Contents
入院中の発熱の原因 7つのD
- 偽痛風
- 深部静脈血栓症
- 薬剤
- デバイス
- 抗菌薬関連腸炎(クロストリディオイディスディフィシル感染症)
- 深部膿瘍
- 褥瘡
抗菌薬関連腸炎:Clostridioides difficile infection(CDI)
抗菌薬使用歴のある、患者さんの発熱では常に念頭に置く必要があります
個人的には、3-3で覚えています。3−3というのは、抗菌薬使用後3日〜3ヶ月の間は特にハイリスクということです。
そもそも、CDIとは何かというと、(特に)広域抗菌薬を使用することで、腸内環境のバランスが崩れて、善玉菌が抗菌薬で死滅し、悪玉菌の趨勢が強まる事と患者さんにはよく説明しています。
ということで、熱が出たら下痢のチェックをしましょう。
下痢の定義
一般的に、ローマ基準というものがよく使用されています。
ローマ基準も、改定されて、ROME-III基準が使用されていると思います。
その中では、1日3回以上の水様性の排便とされています。
よく、水溶性の排便が1回あったというだけですが、「下痢がでた」と言う患者さんがいますが ”医療者の下痢” と ”患者さんの下痢” の認識は異なるという事ですね。
CDIはナースが気づきやすい
例えば、犬に臭いを嗅がせてCDIの検証を行った研究がありますhttps://www.bmj.com/content/345/bmj.e7396.full.pdf+html
ナースはCDIの臭いに気づくことで、診断への手がかりになることも多いです
典型的には、緑色の粘液便で、酸臭がした場合に、抗菌薬使用歴がある場合は、CDIである確率が高まります
診断
一般的に、迅速検査を行います
迅速検査は「抗原」と「トキシン」が ”+” か ”ー” か、で判定します
トキシン陽性の場合は、通常ほとんどの場合、治療を行います
抗原のみ陽性の場合は、臨床症状に応じて、治療介入は判断されます
症状のないCDIを治療すべきか
症状がないということは、病気ではないということと、ほぼ同義になります
症状とは、下痢の有無です
他には、下痢に関連した、発熱・食欲低下・血液炎症データ上昇などです
いわゆる、敗血症の際にみる、意識・呼吸・血圧の変化がみられます
重症度評価
- 重症ではない:WBC ≦ 15000 AND Cr < 1.5 mg/dL
- 重症:白血球 >15000 OR Cr ≧ 1.5 mg/dL
- 劇症型:ショック、イレウス、トキシックメガコロン
白血球とクレアチニンを見ましょう!
臨床的には、呼吸数、毛細血管再充填時間、網状皮疹などを駆使して、血液データを参照する前にある程度判断は可能です
治療
治療には抗菌薬を使います
抗菌薬が原因なのに、抗菌薬をつかうという、なんとも変なプラクティスです
普通の抗菌薬を使い続けると、患者さんは亡くなります
可能な限り、原因となった抗菌薬は中止しますが、中止が困難な場合も多いです
きちんと診断して、治療しなければならない病気です
治療に用いる抗菌薬
- メトロニダゾール:500mg 1日4回 10日間 内服
- バンコマイシン:125mg 1日 4回 10日間 内服
- フィダキソマイシン:200mg 1日 2回 10日間 内服
基本的には、内服薬での治療が一般的です
再発例や難治例の場合は、異なるレジメンが用意されています
近年は、メトロニダゾールにつづき、バンコマイシンですら、耐性化してきているようですので、治療経過が思わしくなければ、フィダキソマイシンの使用を積極的に検討する余地はありそうです
注意すべき点
アルコールが無効です
流水と石鹸による手洗いが必要です
下痢のあるうちは、感染症伝播の可能性があります
一般的に、下痢の消失(有形便)後、48時間経過で、隔離解除となることが多いです
まとめ
- 発熱+下痢では積極的に疑いましょう
- 感染予防対策を行いましょう
- CDIに対する抗菌薬開始後は、改善しているか評価をしましょう
- 治療終了後も、再発の可能性がありますので注意しましょう