診療看護師(NP) 診療科 集中治療科

深頸部感染症

はじめに

高齢者や糖尿病では,複雑な感染症となる可能性を考慮する.

深頸部感染症の致死率は,7-40%とされている.

リスク因子として,駐車薬物の使用(Injection drug use: IDU),好中球減少,外因性ステロイド治療などがある.

頭頚部の先天異常やがん合併もあり得るが,稀である.

外傷症例での気管挿管がが原因とされるケースも報告がある.

 

画像検査

造影CTがよく行われる検査です.

膿瘍部分は,Low densityとして周囲が造影剤でエンハンスされるような画像所見をとります.

注意すべきは,1つは先に書いた膿瘍の有無と大きさと場所です.

膿瘍が大きくなると,頸部の場合は狭いので気道を圧迫する可能性があります.

拡大すると,頸部にとどまらず降下性縦隔炎をきたすケースもあります.

 

 

膿瘍の治療

大きく,外科的ドレナージ(デブリードメント)と穿刺吸引ドレナージがあります.

穿刺吸引ドレナージは,侵襲度が比較的低いため,施行可能な場合は実施されます.

ドレナージ効果としては,1つは感染源のコントロールがあります.

もう一つは,狭い頸部に膿瘍があることで気道(など)を圧迫する可能性を減らすためです.

もう1つは付随して,本人の自覚症状(呼吸困難,嚥下困難など)の消失があります.

いずれにしても,膿瘍全般に言えることですが,悠長に抗菌薬のみで治療を行うことは現実的ではありません.

 

5 killer's sore throat

5つの生命に関わる咽頭痛が有名です.

  1. 扁桃周囲膿瘍
  2. 咽後膿瘍
  3. Lemier syndrome
  4. Ludwig angina
  5. 急性喉頭蓋炎

これらは,咽頭痛の際には常に意識することが必要になります,

開口障害や嚥下障害は必ず確認したほうが良いでしょう.

これらがあれば,Red flagとして対応した方が良いでしょう.

患者さんは,咽頭痛が辛いので比較的ぐったりしています.

医療者からみても,気道緊急性が高いケースの場合は「横になれない」というケースが存在します.

この場合は,横にして麻酔薬を導入して,気管挿管なんて悠長なことは言っていられない場合と想定されます.

つまり,普段通りに気管挿管を行う場合は,手技の最中に気道緊急となる可能性が常に考慮されます.

大事なのは,バックアッププランと人を集めるということです.

少しでも待てる場合は,刺激しないように安静に待っていただき,多数の診療科で方針と起こった後の対応を協議します.

例えば,座位のまま気管挿管をファイバー下に試みるという方針になったとします.

座位でのファイバー挿管ができなかった場合に,次はどうするのかを考えて,準備しておくことが必要です.

通常は輪状甲状間膜切開が行われるかと思います.

ひとまずの気道が確保できれば,気管切開や気管挿管が可能であれば,速やかに人工気道のアプローチ部位を変更します.

 

病原微生物

  • 緑色連鎖球菌
  • その他の連鎖球菌
  • 黄色ブドウ球菌(MRSA含む)
  • Prevotella
  • Fusobacterium
  • Bacteroides
  • Porphyromonas

原因微生物として稀なもの

  • Moraxella
  • Haemophilus
  • Pseudomonas
  • Actinomyces

抗菌薬治療

免疫不全なし

  • penicillin G 300万単位 q4hr + metronidazole 500mg q6hr
  • ampicillin-sulbactam 3g q6hr
  • clindamycin 600mg q8hr + moxifloxacin1g q12hr

免疫不全あり

  • meropenem 2g q8hr + vancomycin 1g q12hr
  • piperacillin-tazobactam 4.5g q6hr + vancomycin 1g q12hr

 

これらは,あくまでも例に過ぎません.

臨床的によく使われるものはampicillin-sulbactam(A/S)が最も多いと思います.

A/Sの場合は感受性にもよりますが,先に上げた一般的な病原微生物をカバーできます.

境域化という観点からは,penicillin G(PCG)が良いのですが,4時間毎の点滴はなかなか大変です.

そのため,臨床では8時間毎に製剤を新しくして,24時間持続投与が行われることもあります.

免疫不全症例に対しては,耐性菌を想定したレジメンが挙げられています.

ただ,ショック状態など抗菌薬を外したら後がないケースでもこれらの広域抗菌薬は使用されます.

当たり前の話ですが,meropenem(MEPM)や piperacillin-tazobactamの場合はカバー可能な微生物は概ね同様です.

耐性菌に対する安定性が,MEPMにはあります.

ただ,一般的に最強の抗菌薬とされるMEPMでもカバーできない細菌があります.

MRSAや腸球菌はその代表のため,Vancomycinを併用することで想定される細菌をほとんどカバーできることになります.

逆に言うと,何も考えずに使うと非常に危険性の高い抗菌薬の組み合わせといえます.

 

頸動脈仮性動脈瘤

ほぼ全ての神経部間隙感染症の合併症で起こる可能性があります.

前触れ出血として,鼻・目・耳から出血をきたすことがあります.

当然大出血になると,命に直結します.

このような合併症があることを念頭に,微細な出血でも注意が必要といえます.

Lemier syndromeの場合は,抗凝固薬についての知見は明らかではなく,仮に使用する場合は出血を助長する可能性もあり注意が必要と言えます.

そもそも,Lemier syndromeの場合は治療は抗菌薬がメイン(まれに結紮)になりますので,抗凝固療法に関してはオプション程度の認識で良いのかもしれません.

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