Contents
結論
PPV(Pulse pressure variation),SVV(Stroke volume variation)での評価
Tidal volme(VT) チャレンジ(6ml/kg → 8ml/kgでPPV変化率≥3.5%)
EEO(End expiratory occlusion test); 15秒の呼気ポーズでCO≥5%
PEEP test (PEEP ≥ 10cmH2O → 5cmH2OでCO≥9%)
今回の論文
論文というか,Editrialです.
輸液反応性で有名な,Monne先生が書かれています.
既知の内容にはなりますが,振り返ってみたいと思います.
PPV, SVV
PPV: Pulse pressure variation
Pulse pressureは脈圧になります.
すなわち脈圧の変化率(Variation)を見ていることになります.
Aラインを眺めると,吸気と呼気でAラインが波打っている場合があります.
通常は吸気時に胸腔内陰圧が強くなるので,静脈還流量が増加します.
前負荷が不足している場合は,PPV(脈圧の変動率)が増えるということになります.
ただ,一般的には自発呼吸のない調節呼吸下で用いることが前提とされています.
とはいえ,現在のトレンドなどの観点から用いることは臨床的にはよく行っていると思います.
ちなみにAラインの波形が出せるモニターでは,PPVという表示項目があるので,PPVをOnにしないと表示されません.
自分で波形を見て計算してもよいのですが,かなり難しいと思います.
当然ですが,心房細動などの不整脈では1回の心収縮での拍出に差があります.
たとえば,ある脈では収縮期血圧(SBP)は120のときもあれば,90のときもあります.
当然ですが,このような変動する脈圧ではPPVは使用できません.
そのため心拍数・脈拍数・血圧や1回拍出量は平均値を用いるのが一般的だと思います.
SVV: stroke volume variation
SVVは,Stroke volumeなので1回拍出量をみているということになります.
どうやって見ているのかというと,通常は心拍出量のモニターを用います.
これはAラインの波形から,1回拍出量をモニターしています.
ただしポピュレーションは,手術中や健常者など,ある程度限定されているという点はリミテーションになります.
ほんとに1回拍出量は正しいのかといわれると,圧波形を見て推定された1回拍出量を間接的に見ているということになります.
PPVとSVVの使い分けとしては,一般的にはそれほど意識する必要はありません.
同じように使用し,カットオフも14%程度とされています.
ただ,時々SVVとPPVの値が異なるケースがあります.
PPVとSVVを比率にすると,PPV/SVVとなり,この比がEadyn(動的動脈エラスタンス)とされています.
Eadynは輸液により圧反応性があるかどうか,という指標の1つになります.
カットオフは0.7-0.8とされており,この比率を上回ると輸液で圧が上昇するとされています.
ただし,測定している機器が何を見ているのかにより,PPVとSVVが同じものを見ている可能性もあります.
機器によっては,SVV=PPVとなっている可能性があり注意
https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/cc10088
PPVについて
https://www.atsjournals.org/doi/10.1164/rccm.201801-0088CI
https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-014-0587-9
比率として
https://link.springer.com/article/10.1186/cc9420
VT challenge
VTとはTidal volme(VT)の事です.
すなわち1回換気量です.
通常のARDS(急性呼吸窮迫症候群)での人工呼吸管理では,VTは6kg/ml前後を指標に行います.
傷害された肺が多ければ,健常な肺が減少します.
そのため,1回換気量は肺傷害の範囲が増えると1回換気量も減少することになります.
これは,傷害された肺野にはストレスをかけたくないからです.
健常な肺は非常に小さくなりますので,Baby lungと言われています.
先に書いたように,理想体重が50kgの場合は50x6mlでVT300mlになります.
重症の場合は,VT4ml/kgになりますので,x50kgでVTは200mlになります.
とはいえ一般的な管理としては,6kg/kgです.
このVTを一時的に8kg/kgに増やします.
1分間行い評価します.
この際のPPVの変化率が3.5%以上の場合は,前負荷応答性があるとされています(報告により異なる).
急性肺性心の場合は,偽陽性となる可能性があります.
EEO: End expiratory occlusion test
呼気週末での閉塞テストのことです.
通常人工呼吸器には呼気ホールドなどのボタンがあります.
これを押し続けると,機器によるかもしれませんが15秒程度は呼気ホールドが行えます.
先程から書いているように,前負荷は胸腔内の陽圧・陰圧の影響を受けます.
原理としては,VT challengeと似ています.
カットオフは,CO5%以上の増加になります.
呼気ホールドということは,人工呼吸器の吸気と呼気の吐いている方の圧になります.
すなわちPEEP(呼気終末陽圧)の値です.
平均気道内圧は,吸気圧と呼気圧の平均になります.
平均気道内圧を上げるためには,PEEPを上げるのが最も手っ取り早いです.
他には,吸気時間を伸ばすことでも平均気道内圧は上昇します.
ということは,重圧式(PCV)のほうが平均気道内圧は上昇するということになります.
心拍出量モニターの場合
心拍出量(CO)の測定は,動脈圧モニタリングで算出されるモニターで測定を行うのが一般的です.
これらの心拍出量モニターを用いる場合は,ある時点での平均値を表示しているので少し注意が必要です.
そのために,何秒間の平均値を出せるのか設定することができます.
EEOの場合は15秒ですので,この間の変化率を見たいわけです.
そのため,表示時間を5秒にするなど短くする必要があります.
超音波の場合
他には超音波で表示する方法があります.
超音波の場合は,左室長軸像で左室流出路を測定します.
通常2cm前後が多いです.
その後に,心尖部長軸像で3chや5chで大動脈弁から5mm中枢側にサンプルボリューム(PW)を置き測定します.
大動脈弁狭窄症の場合は,大動脈弁の直上にサンプルボリューム(CW)を置くので,少しだけ位置がことなります.
超音波で測定する場合は,2人いないと難しいと思います.
1人は人工呼吸器を調整する人(EEOを行う人).
もう1人は,超音波でVTIを測定する人です.
VTIを綺麗に描出できれば,その時点でのVTIを記録します.
その後声をかけてEEOを行い,VTIを測定します.
その差がCO5%以上で輸液反応性ありという判断になります.
ただ,VTIの場合はそもそも通常の人でも15-20程度です.
数字が細かく動くわけではないので,評価としては難しくなります.
そのためAラインで表示される心拍出量を測定するほうが簡便です.
モニターがない場合は,エコーを使うしかありません.
こちらも先に書いたように基本的な原理は同じですので,急性肺性心の場合は注意が必要になります.
また,肺動脈カテーテルの場合の心拍出量は,CO測定に数分かかります.
そのため,輸液反応性としての動的パラメータとして使用するには好ましくありません.
エコー
https://www.asecho.org/wp-content/uploads/2019/05/Aortic-Stenosis_Japanese.pdf
http://www.jse.gr.jp/ASEguideline_TTE_2021-03-23.pdf
PEEPテスト
PEEPが10cmH2O以上の場合は,5cmに下げます.
1分間行い評価します.
その際のCOが9%以上上昇すると,輸液反応性ありという判断になります.
当然,一時的にPEEPが低下するので短時間で肺胞が虚脱するようなケースには向きません.
ただし,臨床的にはPEEPの滴定などでAOP(Airway opening pressure)の測定を行う際一時的にPEEPを下げることはあります.
もしかしたら,その際に(忙しいですが)PEEPテストもEEOも測定できるかもしれません.
これは,研究ネタになるか?