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入院中の発熱:偽痛風(結晶誘発性関節炎)

男ナース
男ナース

入院中って、よく発熱するけどどんな原因があるか知ってる?

女性ナース
女性ナース

たしかに、発熱はよく遭遇するけど、原因とかあまり考えたこと無いかもしれないです。

入院中の発熱の原因 7つのD

  1. 偽痛風
  2. 深部静脈血栓症
  3. 薬剤
  4. デバイス
  5. 抗菌薬関連腸炎(クロストリディオイディスディフィシル感染症)
  6. 深部膿瘍
  7. 褥瘡

偽痛風(CPPD disease、Pseud gout)

原因

入院に伴う安静がリスク因子と言われています。
脳梗塞などで麻痺のある方は、麻痺側に出ることが多いです。
高齢者に多いです。
繰り返す場合は、5Hの検索を行います。

5H

  1. 副甲状腺機能亢進症(Hyperparathyroidism)
  2. 低リン血症(Hypophosphatemia)
  3. 低マグネシウム血症(Hypomagnesemia)
  4. 高カルシウム血症(Hypercarcemia)
  5. 鉄過剰症(Hyper Fe)

症状

特に高齢者が入院中に、突然発熱をきたします。
診察すると、どちらかの膝に炎症を伴っています。
高齢者に多いです。
膝以外の関節でも起こります。繰り返す場合は、原因がないかを調べます。
椎間関節にも起こるとされていますが、有用な診断方法がありません。
環軸関節(頚椎1/2)に起こる場合は、Crowend dens syndromeと言われます。頸の回旋が極端に制限されます。
もう少し若い方(40歳前後)ですと、石灰沈着性頚長筋腱炎という病気もあります。

診断

通常は単関節(1つの関節)炎です。
2関節以上の、多関節炎を来す場合もあります。

関節炎は、炎症の4徴(発赤・腫脹・疼痛・熱感)を伴います。
熱感は、手背を当てて観察した方が、熱を感じやすいとされています。

身体所見は、関節液が貯留しますので、バルジサインといって、関節液を1箇所に集めて、膝蓋骨の動揺をみる、膝蓋跳動などを観察します。

レントゲンでは、線状石灰化がみられます。
レントゲンのスクリーニングでは、5枚(両股関節・両手・両膝)が推奨されてるようですが、臨床的にはレントゲンはあくまでも補助診断です。

やはり、関節穿刺がメインの診断になるとおもわれます。
関節液に、ピロリン酸カルシウムの白血球貪食像を認めれば、診断になります。

注意すべきは、化膿性関節炎を見逃さないということです。
検査に提出した細胞数が5万を超えていれば、化膿性関節炎の可能性が高くなるとされています。(ごまんといると憶えます)。

ピロリン酸カルシウムの検出には、偏光顕微鏡とされていますが、臨床現場ではグラム染色でもよく見えます。このへんは好みがあるように思います。

https://www.youtube.com/watch?v=RMp6HOnS7Q0
バルジサイン

治療

非ステロイド性消炎鎮痛剤

NSAIDs(エヌセイドとかエヌセイズと呼んでいます)が最も使用されます。
ただし、高齢者の場合は、心不全によるナトリウム貯留や、出血傾向への寄与、腎機能障害、上部消化管出血など、副作用がたくさんあるので使用しづらいです。

経験的には、NSAIDs開始後、1週間程度で症状は改善することが多いです。

また、NSAIDsが使用で着ない場合は、根本治療にはなりませんが、仕方なくアセトアミノフェンという比較的副作用の少ない薬剤で、痛みのコントロールを行うこともあります。

NSAIDsにも種類がいくつかありますが、ロキソプロフェンという薬剤が最も使用されます。

その次に、セレコキシブが臨床的には多いです。
セレコキシブはCOx2という、部分を選択的に阻害することで、胃潰瘍の合併症が減るとされています。ただし、胃潰瘍が起こらないというわけではないので、注意が必要です。
また、腎臓には多少優しいですが、腎機能を悪化させますので同じく注意が必要です。

量は高齢者ですと、ロキソプロフェン60mg2錠分2 〜 3錠分3が多いです

セレコキシブですと、最初多めに使うこともありますが、100mg2錠分2が多いと思います。

いずれにせよ、NSAIDsという薬は、副作用が多いので特に高齢者に使用する場合には、注意が必要です。しかし、副作用ばかりを恐れて効果が得られなければ意味がないので、使うときは効果が得られる量を使って、評価して、副作用はモニタリングするという姿勢が必要だと思います。

コルヒチン

あまり使う機会の無い薬剤だと思います。
以前は、家族性地中海熱という不明熱(不明炎症)で有名な薬剤でした。


最近は、COLCOT試験(https://www.nejm.jp/abstract/vol381.p2497)で心筋梗塞後の虚血性心疾患のイベントを減らす効果も得られており、今後使用する機会が増えてくるかもしれません。

副作用は、下痢などの消化器症状があります。臨床的には、よく経験しますが、COLCOT研究の結果では、それほどでもなかったとされています。

予防で使う量は、1日0.5mgなので、COLCOT研究と同じですが、急性期の場合は、初日に1.8mgを超えない量で、2日目からは0.6mgを1日2回と成書(Up to data)には記載してあります。

個人的には、あまり使用経験が無い薬剤なのですが、急性期でも1日2錠位で良さそうですね。

ステロイド

ステロイドはとても有名で、魔法の薬(Magic bullet)のような扱いですが、実はその根拠が乏しいのに使用されていたりすることもある薬剤の代表です。

トリアムシロノン40mg/mlという関節内に注射するステロイドを使用することもあります。商品名だとケナコルト®というやつです。
大きな関節だと、関節穿刺を行い、関節液を吸引した後、トリアムシロノン1ml+1%リドカイン1−2mlを関節内に注射することもよくあります。

ステロイド使用の場合は、化膿性関節炎のリスクを増加させる可能性もあるので、感染症の可能性が高い場合は使用しない方が良さそうです。

全身性に使用する場合は、プレドニゾロン30−50mgを1日1−2回に分けて投与することが多いようです。使用する場合の期間は、7−14日程度までのようです。糖尿病などの基礎疾患を持つ場合には、注意が必要です。

偽痛風のまとめ

  • 入院中の発熱の際には、全身の関節をくまなくチェック
  • 穿刺できる大関節であれば、穿刺吸引を行い診断
  • 治療には副作用のモニタリングと効果判定を行う
  • 繰り返す場合は、原因がないかチェックする
  • 化膿性関節炎に注意

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