし、副作用も比較的多い薬剤ですので、薬剤忍容性も重要になります。
ちなみに、コルヒチン0.5mgは、1日約7円のコストです。
冠動脈カテーテル治療ですと、膨大な医療コストがかかりますので、医療費の観点からも今後推奨が期待される薬剤であるといえます。

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