診療看護師(NP) 診療科 集中治療科

【診療看護師新入職者向け】HCUでの戦略の1つ

結論

病棟とHCUの違いは時間の流れにあります.

HCUの利点は動かすことであり,カリウム補正や利尿剤の強化などギリギリを攻めることができる.

そのためには、超音波やモニターなど各種モダリティを評価して判断することが必要です.

同僚である看護師には,敬意を持って対応しましょう.

 

 

はじめに

HCUではICUに次いで、重症な患者さんが入室しています.

病棟との最も大きな違いは,看護単位にあります.

病棟の場合は7対1ですが、HCUの場合は4対1など、1人の患者さんに関わる看護師の数が大きく変わってきます.

すなわち、HCUにおける患者さんの変化は、看護師に依存しているといえます.

特にオープンICUと呼ばれる集中治療室では、いわゆる主治医が治療における主導権を握っています.

そのため、特にオープンICUの形態を持つ病院の場合は,主治医の技量は同じであるため看護師の数こそが最も大きな違いとなります.

それは、すなわち頻繁な評価が行えると言うことになります.

 

頻繁な評価とは

医療界では、頻回と言う言葉がよく使用されています.

ところが頻回と言う言葉には具体性があまりありません.

例えばある人は30分に5回でも頻回と思うかもしれません。が、ある人では2時間で5回でも頻回と思うかもしれません.

 

バイタルサイン測定の頻度

バイタル測定は,当院の場合6検がデフォルトです.

6検とは,4時間毎に測定する事で,1日6回測定ということになります.

「4すと」と表現される方もいますが,一般的では無いと思います.

まあ,齟齬がなく通じればよいのですが.

 

どのような指標をもとにバイタル測定の代行指示を出すか

診療看護師の場合は,バイタルサイン測定間隔を医師代行指示として入力を行います.

当然医師の指示なのですが,自分たちでもきちんと考える必要があります.

先に書いたように,当院では6検がデフォルトです.

当然ですが,HCUの場合はAライン,心電図,SPO2,呼吸などのモニタリングは「持続的に」行われています.

しかし,指示が6検の場合だと夜中に患者さんを起こして,血圧や体温を測定しています.

Aラインが入っていたとしても,(多くの場合)行われます.

こちら側としては,起こしてまで測定するほどのものではない.と思っていたとしても「指示」なのでそのように遂行され(ることが多い)ます.

 

バイタルサインの測定間隔

そもそも3検と6検では何が違うのでしょうか.

バイタルサイン測定に関しては,大した違いはないです.

体温に関しても,通常子どもの発熱と同じように異変があればその都度測定されるはずです.

ところが,指示がないと測定されない場合もあります.

そのため,自分の勤務の際はベッドサイドに足繁く通うことが必要になります.

HCUの場合は患者さんとの距離が(病棟と比較して)近いのは利点です.

患者さんをきちんとアセスメント(診察)するということがとても重要なのです.

ただバイタルサインは,評価者間での違いがほとんど出ません.

20年目のベテラン看護師でも,1年目の新人看護師でも血圧を測定すると,多くの場合は同じように数値として出ます.

ただしベテラン看護師は,いろんな術を持っているのでオシロメトリック法の利点や欠点,カフの長さが血圧に与える影響などを知っています.

そのため,きちんとした値を出すのは現代で使用されているオシロメトリック法での血圧測定でも,差が出る可能性はあります.

ちなみに以前は水銀のコロトコフ音を拾って血圧を測定していたので,血圧の値が異なるということはありました.

ということで,安心を買うためにバイタルサインの測定間隔を調整しているという意味合いの方が強いと思っています.

 

6検から3検に下げるタイミング

とくに指標は決まっていません.

いらないと判断すれば,3検に下げることもあります.

先に書いたように,持続モニタリングが行われているのでバイタルサインという観点からは,それほど重要ではないかもしれません.

体液バランスの管理を行っている患者さんの場合は,6検にしていることが多いはずです.

食事摂取をすると,体液バランスの詳細なイン・アウトがつかめなくなりますので,そのタイミングで3検に落とすというのも良いと思います.

ちなみに,わたしが以前勤務していた施設では,バイタルサイン測定は1時間か長くても2時間毎に行っていました.

すなわち24検か12検ということになりますね.

集中治療室では,このような測定間隔が一般的だとは思っていますが,施設の方針に従っていただければよいかと思います.

