Contents
入院中の発熱の原因 7つのD
- 偽痛風
- 深部静脈血栓症
- 薬剤
- デバイス
- 抗菌薬関連腸炎(クロストリディオイディスディフィシル感染症)
- 深部膿瘍
- 褥瘡
発熱の原因:デバイス
- 末梢静脈ルート
- 中心静脈ライン
- 尿道カテーテル
- 胃チューブ
集中治療室では、気管挿管や動脈ラインなど様々
術後だと、ドレーン類もあります
CRBSI(カテーテル関連血流感染):末梢静脈ルート
末梢静脈は、入院する患者さんの多くに必要となります
採血と並んで、最も多く行われている医療処置の1つだと思います
血管内に直接異物が入っているということは、感染の原因になります
点滴をして元気になるというのは、まやかしで、むしろ感染症の原因になります
ある研究結果では、末梢静脈カテーテル関連血流感染は、0.18%(85063本の末梢静脈カテーテル)で発生していました (Clin Infect Dis. 2017 Oct 30;65(10):1757-1762. doi: 10.1093/cid/cix562.)
約0.2%の血流感染ということは、1000回の静脈カテーテルを使用した患者さんのうち、2人が末梢静脈カテーテルを使用したことで、血流感染が発生したということになります
おそらく、思っているよりも多い数値だと思われます
静脈炎の評価には、VIPスコアというものがあります
http://www.vipscore.net/wp-content/uploads/2014/04/VIPscore-Japanese.pdf
毎日の観察が重要ですので、発熱患者さんをみたら、デバイス関連感染症の1つとして、末梢静脈もきちんと評価しましょう
またカテーテル感染(CRBSI)は、イコール血流感染ですので、カテーテルの抜去のみならず血液培養を必ず採取する必要があります
ちなみに、2セット採取が標準です
CLABSI:中心静脈カテーテル関連血流感染
中心静脈カテーテルの場合は、血流感染のなかでも特別で、CLABSIと呼ばれます
普通の血流感染は、CRBSIでした、似て非なるものということです
いわゆる古典的な「カテ感染」の代表です
以前は、カテーテル抜去して、カテーテル先端培養を提出して終わり、でしたが血流感染、特にブドウ球菌が絡むような血流感染には抗菌薬治療が必要です
血流感染の診断は、とにかく血液培養2セット以上です
CLABSIの原因は、ブドウ球菌が多いですので、一般的に血液培養陰性化を確認後14日間の抗菌薬治療を行います
例えば、表皮ブドウ球菌などの弱毒菌でしたら、一般的に治療期間は短縮されます
留置時は、高度バリアプリコーションが必要です
マスク・ガウン・手袋(装着前は消毒や手洗い)・広い覆布
皮膚消毒は、1%以上のクロルヘキシジンアルコールが良いとされています
イソジンよりも、可能な限り好んで使うべきです
カテーテル関連血流感染(CAUTI)
「しーえーゆーてぃーあい」とか「かうち」とか呼ばれます
尿道カテーテル留置に伴う感染症のことです
大体、1日3%(〜7%)ずつリスクは上昇するとされます
ということは、10日で30%、30日で約100%にCAUTIは起きます
致死率、2.3%という報告もあります
医療関連感染全体の、約13%を占めます
入院患者さんの、約23.5%に起きるとされています
定期的な尿道カテーテルの入れ替えは、予防につながらないとされています
手術室など、清潔な環境下での留置は、CAUTIのリスクが減少するとされていますので、留置物全てに言えることですが、きれいに留置することが必要です
そもそも、尿路感染の起因菌は腸内細菌ですが、尿路感染症で一般的ではないブドウ球菌などの検出は医療者による汚染の可能性もあります
WHOは医療者の手洗いに5つの機会を推奨していますが、その中でも可能であれば、上部と下部のような形で、尿道カテーテルに触れる前は手指消毒を行った方が良いとされています
また、閉鎖式ですと汚染の機会を減らすことも重要ですので、不潔な環境下での頻繁のバッグの開け締めなどは極力減らしたほうが良いと思われます
当然ですが、感染症を起こすと抗菌薬のコストなど医療関連のコストが増加します
余分に治療が必要になるということは、入院期間の延長にもつがなります
一般的な尿道カテーテル留置の適応
- 厳密な尿量の管理が必要
- 仙骨部褥瘡などの影響で、失禁により創部汚染が生じるリスクが極めて高い
- 薬剤不応性の尿閉に伴う留置
などです、日常臨床では、不要な尿カテが留置されている可能性があります
経鼻胃管
経鼻胃管による感染症は、副鼻腔炎です
気管挿管が必要となる場合、経口挿管が物理的に選択できない場合や口腔内手術の場合は、経鼻挿管が行われます
しかし、副鼻腔炎の合併を起こしますので、推奨されておらず、上記のような理由がない限りは、経鼻での気管挿管が行われることはなくなりました
経鼻経由でのデバイスアプローチが困難でしたら、経口から留置するという方法もあります
例えば、経鼻胃管はN-Gチューブですが、経口胃管はO-Gチューブとなります
O-Gチューブは固定力に難がありますが、デバイス関連感染の事を考慮する場合は、積極的に選択すべき経路であると思います
そもそも、口から食べられれば不要ですので、口から食べられるような努力が必要です
まとめ
- 入院中の発熱患者をみたら、デバイスを全てチェックしよう
- 全てのデバイスは、毎日抜去できないか検討しよう
- 中心静脈カテーテル挿入時は、手技者の清潔面での不備がないか確認しましょう
- 血流感染の診断は、血液培養です(カテ先培養ではありません)