患者安全と医療の質改善より
はじめに
最も頻度の高い医療関連感染症の1つです。
医療関連感染全体の約13%を占めるとする報告もあります。
入院患者さんの約24%に尿道カテーテルが挿入されているようです。
カテーテル関連尿路感染症の70−80%は留置式カテーテルに起因しています。
米国では、CAUTIの致死率は2.3%、CAUTIからの血流感染症の死亡率は9%、敗血症では、25−60%とする報告もあります。
米国では、2008年よりメディケア・メディケイドサービスセンターでは、CAUTIに関連する医療費の支払いを中止したそうです。
これは、米国らしい政策に思えますが、病院に入院した理由以外が原因で合併症を生じる、さらにはそれが原因で死亡や重篤な機能障害に至ってしまうようであれば、大きな問題であると認識されるべきです。
一般的に臨床家は、原疾患の治療は全力でおこなっていますが、このような合併症予防などは時に疎かになりがちです。
たとえば、CAUTIの合併症や致死率のことを考えれば、安易に長期留置すべきでないことはあきらかです。
しかし、入院中の患者さんは時に理由もなく尿道カテーテルが留置されている場合があります。
また、高齢者では前立腺肥大症や神経因性膀胱などが原因で、尿を自分の意思で排泄出来ない場合があります。
そのような場合でも、薬剤を使用するなどで可能なかぎり尿道カテーテル留置の状態を避けることが、CAUTIを予防することに繋がります。
尿路感染症は、容易に敗血症に至る病気ですので、とても怖い病気であることと天秤にかけて、尿道カテーテルを留置すべきであると言えます。
また、高齢者での上記の排尿障害に関しては、間歇的導尿法を行うことで、CAUTIは減少するとされていますので、適切なカテーテル管理が行えるのであれば、泌尿器外科などでは積極的に行われている介入方法です。
挿れたもの(始めたもの)はいつ抜くか(止めるか)を医療者は明確にするべきだと思います。
そして、毎日の回診でのチェックリストに設けることで失念は減少するとも思われます。
このあたりも、看護師さんの方がよく理解していますので、看護師を含めたCAUTI予防プロジェクトなどは積極的に行うべきであると思います。
リスク因子
最大のリスク因子はカテーテル留置期間です。
留置期間が延長するほどに、細菌尿のリスクがあがります。
だいたい1日で3%(3−7%)のリスクとされていますので、1週間で20%4週間で約80%の患者さんがリスクを獲得するとされています。
ほかには、女性、重篤な基礎疾患、手術の不要な疾患、50歳以上、手術室以外でのカテーテル挿入、糖尿病、腎機能障害などがあります。
尿路由来の菌血症のリスクとしては、好中球減少、腎機能障害、男性などとの関連が明らかとされています。
予防
先にも書きましたが、カテーテルを使用しないことです。
これは、認識を変えるしかありません。
例えば、集中治療室(ICU)だからカテーテル留置が当然と言ったような風潮です。
わたしが以前研修した病院では、尿量確認は4時間毎でバッグにはカバーが掛けられていましたので、看護師さんたちは尿量なんて見ていませんでした(個人的には最後まで慣れませんでしたが・・)。
そして、バッグ内の尿量ではなくわざわざ瓶に移して尿量の確認を行っていました。
このようなやり方では、汚染の機会を増やすだけのような気がします。
だったら、4時間おきにオムツ確認やエコーで膀胱内尿貯留を確認した方がCAUTIのことを考えるのであれば、よさそうです。
また、医師の約4割は受け持ちの患者さんにカテーテルが留置されていることを認識していないようです。
繰り返しになりますが、病院単位で遵守すべきマニュアルを設定し、毎日確認することが必要です。
米国のように、罰則があるから予防を行うようであれば、医療者の主体性は無いということと等しい用に感じています。
これらのカテーテル減少戦略の有用性も示されており、使用期間が約1.06日、CAUTIの頻度が約50%に減少したという報告もあるようです。
留置の際は清潔操作も重要ですが、特に慣れていない人では煩雑になりがちです。
手洗い(手指消毒剤の使用)も重要ですので、尿道カテーテルに触れる前は同じ患者さんであっても、手洗いを行うことも推奨されます。
閉鎖系を保つことも重要ですので、あまり頻繁に尿を破棄するという行為も閉鎖系を保つということからは、(根拠はありませんが)あまり推奨されないのかもしれません。
看護師さんの間では常識なのかもしれませんが、陰部の洗浄が効果的という事はこの本には記載されていませんし、わたし自身もその様な根拠は知りません。
まとめ
カテーテル関連尿路感染症は、最も遭遇頻度の高い医療関連感染症です。
予防戦略としては、カテーテルを留置しないことや、留置してもなるべく早期に抜去することが重要です。
施設単位で、予防プログラムを策定し、毎日の評価を看護師中心に行う事で、早期抜去や不要なカテーテルの抜去に繋がります。