医療は日進月歩とはよく言ったもので、毎日のように新しい論文が出されては、過去のエビデンスの一部は陳腐化し、刷新されていきます。
医療がいくら細分化されようとも、自分の持っている知識だけでは、現代の医療にとても太刀打ちできません。
そのためには、引き出しを持っておく必要があります。
特に最近では、スマートフォンで便利に使えるアプリがありますので、わたしが使用しているものをいくつか紹介したいと思います。
1:Medcalc
https://apps.apple.com/jp/app/medcalx/id1041464932 より引用
多分最もつかっているアプリです。
いろんな計算が出来ます。
例えば、GFR(Cockroft-Gault)の計算は、薬剤使用の際に使います。
最も多いのは抗菌薬を使う際に、腎臓の機能に応じて薬剤の調整を行う場合です。
腎機能は、一般的に血清クレアチニン(SCr)が使用されます。
ただ、この値は腎臓の機能を示すものの、例えば筋肉量が多い方では高くなったりします。
腎臓はそれほど個体差のない臓器ですが、例えば体重50kgの人と100kgの人では、薬剤が代謝される時間が異なります。
そこで、国際的に共通の認識のもとに腎臓の機能を評価して、薬剤を使用しましょうという事になりました。
その共通の認識が、GFR(Cockroft-Gault)になります。
GFRにもいくつか種類がありますが、薬剤の調整を行う場合には、Cockroft-Gaultを使用することになっています。
使用することになっている、と言うよりは研究の際に、この公式を用いて薬剤の調整が行われているため、使用しているということになります。
例えば、セフトリアキソン(CTRX)というよく使用される抗菌薬の特徴は、肝代謝ですので、腎機能調整が不要です。
そのため、CTRXを使用する場合には、多少煩雑な計算が不要になります。
一方、類似した抗菌薬である、アンピシリンスルバクタム(ABPC/SBT)という抗菌薬は、腎機能による調整が必要になります。
抗菌薬全般では、腎機能による調整を必要とする薬剤が多いです。
例えば、体重60kgで80歳男性、血清クレアチニン(SCr)が1.3だったとします。
アプリで計算すると、Clearance39ml/minとなります。
次に別のアプリをつかいます。
2.Johns Hopkins ABX guide
http://ios-app.jp/1170194581.html より引用
GFR(Cockroft-Gault)により、適正な腎機能が分かったところで、抗菌薬の量を計算します。
多いのは、いわゆる熱病といわれる、サンフォード感染症治療ガイドが有名です。
ちなみに、サンフォードもアプリがあります。
わたしが使用しているものは、Johns Hopkins ABX guideというものになります。
これで、適正な抗菌薬の量を調べます。
ABPC/SBT(ユナシン)という抗菌薬の場合
- 通常量:3gを6時間毎(中等症〜重症)
- GFR50−80:3gを6時間毎
- GFR>30:3gを6時間毎
- GFR15−29:3gを12時間毎
- GFR<15:3gを24時間毎
- 透析:1.5gを12時間毎で透析後
- 持続的血液濾過:3gを12時間毎
- 持続血液濾過透析:3gを6時間毎
といった感じで記載されています。
多めの量を記載していますが、もっと細かく書かれています。
そのため、クリアランス39の患者さんですと、GFR>30になるので、通常量の使用で良さそうです。
抗菌薬の量に関しては、この2つのアプリは個人的には、頻用しています。
また、一度調べたGFRもSCrの値が変化することで、調整が必要になります。
そのため、採血が採られたら毎回計算した方がよいと思われます。
多すぎも少な過ぎも問題ですので、適切な腎機能に併せて調整が必要です。
Renal adjust(リーナルアジャスト)とか呼んでいます。
3.DxSaurs
https://dxsaurus.appedia.net/ より引用
これは完璧とは言い難いですが、見逃しを防ぐ目的で使います。
例えば、右下腹部痛ですと、見逃してはいけないものとして
- 虫垂炎
- 腸管虚血
- 卵巣茎捻転
- 卵巣膿瘍
- 異所性妊娠
- 鼠径ヘルニア
- 精巣捻転
- 腹部大動脈瘤
鑑別診断として、
- 虫垂炎
- 胃腸炎
- 過敏性腸症候群
- 骨盤内炎症性疾患
- 卵巣捻転
などなど、他にも沢山記載されています。
少なくとも、個々に記載されているものであれば、鑑別診断の見逃しという点からは見直すことが可能です。
ただ、診断を行うために使用するには多少無理がありますので、そのへんは使いながら使いこなしていければよいと思います。
4.Up To Date
https://apps.apple.com/de/app/uptodate/id334265345?l=en より引用
これは、電子教科書です。
わたしのような英語が苦手な方は、翻訳が必要です。
そういう方は、実はアプリではなく、Google chromeアプリで開いて、日本語に翻訳すればだいたいの意味はわかります。
これからは、電子教科書の時代です。
アプリもそうですが、紙のテキストは欠点が多いです。
重い、破れる、かさ張る、持ち運びが困難、検索が困難、などなど。
一方電子書籍ですと、これらの欠点はすべてカバーされますので、利点のほうが大きいと思います。
とくに、臨床家にとっては、現場ですぐに答えが知りたいです。
そのため、すぐに最新かつ割と根拠に基づいたレビュー集は、専門以外の領域はとくに臨床の強い味方になります。
必須といえるアプリですが、個人契約での欠点は高価ということです。
病院や組織単位で契約していればよいのでしょうが、ここばかりはネックです。
まとめ
他にも使用しているアプリはいくつかあります。
今回は、とくに利用しているアプリを紹介しました。
客観性のあるアセスメントには、必須といえるものばかりです。
多少の課金は目を瞑って、購入しましょう。
そして、高いお金を払ったのだから、是非毎日使いましょう。
使い倒せば、いつか自分のものになる、はずです。