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厄介な耐性菌:AmpC(アンプシー)

結論

  • AmpCには、基本的には第4世代セフェム(セフェピム)が1st choice
  • ただし、第3世代でも感受性があり短期間の治療であれば、使用可能
  • 基本的に、ペニシリン系、第1・2世代セフェムは良くない
  • βラクタマーゼ阻害薬も、AmpC誘導を促し、阻害はされない

はじめに

臨床で、AmpCの話が出ましたので復習してみました。

参考文献は、抗菌薬の考え方、使い方 Ver.4です。

著者は岩田健太郎先生になります。

AmpCとは

一言で言えば、耐性菌です。

さらに、一言追加すると結婚詐欺と称されます。

結婚詐欺と称される所以は、最初は第3世代セフェムで効いていたのが、突然効かなくなる現象のためです。

つまり、最初は中の良い夫婦生活でも、突然終わりが来る可能性があることを例えています。

AmpCになりやすい菌は、院内感染を来しやすい菌です。

いわゆるスペース(SPACE)と呼ばれるものが有名ですが、そのうちのSCEが問題になります。

SPACE

  • Serratia
  • Pseudomonas
  • Acinetobacter
  • Citrobacter
  • Enterobacter

耐性菌の何が問題か

まず、死亡率が増加するとされています。

抗菌薬の選択肢が大幅に狭まります

基本的に、内服薬で戦うことは、一部を除いて困難です。

そして、耐性菌に感染する方は、元々状態が悪い人が多いです。

使える抗菌薬が狭いということは、限られた抗菌薬ですら耐性を獲得してしまう可能性があるということです。

使える抗菌薬がなくなれば、基本的には感染症と戦う術の多くをなくしたようなものです。

AmpCの特徴

ベータラムタム阻害薬を除く、第3世代セフェム以降の抗菌薬に感受性を示します。

当初は効いていた第3世代セフェム系も途中から耐性を示す可能性があります。

ESBL(基質拡張型βラクタム産生菌)の場合は、セフメタゾールというセファマイシン系の抗菌薬に感受性があります。

腸内細菌科は、AmpCは普段少量しか作っていません。

ベータラクタムもあまり壊さないとされています。

第3世代セフェムでの治療も可能ですが、過剰産生されると問題になります。

つまり、臨床的に問題になるのは、AmpC産生菌というより、AmpC過剰産生菌が問題になります。

抗菌薬を長い間使っていると、分解能力が高まり、臨床的にも耐性を示すようになりますので、結婚詐欺とも称されています。

AmpCで特に問題になる細菌(AmpCを持っている可能性の高い細菌)

  • Enterobacter
  • Citrobacter
  • Serratia
  • Morganella

殆どの腸内細菌科(Klebisiella、Proteus millabilis以外)の染色体上にもampC遺伝子があり、大量にAmpCを作ることがあります。

大腸菌も染色体上にAmpCを持っているが、発現することは殆どないようです。

Ampcと抗菌薬

抗菌薬により、AmpC産生誘導の仕方は異なります。

ペニシリン、アンピシリン、セファゾリンよく誘導されます。

つまり、治療に使えないということです。

セファマイシンやイミペネムも誘導しやすいとされています。

セファマイシンは基本的に効かないという事は、ESBLとの臨床的におおきな違いになります。

セフォタキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフェピム、アズトレオナム、メロペネム、βラクタマーゼ阻害薬あまり誘導しません

つまり、治療に使える可能性がある、ということになります。

AmpCが誘導され、大量産生されてしまうと、各抗菌薬に対するMICが上がり、薬剤耐性を示すようになります。

繰り返しますが、最初は効いていても、効かなくなります。

AmpCを誘導する抗菌薬と、AmpC誘導後に使う治療用の抗菌薬は分けて考える

ペニシリンは感受性ありでも、よく誘導されるので、既に耐性を示していることがあります

つまり、使えないということです。

イミペネムもAmpCをよく誘導します過剰産生菌にも効果を示します

そのため、AmpC自体は大きな問題ですが、過剰産生菌であっても効果を示します

第3世代セフェム(セフォタキシム、セフトリアキソンなど)は、AmpCをあまり誘導しません

しかし、ひとたび過剰産生されると、効かなくなります。

第4世代のセフェピムは、誘導されにくく、かつ過剰産生菌にも効果を示すので、事実上の第一選択薬になります。

誘導と臨床効果は分けて考える

極論すると、第3世代セフェムを使う場合だけ、AmpCは臨床的に問題となります。

βラクタマーゼ阻害薬も、AmpCの誘導を促しますが、阻害効果はありません。

この点も、セフメタゾールと同じく、ESBLとは異なる点のようです。

つまり、βラクタマーゼ阻害薬はAmpC過剰産生菌の治療には適さない、ということになります。

第3世代セフェムは、比較的AmpCの誘導はされませんでした。

AmpCが懸念される場合の抗菌薬の使い方

あえて第3世代セフェムで治療することの利点は、広域抗菌薬を温存できるということです。

そもそも、第3世代セフェムでも広域ではありますが、他に戦える抗菌薬を温存しておく事が可能になります。

きちんと患者さんの状態を評価できるのであれば、感受性に応じて第3世代セフェムでの治療を行うというのもありです。

ただし、全身状態が比較的安定しているという前提ではあります。

まとめ

  • AmpCへの抗菌薬は、基本的にはセフェピム以上
  • ただし、感受性がありかつ短期間かつ全身状態が落ち着いていれば、第3世代での治療も可能
  • 懸念される細菌が検出された場合は、基本的に使えない抗菌薬を使用していないか確認する

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