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はじめに
中心静脈カテーテルは全米で、年間1500万カテーテル日使用されています。
CLABSIは25万件発生し、3−6万人がCLABSIで死亡しています。
CLABSI 1件あたり、3,700−39,000ドルが必要になり、入院日数増加の原因となっています。
定義
血液培養1セット以上から病原菌が検出される事が前提になります。
患者に発熱、悪寒、血圧低下などの症状・所見が少なくとも1つあり、ほかの感染症を示唆する血液結果がない状況で、常在菌(例;コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ジフテリアを除くコリネバクテリウム属、B,anthracisを除くバシラス属)が陽性の場合には、血液から培養された細菌が培養で同一菌が陽性となり、尿路感染症または腹腔内感染症などの別の部位の感染症と関連しないということが含まれています。
リスク因子
- カテーテル留置前に長期入院している
- 長期のカテーテル留置(7日以上)
- 挿入部位やカテーテルのハブの汚染
- ガイドワイヤーによるカテーテルの交換
- カテーテル挿入者の経験不足
- 好中球減少
- 早産児
- ICUにおける患者対看護師比率が低い
- 中心静脈栄養
- 標準的でないカテーテルケア
- 輸血
CLABSIを減少させる因子
- 女性
- 抗菌薬の使用
- 抗菌薬含有カテーテル
- マシキマムバリアプリコーションでのカテーテルの挿入
- カテーテル挿入前のクロルヘキシジンの使用
予防
バンドル
カテーテル挿入時のバンドルが有用で、費用対効果にも優れています。
バンドルの成功は、医療者のアドヒアランスに依存します。
医療従事者のアドヒアランスに関しては大変興味深い事象であると思います。
患者さんの服薬アドヒアランが不良の場合は、患者さんの責任にしたがる医療者は少なからずいます。
しかし、逆の立場になり例えば、1日4回の内服薬を処方されたとします。
その内服薬を、欠かさず医師の指示通りに服用し続ける事が可能な医療者はどのくらいいるのでしょうか。
けれども、我々医療者はプロフェッショナルですので、本来は当然のごとくこれら根拠に基づくバンドルの実践は行われなければなりません。
逆に、行わないのであればその根拠を覆すほどの根拠を持ち合わせ置かなければなりません。
ということで、一般的に定められているバンドルは、医療のプロとして反証する根拠を持ち合わせていない場合は、素直に実践すべきです。
根拠とは、そのように使用されるべきかと思います。
カテーテル挿入時のファッションとその周囲
このあたりはもはや常識だと思っている人もいますが、実はあまり出来ていないこともあります。
特に集中治療室以外の場所などで散見されます。
- 帽子
- ガウン
- マスク
- 滅菌手袋
- 全身を覆う滅菌ドレープ
上記に加えて、
- 手技を行う人の周囲を広くとる
- 処置台の上面を覆える滅菌ドレープを使用する
なども個人的には追加したい項目です(特に、慣れていない人の場合)。
シミュレーショントレーニング
中心静脈カテーテルを挿入するものは、1人で挿入する前にシミュレーショントレーニングを受けるべきです。
これも近年はシミュレーショントレーニングの台頭により、行っていない医療者はいないと思います。
しかし、実際の患者さんとは異なりますので、シミュレーションのようにうまくいかない場合もあります。
またシミュレーションのやり方にも大きな問題があるのかもしれません。
たとえば、航空業界ではシミュレーションは膨大な費用をかけて行われています。
その費用と比較すると、医療者におけるシミュレーション教育は、時間的にも金銭的にも不足しているような気がします。
さらに、中心静脈カテーテル挿入介助を行う、看護師などのメディカルスタッフもシミュレーションで挿入のシミュレーションを行うことが効率的で効果的なカテーテル挿入に寄与するような気がしています。
看護師の場合は、挿入した事がないため、医師が数回失敗しても介助することしかできません。
通常、3回以上穿刺に失敗すると、合併症の率が上がるとされています。
そのため、適切なタイミングで看護師による助言も必要です。
ある有名な研究では、看護師に中止の権限が与えられた事により、有害事象の減少に寄与したという報告もあります。
チェックリスト
チェックリストの使用の有用性も示されています。
侵襲があり、かつ頻繁な手技であるほどチェックリストの有用性は高まるような気がします。
中心静脈カテーテル挿入にも、チェックリストがあります。
これは、バンドルとも重なる部分がありますが、たとえばクロルヘキシジンアルコールによる消毒や、高度バリアプリコーションなどが含まれています。
穿刺部位
以前は大腿静脈の選択は、感染を増加させることが示されていました。
近年の報告では、大腿静脈の選択においても、CLABSI増加の根拠には乏しい事が示されています。
ただし、肥満患者ではCLABSIが増加したという結果がありますので、避けるべきとされています。
とはいえ、大腿部は歩行の邪魔になり、排泄物による汚染の機会も増やしますので、好んで穿刺されてはいないように思います。
内頚静脈への留置は、超音波を使用しての挿入が、合併症のリスク軽減に寄与しています。
もはや、超音波の使用は特別な理由がない限り使用しなければ医療者の責任が問われるように感じています(特に内勁静脈)。
消毒
カテーテルのハブやコネクタは、70%アルコール(ポビドンヨード・クロルヘキシジンのアルコール)で5秒以上消毒することでコンタミが減るとされています。
ある施設では、アルコール綿で3回清拭面を替えて拭いていました。
その効果がどの程度あるのかは知りませんが、効果が無いのであれば時間の無駄になります。
まとめ
中心静脈カテーテルは慣れていない人が行う場合は、指導医や慣れたナースの指導が、最終的に手技を行う人を救うことになります(もちろん患者さんのためです)。
つまり、手技を行う人を取り巻く全ての医療スタッフが、周知しておかなければならない事項です。
チェックリストは使用したほうが良いですが、そのチェックリストにチェックを行う看護師の指導のほうが優先される気がします。
チェックリストは使うなら、正しく使うべきかと思います。
中心静脈カテーテル挿入前・中・後もバンドルを意識しましょう。