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結論
スライディングスケールは早期に終了する
インスリンはどの食事に作用しているのか意識する
早朝の血糖値で基礎インスリンの量を決める
基礎インスリンは,基本的には入院後も継続する
はじめに
糖尿病の有無に限らず,HCUへ入室している方の血糖値はざっくり200mg/dl以下に保つことが必要です.
もう少しタイトにすると,140-180程度となります.
糖尿病だから,という理由で目標の血糖値が変わるわけではありません.
これは一般的なシチュエーションでの目標になります.
例えば,高血糖高浸透圧状態(HHS)などでは,もう少し血糖の目標を高くする時期もあります.
周術期の管理
周術期は血糖を,通常のHCU管理目標で管理を行います.
逆に,在宅での高齢者の場合はもう少し高くても良いはずです.
低血糖と高血糖,どちらを回避したいかと言うと,断然低血糖です.
低血糖は,最悪死亡する病態であり,死亡に至らなくても脳症が遷延するケースも存在します.
そして,低血糖を繰り返すことで認知機能の低下なども生じるとされており,まずは低血糖を避けるのが第一目標です.
次に高血糖を予防します.
周術期の場合は,血糖をコントロールすることで感染症の予防等に務める必要があります.
そのため,通常は強化インスリン療法が行われます.
内服薬ではなく,インスリンで血糖を調整した方が確実に血糖の管理が行えます.
HCUの場合
HCUにいる患者さんも,ICUと同じく140-180程度が目標になります,
周術期も同じでした..
すなわち,入院している患者さん全てにおいての目標といって良いかもしれません.
過去には,もう少しタイトなコントロールを行っていた時代もありました.
しかし,むしろ低血糖イベントが増えることなどが示され,現在の血糖目標に落ち着いています.
また,血糖をタイトに調整することで死亡率が上昇する可能性もあり,繰り返しますがやはり低血糖を避けるというのがまず重要です.
6検スライディング
当院でいうところの,6検スライディングとは,1日に6回血糖測定を行うことです.
つまり,4時間毎に血糖をチェックします.
6検の場合は,食事を開始していない方,持続的に頚静脈・経腸栄養が行われるケースで使用されます.
たまに食事が開始されても,6検継続となっているケースがありますので,食事開始とともに4検に変更します.
6検の場合,6回全てで血糖値目標よりも高値の場合にインスリンが使用されます.
一方,4検の場合は朝昼夜の各食前だけで,眠前の場合はチェックのみでインスリンは使用されません.
つまり,食事を開始している方に6検のスライディングを使用してしまうと,血糖値が上がったり下がったりするので,食事開始後は4検に変更しましょう.
4検スライディング
先に説明した通り,各食前必要に応じてインスリンを使用します.
スライディングスケールの利点は,1日のインスリン必要量を大まかに決めるというだけです.
Total daily insulin doseとも言います.
インスリンが必要であれば,いつどのくらいの量が必要かを検討しますが,そのまえにスライディングスケールを使用することで大まかなインスリンの必要性が推測できます.
ちなみに,インスリン開始のタイミングは200以上が標準で,150以上,100以上でそれぞれ適用とするケースもあります.
スライディングスケールの欠点は,食事に応じた血糖の上昇に追従できない点があります.
朝の血糖は普通
例えば,朝の血糖が130だったとします.
この場合はスライディングだとインスリンは不要ということになります.
昼の血糖が高い
昼の血糖が300だったとします.
この場合だと,スライディングでは8単位くらいインスリンが打たれることになります.
でも翌々考えてください,朝の血糖値は大丈夫で食事を摂取したことによって,昼の血糖が上がっているわけです.
つまり,インスリンの追加分泌が不足しているということになります.
これは,朝に8単位インスリンを打つ必要があるということになります.
もちろん,食事摂取量によりインスリンの上昇速度・程度は異なりますが,ある程度のインスリン量を決める必要があります.
夕の血糖が高い
この場合は,昼のインスリンが不足しているので,昼にインスリンを打つ必要があります.
もしくは朝から経時的に上昇傾向の場合は,(ステロイドを使用されている場合)ステロイドの影響も考慮されます.
朝の血糖値が高い
逆に朝の血糖値が,250だったとします.
これは,夜食事を食べた後ずーっと血糖値が高値であったということになります.
つまり,食事に伴う血糖上昇に対して,本来出るべきインスリンが出ていないことに加えて,基礎インスリンが不足しているということになります.
ということは,持続効果型のインスリンを使う必要があります.
朝の血糖値は,基礎インスリンの量を反映します.
すなわち,朝の血糖値で持続効果型のインスリン量が概ね決まります.
問題
1例目
血糖値; 朝100 昼150 夕250 眠前 180
この場合は,朝の基礎インスリンは充足しています.
夕の血糖が高いということは,昼の血糖は目標範囲内ですが,昼にインスリンを打つ必要があります.
スライディングスケールの量だと,2-4単位程度昼に打って,翌日再評価になるかと思います.
2例目
血糖値; 朝250 昼250 夕250 眠前250
この場合は,朝の基礎インスリンが不足しています.
実際にはこのようなパターンは無いと思いますが..
ひとまず,基礎インスリンを少量開始して,スライディングスケールを併用し,1日のインスリン量を把握します.
翌日の朝の血糖が220で,スライディングスケールで使用した1日量が10単位だとします.
半量程度の4-6単位を持続効果型のとして使用し,翌日評価します.
看護師が評価することで,評価のスパンが短い
このように,連日評価できる点は大きな利点になります.
たとえば,糖尿病内科の先生方は多忙ですので,週2回の介入ではプロですが目標を大幅に逸脱することもあります.
そのようなときに修正できる,特定看護師のような方が調整するのは"あり"のような気がします.