Contents
血液ガスの評価方法
Step1:pHのチェック(アシデミアかアルカレミアか)
Hospitalist 代謝性アシドーシスより引用
Step2:一次性変化は呼吸性か代償性か
Step3:代謝反応の計算・評価
Step4:アニオンギャップ(AG)の計算
Step5:
・AGが開大していない場合
・AGが開大している場合(⊿−⊿を計算する)
・浸透圧ギャップの測定
Step6:病歴・身体所見を合わせた原因の評価と対応
どの血液ガスの本を読んでも、たいていこのような項目について評価するように書いてあります。
まずは基本に忠実に、血液ガスを読むことが重要です。
何度も何度も読むうちに、算数の計算と同じように計算が早くできるようになります。
Step1:アシデミアかアルカレミアか
まず、pHの確認は大前提です。
pHをみて酸性かアルカリ性なのかを、確認します。
通常、7.4±0.5程度です。
つまり、この範囲(pH7.35ー7.45)より逸脱していれば、異常です。
ちなみに、昭和生まれは「ペーハー」と発音すると聞いたことがありますので、最近は「ピーエイチ」のほうが一般的なのだと思われます。
アシドーシスとアシデミア
この用語も混乱を招く一因です。
アシドーシスとは一言で、酸性になろうとしている状態。
アシデミアは酸性になっている状態、と言えます。
アルカレミアとアルカローシスも同じです。
通常アシデミアにならないように、体は頑張りますがついに疲れ果てて、アシデミアになります。
つまり、アシデミアの方がアシドーシスよりもより重篤な状態と言えます。
そのため、用語の使いかたを間違える解釈に困るケースが出てくる可能性があります。
アシデミアになると
カテコラミンの効果が乏しくなります。
心筋の収縮力も低下します。
高カリウム血症になります。
外傷診療における死の3徴でも、アシドーシスが含まれています。
ちなみに他の2項目は、凝固異常と低体温です。
Step2:一次性変化は呼吸性か代謝性か
ヘンダーソンの公式
pH = 6.1 + log ( [HCO3 - 1 / [0.03 x PCO2])
pHは「HCO3-」と「PCO2」により規定されている事がわかります。
このどちらの要因がプライマリなのかを、ここでは判断します。
どちらも見ましょうという事と、どちらが最初に動き始めたのかという事ですね。ー
どっちがどっちとは、なかなか判断つかない場合もあります。
HCO3-は急性の反応では動きませんので、そのあたりも評価に含まれる場合もあります。
Step3:代償反応の計算・評価
Winterの公式で、呼吸性代償を予測する
PaCO2 = 1.5 x [HCO3-] + 8 ± 2
簡単に憶えるには、HCO3-が1低下でPaCo2が1低下する
もしくは、pHの下2桁と一致するというものもあります。
以前は、マジックナンバー15と言うものが一般的でした。
HCO3-に15を足すと、PCO2の値になるというものです。
最近は使われていないようです。
Winterの公式では以下を示唆
・予想よりもPaCO2が高い場合は、呼吸性アシドーシスの合併
・予想よりもPaCO2が低い場合は、呼吸性アルカローシスの合併
代謝性アシドーシスの場合にSBEを使用する方法では、SBEがPCO2の変化になるとされています。
Step4:アニオンギャップ(AG)の計算
AG = [Na+] - [Cl-] - [HCO3-]
AGは陽イオンと陰イオンの多くを占め、かつ簡単に測定可能なNa・Cl・HCO3-より算出されます。
通常基準値は、12程度とされています。
低アルブミンの場合
アルブミンは弱酸ですので、アルブミン値によっては補正が必要となります。
ちなみに、比較的重症患者さんではアルブミンは低値の事が多いです。
したがって、アルブミンが低いというだけで、弱アルカリに傾いているといえます。
AG補正値 = AG計算値 + 2.5 x [Alb正常値(4.5) - Alb測定値]
Alb1g低下するごとにAGに2.5を加算します。
Step5
Step5−0:AGが開大していない場合
正常腎では、高Cl性アシドーシスはアンモニウム排泄増加がおこります。
すなわち、尿中アンモニア増加があれば、原因は腎以外と考慮されます。
逆に増加していない場合は、原因が腎と判断できます。
Step5-1:AGが開大している場合(⊿−⊿の計算)
⊿AG = AG計算値 - AG正常値
⊿HCO3- = HCO3-測定値 - HCO3-正常値
⊿ - ⊿ = ⊿AG - ⊿HCO3-(ケトアシドーシス)
⊿ - ⊿ = 0.6 x [⊿AG - ⊿HCO3-](乳酸アシドーシス)
⊿−⊿の解釈
- <−5: AG非開大性アシドーシス合併
- −5~+5:AG開大性アシドーシスのみ
- +5<:代謝性アルカローシス合併
Step5−2:浸透圧ギャップの測定
計算した浸透圧と実際の浸透圧のギャップがある場合、体外からの浸透圧物質の可能性が示唆されます。
例えば、エタノールが有名です。
医療現場では、マンニトールなどの浸透圧物質の影響も有名です。
計算浸透圧 = 2 x [Na+] + BUN / 2.8 + Glu / 18
この式から分かる事は、ナトリウム・尿素窒素・血糖の3つだということです。
つまり、実際の浸透圧と、この計算式から求められた浸透圧にGapがあるという事は、上に書いた浸透圧物資の作用が示唆されるということになります。
Step6:病歴と身体所見を合わせた原因の評価と対応
アシドーシスのタイプが絞り込めたら、その原因を推定します。
原因は、アシドーシスの原因により以下のような語呂合わせがあります。
AG開大性代謝性アシドーシス:GOLD MARRK
- G:エチレングリコール
- O:アセトアミノフェン
- L:L−乳酸アシドーシス
- D:D−乳酸アシドーシス
- M:メタノール
- A:アスピリン
- R:腎不全
- R:横紋筋融解
- K:ケトアシドーシス
AG非開大性アシドーシス:HARD UP
- H:高カロリー輸液
- A:アセタゾラミド
- R:尿細管性アシドーシス
- D:下痢
- D:利尿薬
- D:希釈性アシドーシス
- U:尿管腸瘻
- P:膵液瘻
まとめ
血液ガスは基本に忠実に、順番どおりに読むことが大切
基本の型を身に着けたら、他の血液ガスの解釈方法も検討する