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結論
- よくわからない腹痛では、ACNESさらには、LACNESも考慮
- 身体所見と病歴から、疑い治療法は同じく局所麻酔
ACNES:前皮神経絞扼症候群
ACNESは近年、少なくとも総合診療系の領域ではとても有名な病気になりました。
ACNESとは、前皮神経絞扼症候群と邦語訳されます。
その名の通り、前皮神経が絞扼されることで起こる腹痛の事です。
解剖学的に考える
腹痛の原因は、とにかく多岐に渡ります。
特に女性の場合は、更に鑑別すべき病気が増えます。
ACNESの場合は、皮神経の問題ですので、表皮から筋肉までの痛みになります。
身体所見上は、圧痛を伴いますが、比較的限局的な痛みになります。
神経の問題ですので、局所的な感覚障害を伴うこともあります。
それが、比較的長期間継続しますので、患者さんとしては困る病気の1つになります。
Carnett徴候
病院では、カーネットサイン(Carnett徴候)という検査を行います。
これは、腹筋をするような体勢をとってもらい、その時に腹痛があるかどうかを調べる検査です。
腹壁の問題なら、圧痛を生じますし、腹腔の問題なら圧痛を生じません。
ACNESの場合は、大別すると腹壁の問題になります。
そのため、Carnett徴候陽性という所見(痛みが生じる)になります。
LACNES:外側皮神経絞扼症候群
ACNESの親戚の様な病気で、LACNESというものがあります。
2021年2月21日時点で、PubMed検索を "lateral cutaneous nerve entrapment syndrome" でLimitをかけずに行いました。
すると、Hitしたのはたったの3件でした。
それだけ、まだメジャーではない概念であるようです。
日本語では、2件Hitしました。
1件はJ-GLOBALのメンテナンス中で見れませんでした。
もう1件は、市立奈良病院総合診療科、森川先生のブログがHitしました。
森川先生のブログ
このブログでも、今回PubMedでHitした論文が引用されていました。
LACNES診断基準
この論文では、4つのクライテリアより診断基準を設けていました。
- 1 3ヶ月以上の局所的な側腹部痛
- 2 側面を覆う局所圧痛領域を伴い中腋窩線上に最大の痛みを伴うの指先で示せるほどの局所痛
- 3 デルマトロームに完全に一致しない局所の皮膚感覚の低下
- 4 ピンチテスト陽性(疼痛部位をつまみ反対側と比較して痛みが誘発される)
LACNESに対する診断的治療
1%リドカイン5−10mlを局所に注射
21G 40mmの針を用いて、外斜筋、鋸状筋膜下1−2cmに行われました
結果
30名(女性21人、年齢中央値52歳;13−78歳)がLACNESと診断されました。
1回の注射後、疼痛はNRSで6.9から2.4(P<0.001)と効果を示しました。 効果率は83%の即効性を示しました。 繰り返す注射は、16例で有効でした。 効果の乏しい14例は、5例で手術や他の治療を受けました。
結論
慢性側腹痛のある患者では、LACNESを考慮すべき。
注射療法の派半数以上で有用。
私見
ACNESは知ってさえいれば、診断的に治療をすることが可能です。
ACNESでも、治療効果の乏しい方は一定数いるようですが、治療効果を示せば患者さんのQOLは著しく向上します。
LACNESも同様に、ACNESと部位が違うからというだけで、外側皮神経の関与も考慮すべきです。
治療に関しては、注射部位が肺の上ですので、治療の際は気胸には注意が必要な気がします。
30例中5例が手術療法を選択されたということは、それだけ患者さんのQOLは著しく低下しているという認識が必要だと思います。