診療科 集中治療科

気管切開カニューレ抜去の方法

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2010834?query=featured_home
10.1056/NEJMoa2010834

集中治療における気管切開

集中治療と気管切開は切っても切れない関係性にあります。
人工呼吸期間が概ね、2週間程度を目処に気管切開が行なわれることが多いと思います。
しかし合併症の観点からは、2週間程度で必ず気管切開が必要であるという妥当性はいくつかの研究より乏しいと思っています。

https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(15)00007-7/fulltext

メタ解析の結果

このメタ解析は、13つの研究、約2400症例より構成されています。
この研究では、早期気管切開を1週間以内、晩期気管切開を1週間以降と設定されています。
その結果、死亡率には影響ありませんが、肺炎の発生率は早期気管切開で低下するとされています。
これは、気管切開を行ったことで、鎮静などが不要となった可能性など様々な要因があると思われます。
とはいえ、現存する根拠では早期気管切開は長期的にはそれほど利点はありませんが、長期人工呼吸が必要と予測される患者さんにおいては早期に行った方が色んな観点からメリットのほうがありそうな気がしています。

気管切開のメリット

気管切開は鎮静が不要になったり、人工呼吸器の離脱に向けては有利な点が多く存在します。
鎮静が不要になるということは、アクティビティも拡大します。
気管挿管の場合は、基本的に人工呼吸器を外す事はできませんが、気管切開の場合は人工呼吸機を外すことも可能です。
口周りもスッキリしますので、管理もしやすくなります。

そのため、長期人工呼吸管理が予測される症例に対しては、先にも書いたように早期の気管切開が好ましいと言えます。
例えば、頚髄損傷で人工呼吸管理が必要となる場合などです。
※ 頚髄損傷イコール気管切開ではありません。

他にも、CPODの増悪で難渋した場合にも気管切開が選択される場合があります。
個人的には最近はNPPV(非侵襲的陽圧換気)という選択肢があるので、敢えて積極的に気管切開を選択する必要性は以前と比べて少ないのではないかと思っています。
しかし、慣れていない施設の場合は気管切開が行なわれることもありますし、慣れている施設であっても、人工呼吸の離脱に難渋することはあります。

人工呼吸の離脱

通常人工呼吸機の離脱には、自発呼吸トライアルという方法が用いられます。
過去は、SIMVという自発呼吸と強制換気が組み合わされたモードが使用されていましたが、SIMVは人工呼吸離脱までの時間がかかるので一般的には使用されていないのが現状です。
また、SIIMVは自発呼吸と強制換気の混合ですので、患者さんの人工呼吸器との同調整も微調整が必要になります。
そのため、SIMVというモードはそもそも使用されないことが多いですが、使用するのであれば集中治療室などの頻繁に微調整が可能な環境で使用するべきだと思います。
個人的にはSIMVは、難しい人工呼吸機のモードだと認識しています。

ウィーニング

近年は一般的に、ウィーニングという概念はありません。
子どもを育てた方であれば、わかると思いますが乳離れという意味のようです。
これ、ホントに少しずつ授乳の回数が少なくなっていって、最後には離乳します。
これと全くおなじように、時間をかけて人工呼吸機を離脱していく方法のことをウィーニングと呼ばれます。

呼吸筋などに問題がある方では、一度気管挿管してしまうと、色んな要因により人工呼吸を突然止めると自分の筋力だけでは呼吸ができなくなってしまいます。
そのような場合には、古典的ウィーニング(Prolonged weaning)が行なわれます。
ウィーニングを行う場合には、一般的には気管切開が前提です。

気管切開の離脱

いずれにせよ最終的には人工呼吸器を離脱して、気管切開孔が閉じる事で、元の生活(呼吸様式)に戻ることが可能となります。
気管切開を含む、人工気道の離脱には換気と気道プロテクションの2つの大きな要因があります。
つまり、換気+酸素化が改善し、痰などでの気道閉塞のリスクが低いと臨床的に判断された時点で気管切開チューブの抜去が行なわれます。

わたしの経験では、気管切開の離脱(カニューレの抜去)にあたっては、換気補助がなくなり、酸素補助がなくなり、スピーチカニューレで通常の呼吸を練習してから、最終的にカニューレを抜くことが多かったです。
しかし、このような方法は慣例的に行なわれているだけであり、今回の研究は明確なトライアルがなかったという事を示唆しています。

今回の研究

今回、気管切開カニューレの抜去にあたり、ランダム化比較試験が行なわれました。
世界の集中治療室では、毎日のように気管切開が行なわれています。
その多くは、人工呼吸の離脱困難と気道プロテクションの観点から行なわれます。

気管切開に関する研究はたくさんあります。
たとえば、方法(外科的・経皮的)、時期(早期・晩期)、集中治療室の質としての気管切開率の変化など、医療の質としての観点などもあります。

正直、今更NEJMという世界トップのジャーナルに掲載されるとは思っていませんでした。
つまり、今回のこの結果はこの領域のエビデンスが不足している可能性を示唆しています。
まさに、ブルーオーシャンです。

わたしの経験では、このキャップを使用した方法は行った経験はほとんどありませんが、その方法はそれほど間違っていなかった、と言うことなのかもしれません。

REDECAP(Decannulation Time Limit- ing Capping ) trial

方法

5 ヵ所の集中治療室(ICU)で,意識はあるが重症の,気管切開カニューレを装着している成人が登録されました。人工呼吸器離脱後の患者を対象としました.非盲検試験で,患者を 24 時間のキャップ装着テストと間欠的な高流量酸素投与を受ける群(対照群)と,気道吸引の頻度を抜管可能な状態の指標とし,持続的な高流量酸素投与を受ける群(介入群)に無作為に割り付けられました。主要評価項目は抜管までの期間とし,log-rank 検定を用いて比較されました。副次的評価項目は,抜管失敗,人工呼吸器離脱失敗,呼吸器感染症,敗血症,多臓器不全,ICU 在室期間,入院期間,ICU 内死亡,院内死亡とされました。

結果

330 例が対象となりました。患者の平均(±SD)年齢は 58.3±15.1 歳で,68.2%が男性でした.161 例が対照群,169 例が介入群に割り付けられました。抜管までの期間は介入群のほうが対照群よりも短かいでした(中央値 6 日 [四分位範囲 5~7] 対 13 日 [四分位範囲 11~14],絶対差 7 日 [95%信頼区間 5~9])。また,介入群のほうが対照群よりも肺炎・気管気管支炎の発生率が低く,入院期間が短いでした。その他の副次的評価項目は 2 群で同程度でした。

結論

持続的な高流量酸素投与下で気道吸引の頻度に基づいて抜管を判断した場合,間欠的な高流量酸素投与下で 24 時間のキャップ装着テストに基づいて判断した場合よりも抜管までの期間が短縮しました。抜管失敗率に群間差は認められませんでした。

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