鑑別診断シリーズとは
Medicinaという、総合診療系の雑誌があります。
毎月発刊されており、その内容はとてもシンプルですが、臨床的にすぐ使える知識が沢山あります。
数ある、医療系雑誌の中でも導入の敷居が低く、かつ内容も充実しており、おすすめの雑誌といえます。
ブログやメールなど、すぐにほしい情報の場合は、とにかくシンプルであることが必要です。
その様な観点からも、読み手を意識した書籍作りをされているように感じています。
そのなかで、シリーズものがいくつかあります。
今回は、読んでいてとても感動したものを紹介します。
著者:長野広之先生
これを書かれたのは、長野広之先生という方です。
総合診療をやっている方で、知らない人はいないと思われる、丸太町病院での勤務を経て、現在は大学院で医療経済学を履修されているようです。
書籍を読んでいて、おもうのは「やばい・・」と思うかどうかです。
勉強になるな、というよりは、読んでいてとてもかなわないな、と白旗を挙げるようなイメージです。
そのくらい、この著者のシリーズはヤバさを感じます。
そもそも、やばいというよくわからない表現を用いることは、ボキャブラリーの低下を示すものとも言えます。
とはいえ、とにかくやばいと思えるほど、その内容は秀逸なものです。
ちなみに、長野先生はブログ「今日何読もう〜病院総合医の論文ブログ〜」を書かれています。
シリーズ①
このシリーズは、⑭まで確認できています。
⑭の時点で、これで終わりとかも書かれていないので、多分まだ続くものと思われます。
とても楽しみです!
シリーズ①では、以下の3つが書かれています。
- 「CRP上昇に乏しい発熱」
- 「血圧低下のない乳酸アシドーシス」
- 「問診や診察、通常検査でわかりにくい発熱」
CRP上昇に乏しい発熱
CRPはカンファレンスでは、「地雷」とも言えるキーワードです。
総合診療系のカンファレンスの場合、CRPは診断には寄与しない検査です。
検査何をしますか?という問いに対して「CRP」と答えると、怒られるという事が定番です。
特に初期研修の先生などは、この怒られる(厳密に言えば叱られる)ことで、次怒られないようにするにはどうするか、という観点からも生きる術を身に着けていくように思います。
総合診療ではよくあるケース
わたしも総合診療で勤務していますので、CRPは使わないのではなく、上手に使う事が必要だと思います。
診断という観点からは、CRPだけで診断にはたどり着きませんが、ヒントにはなりえます。
とくに、発熱があるのにCRPが陰性の場合です。
CRPはざっくりですが、炎症があがるとCRPも上がります。
通称「炎症反応」と言われています。
とはいえ、CRP上昇の原因は沢山ありますので、「炎症反応」と一括りにされるのもどうかと思います。
CRP陰性の発熱
- 髄膜炎(1次性)
- 漿膜炎のない全身性エリテマトーデス(SLE)
- 薬剤熱(上がることもある)
- 詐熱
- 熱射病
- 無汗症
- 副腎不全
- 頭蓋内疾患
ほかにも
- 血圧低下のない乳酸アシドーシス
- 問診や診察、通常検査でフォーカスがわかりにくい発熱
これらに関しても、わかりやすく書かれています。
通常の書籍は、冒頭はわかりやすいものから書かれて、徐々に難しくなっていきます。
看護師のわたしでも、内容自体はまだついていけます。
シリーズも進むごとに、マニアックなものが出てきます。
マニアックとはいえ、とてもわかり易く書かれているところが、またよいのです。
まとめ
- Medicinaの鑑別診断シリーズ①について、少しだけ解説しました
- 「CRP上昇に乏しい発熱」「血圧低下のない乳酸アシドーシス」「問診や診察、通常検査でわかりにくい発熱」はよくあるものですので、いつでもこの書籍を参照できるようにしておくことをおすすめします。