Contents
点滴・輸液製剤の種類
- 細胞外液
- 細胞内液
- アルブミン
細胞外液と細胞内液の代表的な輸液製剤
細胞外液
- ラクテック®(乳酸リンゲル)
- ソルアセト®(酢酸リンゲル)
- ビカーボン®(重炭酸リンゲル)
細胞内液(3号液)
- ソリタT3®
- ソルデム3A®
細胞内外での、主な電解質物質
細胞内液:カリウム(K)が多い、ナトリウム(Na)/クロール(Cl)が少ない
細胞外液:Kが少なく、Na・Clが多い
他にも輸液を考える上で考慮すべき物質(輸液に入っている物質)はありますが、今回はこの3点だけに注目します
コンパートメントモデルでは、細胞外液は点滴しても、1/4だけが血管の中に残るとされています
一方細胞内液は、ほとんど血管の中には残りません
例えば、5%ブドウ糖液の場合であれば、血管内外・細胞内外に等しく分布しますので、血管内には1/12しか残らないとされています
血圧が低い場合に用いる輸液
血管の中に輸液を入れてあげることで、血圧は上がりますので細胞外液の点滴を行います(ほんとは血圧を上げるのではなく、心拍出量を上げるためです)
血圧が低い場合に、細胞内液を輸液するとどうでしょうか?
たとえば、500mlの容量を血管の中に残すためには、細胞外液であれば1/4血管内に分布するため2Lの輸液を行えばよいです
しかし、500mlを血管内に入れるために、5%ブドウ糖を輸液すると1/12が血管内に分布するため、6Lの輸液が必要になります
6Lも輸液を行えば、全身の臓器は水浸しになってしまい、肺や腎臓などの主要な臓器は機能しなくなってしまいます
等張性の輸液
- 生理食塩水
- 5%ブドウ糖
同じ、等張性輸液であっても、その個性は全く異なることがわかりますね
臨床的な輸液の選択
バイタルサインによる選択(かなり、ざっくり)
- バイタルサインが安定している人には、細胞内液
- バイタルサインが不安定な人には、細胞外液
ナトリウムによる選択
- ナトリウムが低い場合は、細胞外液
- ナトリウムが高い場合は、細胞内液
※落ちついている入院患者さんで、絶食が必要な場合、細胞内液が点滴され続けることもあります。そのような場合、医原性の低ナトリウム血症の可能性があります。
だいたい、3号液は500mlで塩1g位入っています、1日3本(1500ml/d)の輸液だとしても、3gしか体内に入りません
心不全では、塩分6g制限と言われていますので、それを考えるとやや少ないですね
カリウムによる選択
- カリウムが高い場合、細胞外液
- カリウムが低い場合、細胞内液
※高Kかつ絶食の場合は、輸液にブドウ糖が入っている事を確認しましょう
生理食塩水は、カリウム含有ゼロですが、ブドウ糖が体内に入り、インスリンがでます、インスリンが出ると血糖を下げるため細胞内にKも一緒に取り込まれます、その結果カリウムが低下します
時に、高Kという理由だけで、生食などブドウ糖が含有されていない点滴の際は注意が必要です
カリウムの目安
- 腎障害のある人:20mEq/d
- 普通の人:40mEq/d
- カリウム低めの人:60mEq/d + α
細胞内液(3号液)には、1Lで20mEq(20mEq/L)のKが含有されています
クロールによる選択
クロールはあまり、輸液を選択する上で考慮されていませんでした
しかし近年、高クロールによる弊害(アシドーシスや腎傷害など)が示されています
高Clの場合は、生理食塩水を避けたほうが良いのは、間違いないと思います
とはいえ、クロールを下げるための輸液というよりは、バランスをみて調整することの方が多いです
例えば、K補充が必要な場合は、塩化カリウム(KCL)ではなく、アスパラギン酸カリウムの使用など
他には、酸塩基平衡とも密接に関連しています
まとめ
- 細胞内液は、Naが少ないので医原性の低Na血症に注意
- 細胞内液は、Kが多いので高カリウム血症に注意
- 細胞内液は、血管の中にほとんど残らないので、バイタルサインの不安定な人には基本的に使用しない