Contents
4大感染症
- 肺炎
- 尿路感染症
- 肝胆道系感染症
- 皮膚軟部組織感染症
肺炎の種類
- 市中肺炎
- 院内肺炎
- 医療・介護関連肺炎
肺炎の種類は、ざっくり2つで「市中」か「院内」になります
その中間的な位置づけで、医療介護関連肺炎という概念もありますが、まずは院内か院外かを意識することが重要です
市中肺炎とは、その名の通り街中で起きる肺炎です
院内肺炎は、病院の中で獲得した肺炎です、代表的なものは人工呼吸器関連肺炎です
なぜ、院内肺炎と院外肺炎に分けるのか
抗菌薬で治療を行う際に目的とする細菌が異なるからです
一般的に市中肺炎は、たちのよい細菌といえます
つまり、普通の抗菌薬が効くといえます
逆に院内肺炎は、たちが悪く厄介な細菌を相手にしなければなりません
けれども、院内の場合はある程度相手にする細菌は限られていますので、そのへんは抗菌薬の選択がしやすいとも言えるかもしれません
医療介護関連肺炎の場合は、院内肺炎のようなリスクは保持していますが、院内肺炎ほど厄介な細菌の可能性は少ないので、全身状態と判断して適切と思われる抗菌薬を選択します
肺炎はどのように診断されるか
臨床症状が重要です
肺炎の患者さんを想起してもらえるとわかるかもしれません
呼吸が早くて、時に胸痛を伴い、喀痰も多く、頻呼吸の割に酸素飽和度が低い、さらに胸部X線を撮影すると肺に影(浸潤影)がある、といった感じです
肺炎の重症度を評価する
肺炎と一言にいっても、様々ですので重症度の評価が必要です
有名なものでは、CURB-65や日本ではADROPといったスコアが有名です
CURB-65
C:意識
U:脱水(BUN≥21)
R:呼吸回数(≥30回/分)
B:血圧(収縮期<90mmHg、拡張期<60mmHg)
65:年齢(≥65)
各スコアで該当したものを足していき、以下のようにマネジメントの参考にします
- 0−1点:外来
- 2点:入院
- 3点:ICU入室
※ ICU入室など、各施設の基準によりますので、入院の判断含め参考程度に使用します
ADROP
A:年齢(男性>70歳、女性>75歳)
D:脱水(BUN ≥ 21または、脱水あり)
R:呼吸(SPO2 ≤ 90%)
O:意識(意識変容あり)
P:血圧(収縮期 ≤ 90mmHg)
0点:軽症
1−2点:中等症
3点:重症
4点以上:超重症(ショックの合併があれば、1項目でも超重症)
臓器特異的所見と全身所見
臓器特異的所見
肺炎は肺が障害(傷害)される病気ですので、肺に関連した症状を評価します
- 呼吸回数
- 酸素飽和度などでの酸素化
- 咳や喀痰の程度
- 呼吸音
- 胸痛
全身的所見
- 発熱
- 食欲
- 脱水
- 意識状態
- 血液データ(白血球・CRP・BUN/Crなど)
ここであくまでも重要なのは、CRPや熱の改善ではなく、呼吸数や咳・痰の減少など、肺炎がよくなっているかどうかを評価することが重要です
たとえば、CRPなどは他の感染症でも増加しますし、肺炎がよくなっているかどうかを血液データに聞いても、明確な答えは提示してくれません
答えを提示してくれるのは、患者さんなので、ベッドサイドに足を運びましょう
抗菌薬投与前に行うこと
血液培養2セット採取は不要とする意見もありますが、入院するのであれば採取して損はないと考えます
例えば、尿路感染が原因で具合が悪くて、嘔吐の結果肺炎になった、などです
また、肺炎の原因で最も多い肺炎球菌であれば、菌血症の有無は重要です
※ ただし、2019年のATS/IDSAのガイドラインでは、血液培養は不要と記載があります
胸部CT検査も、肺炎の診断には基本的に不要です
けれども、近年は撮影されることが多い様に思います(この辺は臨床医の判断ですね)
痰培養は提出しましょう
喀痰のグラム染色も非常に有用な所見なのですが、ガイドラインでは推奨されていません
グラム染色を実施できる環境であれば、個人的には積極的に行うべきかと思っています
市中肺炎の原因微生物6つ
- 肺炎球菌
- モラキセラ
- インフルエンザ菌
- マイコプラズマ
- クラミドフィラ
- レジオネラ
上から3種類は定形肺炎
下3種類は、非定型肺炎です
市中肺炎での抗菌薬
実は、臨床的によく使われるセフトリアキソンという抗菌薬で、定形肺炎には全て効いてしまいます
非定型肺炎の可能性があれば、アジスロマイシンなどの少し特殊な抗菌薬を使用します
つまり、この2種類の抗菌薬を使用すれば、市中肺炎のほとんどは微生物学的には治ってしまいます
もちろん肺炎の原因微生物には効いても、輸液や栄養などの支持療法がおろそかになるようですと治療はうまくいきません
抗菌薬開始後の治療効果判定
抗菌薬の治療効果判定は、72時間後です
発熱などは、肺炎ですと通常翌日には改善傾向を示すことが多い様に思います
先に書きました、臓器特異的所見が改善しているかを見ましょう!
「CRPが改善しました」も悪くはありませんが、「呼吸数が24回から18回に減少し、痰や咳も改善し、呼吸副雑音も改善しています」の方がスマートですね
まとめ
- 市中肺炎の治療自体は、それほど悩むことは少ない(と思う)
- 抗菌薬の治療効果判定は、臓器特的所見と全身所見で評価しましょう
- 大事なのは、CRPの減少ではなく、呼吸数の減少です