 

HCUでの例えば、カリウム補正

病棟の場合は、例えば週に2回の採血の場合、月曜日に採血の結果が出たとします.

その結果、カリウムが低いと言うことに気づかされたとします.

カリウムが低いと様々な要因があり、時に不整脈の原因となりえます.

すなわち、低カリウム血症は、急性期において重要な立ち位置を占めています.

週2回採血の場合は,月・木採血だとします.

その場合,月曜日からカリウム補充を開始して木曜日の採血で目標範囲に到達していることが必要になります.

そのため,色々と考える必要が出てきます.

HCUの場合は,カリウムを入れてから考えるくらいでも間に合います.

例えば,血性カリウムが3.0だったので,カリウム20メックを中心静脈より補正したとします.

Aラインが入っている場合は,補正が終わってから自分で血液ガス分析で評価を行えばよいだけです.

それで血性カリウムが3.2だった場合は,さらに20メック追加します.

また,血液ガス分析で評価します.

このようなことができるのがHCUの利点です.

当然低カリウムの原因は考えることが必要になります.

アルカローシスなどのシフトの場合は,アルカローシスが補正されるにつれて高カリウムの懸念も生じます.

だからこそ,電解質を測定する際には血液ガス分析も同時に評価を行っているということになります.

ちなみにアルカローシスの場合は,血性Na-Clの値が開くことになります.

通常は36程度ですが,これが40を超えるような値になるとアルカローシスがあるんじゃないかな,と考えることができます.

 

HCUでの例えば利尿剤

これも,ロジックはカリウム補正と同じです.

患者さんが体液貯留があり,酸素が必要な非代償化の状態だとします.

このような場合は利尿剤を使用して,体液量の減少を行います.

Volume reductionとか言ったりします.

すなわち,血行動態力学的なうっ血(Hemodynamic congestion)がある場合には体の中,特に血管内の水の量を減らすことが必要です.

では,どこまで体の中の水を減らすべきでしょうか?

答えは,代償化まで水を引くということになります.

一般的にはフロセミドで利尿を行いますが,利尿忍容性がある場合は引けるだけ引くことになります.

これを一般床のように1週間かけて水を引こう,ということには通常なりません.

特に動かすのは,日勤帯になります.

そのため,朝のカンファレンス前には評価とプランと次善の策(セカンドプラン)を提示することが必要です.

日中かけて評価をして,夕方からじゃあ利尿かけます,というのでは夜勤帯に入ってしまいます.

利尿をおこなうということは,電解質(特にカリウム)の異常や,水を引きすぎたことによる弊害(血圧低下や乳酸上昇,ときに低心拍出量症候群と呼ばれるLOSなど)が起こり得ます.

 

 

目指すべきは常に正常体液量(Eu volemia)

Eu volemiaの判断としては,臓器障害で評価されます.

Hyper volemiaで最も多いのが,肺うっ血による低酸素,うっ血肝などが代表です.

Hypovolemiaの場合は,腎障害,乳酸上昇や血圧低下などが代表です(乳酸は臓器ではありませんが,腸管虚血の評価の場合は臓器に入るかもしれません).

例えば横線を1本引いて,その間に縦線を2本引きます,左側がHypovolemia,縦線の真ん中がEu vomemia,右側がHyper volemiaだとします.

今の患者さんの状態を,その線のなかにプロットします.

そして今日自分はどこまで水を引くのかをプロットし,イメージします.

もう一つ重要な点は,Euvolemia近傍はグラデーションだということです.

例えば,Hyper volemia寄りのEu volemiaの場合は,心房細動で心機能が落ちた場合は心機能に比してHyper volemiaになりえます.

通常このようなLOSを示唆する場合は,輸液が選択されます.

輸液をおこなっても,輸液反応性(例えばΔ心拍出量<15%)がない場合は,むしろ利尿を行うべき判断になる可能性が高くなるはずです.

 

まとめ

HCUでの診療看護師が評価する点を一部記載しました.

病棟とは動きが異なることは理解すべき点です.

HCUの場合は,電解質補正は容易ですので,必要に応じた目標値まで補正することは最短で行えます.

利尿剤の使用も同じく,(超音波を含め)モニタリングされているからこそ,大きく動かすことができます.

もちろん診療看護師がギリギリを攻める必要は全くありませんので,医師と協議しつつ進めていただけば良いかと思います.

 

 

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