総合診療内科 診療科

入院中の発熱:深部静脈血栓症

入院中の発熱の原因 7つのD

  1. 偽痛風
  2. 深部静脈血栓症
  3. 薬剤
  4. デバイス
  5. 抗菌薬関連腸炎(クロストリディオイディスディフィシル感染症)
  6. 深部膿瘍
  7. 褥瘡

深部静脈血栓症

用語について

DVT:深部静脈血栓症

VTE:静脈血栓塞栓症

PE:肺塞栓症

DVTは下肢静脈の場合、VTEは肺塞栓を含む概念です

DVT + PE = VTEのようにイメージするとよいかもしれません。

症状

  • 通常、片側の下肢浮腫
  • 疼痛
  • 熱感

などが多いとされていますが、きちんと左右差を比較しなければ見逃すことの方が多いと思います。

また、通常生理的に、ひだり下肢の方が、みぎ下肢よりも太いとされています。

クリニカルパール

クリニカルパールとは、「格言」と日本語訳されることが多いです。

ローレンス・ティアニー・ジュニア先生という、とても有名な内科医がいらっしゃいます。その先生の著書である「ティアニー先生の診断入門」という本に記載してあったと思います。

「左下肢が太いのは普通かもしれないけど、右下肢が太いのは異常だ」

脳梗塞などで麻痺がある場合や、特殊なスポーツをしている場合など、例外もあります。

解剖学的にも、ひだりの総腸骨静脈は、みぎの総腸骨動脈を乗り越えますので、静脈灌流(流れ)が悪くなります。

その結果、ひだり下肢に血栓ができやすくなります。

検査前確率:modified well's score(修正ウェルズスコア)

  1. DVTの臨床症状(3) 
     [片足の浮腫など]
  2. 肺塞栓が他の診断の可能性より濃厚(3)
     [担当医の判断も大きいと思います]
  3. 心拍数>100/分(1.5)
     [脈を遅くするベータ遮断薬など服用には注意が必要です]
  4. 過去4週間以内の手術もしくは3日以上の長期臥床(1.5)
     [特に骨盤内や整形外科術後は注意]
  5. DVTもしくは肺塞栓の既往(1.5)
     [このあたりは、患者さんが、その病気の可能性を教えてくれます]
  6. 喀血(1)
     [喀血と血痰は異なります。hemoptytis(喀血)は比較的大量出血です]
  7. 悪性疾患(1)
     [いわゆる「がん」は血液を固まりやすくする方向に作用します]

( )は点数で、4点以上だと肺塞栓の可能性が上がるとされています。

つまり、検査(造影CT)前にどの程度の肺塞栓の可能性があるのかを、スコアリングして、肺塞栓の可能性の重み付けをします。

ざっくり「トイレ歩行もままならない人の呼吸困難や低酸素血症で、足を見たら、片足が腫れていて、脈を測ると頻脈だった」ような見た目(ゲシュタルト)です。

さらに、頸静脈怒張などの所見があれば、よりそれらしいです。

原因

ウィルヒョウの3徴

  • 過凝固
  • 血管内皮障害
  • 血液のうっ滞

古典的な概念かもしれませんが、このような患者さんには、血栓が出来やすいということです。

自ずと、集中治療室に入るような重症患者さんに多くなることがわかると思います。

通常、安静臥床や手術など原因がありますが、原因が不明な場合もあります。

特に若年者では、血液が固まりやすくなるような病気の可能性を念頭に検査を行います。

要因不明の静脈血栓塞栓症の代表的な疾患

抗リン脂質抗体症候群(APS)

プロテインC/S欠損症

アンチトロンビン欠損症

治療

  • ヘパリン
  • 直接経口凝固薬(DOAC)
  • ワーファリン

ヘパリンの治療目標は、APTTで1.5ー2倍に通常設定します。
だいたい30秒として、45−60秒程度になると思います。
ヘパリンの場合は、通常6時間毎にAPTTモニタリングが必要です。

DOACの場合は、腎機能障害などの禁忌がなければ使用しやすい薬剤です。

ワーファリンで治療を行う場合は、ヘパリンを先に開始し目標APTTに達してから、最低1ー2日程度は重ねて使用したほうが良いとされています。
ワーファリンの直接の開始は、開始直後は過凝固になるという噂があります。

一般的なヘパリンプロトコール

APTT値投与法次回のAPTT測定
初期投与80U/kgボーラス投与、18U/kg/hrで持続静注6時間後
APTT<35秒80U/kgボーラス投与、4U/kg/hrで持続静注6時間後
APTT 35−45秒40U/kgボーラス投与、2U/kg/hrで持続静注6時間後
APTT 46−70秒変更なし6時間後
APTT 71−90秒2U/kg/hrへ減量し、持続静注6時間後
APTT>90秒1時間持続静注中止、3U/kg/hrへ持続静注を減量6時間後

DVTによる発熱

DVTに限りませんが、血栓があれば発熱することが多いです。

術後ですと、(血液の)「吸収熱」と言われます。

外傷で骨折して、血腫形成後のよくわからない発熱など、よくあると思います。

ということで、熱をみたら足を見ましょう!

まとめ

  • 発熱の以外な原因に、DVTもある
  • DVTを見つけるためには、リスク評価と診察が重要
  • とにかく全身、特に足はすぐに見れるので、毎日見ましょう

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