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腎代替療法
腎代替療法とは、いわゆる「透析」と読んでいるものです。
ただ、透析とは、虫垂炎の事を盲腸と呼ぶのとおなじく、正しい呼称では無いこともあります。
腎代替療法の種類
以下の3種類あります。
- 持続
- 間欠
- その中間
持続腎代替療法;CRRT
持続の場合は、一般的にCRRTと呼ばれます。
CRRTの略語それぞれは、以下のようになります。
C:持続、R:腎、R:代替、T:療法
日本の場合は、CHDFと呼ばれることが多いような気がします。
CHDFとは、腎代替療法のモードの事ですので、CRRTの一部ということになります。
CHDFの略語それぞれは、以下のようになります。
C:持続、H:血液、D:透析、F:濾過
つまり、CHDFとは持続濾過透析ということになります。
腎代替療法のモード
ざっくり分けて、2種類あります。
- 透析
- 濾過
- 濾過透析
濾過透析は、透析と濾過のあわせ技です。
つまり、腎代替療法とはこのどちらか、もしくはあわせ技の濾過透析を選択すればよいということになります。
間欠か持続か
わたしが若い頃は、この論争の真っ只中でした。
集中治療に詳しい人は、CRRTを推す声が多かったように記憶しています。
けれども、大規模研究により血行動態以外での利点が無いことが明らかにされてきました。
そして、24時間多少うるさい機会に繋がれることもないため、患者さん目線では、間欠の方が良いことが示されたことは良いことだと思っています。
腎代替療法のまとめ
ざっくりと、持続か間欠かということと、濾過か透析かということだけを決めればよいだけですので、とてもシンプルだと言えます。
ただ、やり始めると奥がふかく、フィルターの選択や処方量と言って、モードの流量などの設定、カテーテル、抗凝固などなど考えることは山程あります。
機械があれば分かるわけでは無いということですね。
個人的経験
2000年代前半でしたが、クエン酸でCRRTを行っていました。
ヘパリンやナファモスタットでの抗凝固はとてもシンプルで比較的簡単なので、クエン酸で抗凝固を始めた頃はワクワクドキドキでした。
エビデンスとアートというか、看護師の力量も試された気がしています。
フィルターライフを伸ばすには、臨床工学技士さんの力も必要だとは思いますが、看護師目線では常に近くで見ている看護師こそがフィルターライフに関連しているといえます。
とはいえ、日本の多くの施設では、臨床工学技士さんがCRRTの回路を組みます。
そうなると、ダウンタイムといって夜間に止まってしまうと、朝までCRRTを回せないという事になりますので、夕方になると高価なフィルターを交換するということが慣例的に行われてきました。
というか、未だに行われています。
国際的な研究をみると、日本の一般的戦略が標準的で無いことに気づきます。
そのため、臨床工学技士さんも当然、この様な論文には目を通すべきですし、コスト面での意識も必要になります。
集中治療領でも、セプシス(敗血症)に効くというメーカーの勉強会の結果を受けて、セプシスなんだからそっち使おうということも聞かれます。
何が正しいのかは、ある程度わかってきましたので、少なくとも明確な根拠を持たない限りは、国際標準・世界標準の治療が選択されるべきの様な気がしています。
RICH trial 2020JAMA
背景
現在のガイドラインでは、重症患者における持続的腎代替療法の第一選択治療として、局所クエン酸塩抗凝固療法(体外透析回路のフィルター前の血液にクエン酸塩溶液を添加する)の使用が推奨されているが、この推奨に関するエビデンスは、少数の臨床試験およびメタアナリシスに基づいています。
目的
全身ヘパリン系抗凝固療法と比較して、クエン酸塩局所抗凝固療法がフィルターの寿命および死亡率に及ぼす影響を明らかにする。
デザイン
2016年3月から2018年12月までの間に、ドイツ全土の26施設で並行群無作為化多施設共同臨床試験を実施しました(追跡調査の最終日、2020年1月21日)。重症急性腎傷害または腎代替療法開始の臨床適応を有する重症患者596例が登録された後、本試験は早期に終了しました。
患者は、目標イオン化カルシウム値1.0~1.40mg/dLの局所クエン酸塩抗凝固療法(n=300)、または目標活性化部分トロンボプラスチン時間45~60秒の全身ヘパリン抗凝固療法(n=296)のいずれかに無作為に割り付けられ、継続的な腎代替療法を受けました。
主要アウトカム
フィルター寿命と90日死亡率でした。
副次的エンドポイントは、出血性合併症および新規感染症であった。
結果
無作為化された638人の患者のうち、596人(93.4%)(平均年齢67.5歳、女性183人[30.7%])が試験を終了しました。局所クエン酸塩群と全身ヘパリン群では、フィルター寿命中央値は47時間(四分位間範囲[IQR]、19~70時間)対 26時間(IQR、12~51時間)でした(差は15時間[95%CI、11~20時間];P<0.001)。90日間の全死因死亡は、300人中150人対296人中156人で発生しました。
全身ヘパリン群と比較して、クエン酸塩局所投与群では出血性合併症が有意に少なかった
15/300人[5.1%] vs 49/296人[16.9%]差、-11.8%[95%CI、-16.8%~-6.8%];P<0.001
クエン酸郡では、新規感染が有意に多かった
204/300人[68.0%] vs 164/296人[55.4%];差、12.6%[95%CI、4.9%~20.3%];P=0.002
結論
持続的な腎代替療法を受けている急性腎傷害の重症患者において、全身性ヘパリン系抗凝固療法と比較して、局所クエン酸塩による抗凝固療法は、フィルターの寿命を有意に延長させた。この試験は早期に終了したため、抗凝固療法の死亡率への効果について結論を出すにはパワー不足であった。