Contents
結論
- 症状を伴うか
- 慢性経過か
- 低張性か
- 補正速度は1日6mEq
低ナトリウム血症をみたら
症状があるか
低ナトリウム血症をみたら、まずは症状があるかどうかを確認します。
重篤な症状だと、意識障害、痙攣、嘔吐などをきたします。
症状があるような低ナトリウム血症は、急いで治療が必要です。
中枢神経は、不可逆的ですので、一度損傷した中枢神経機能は基本的に回復しません。
つまり、低ナトリウム血症は、ただ単純に生理学的パラメーターを改善させるのではなく、脳を保護するために行われます。
急性か慢性か
通常、48時間を境に急性か慢性かに分類されます。
なぜ、わけるのかというと、治療方針が変わるからです。
急性、つまり48時間以内に起こった低ナトリウム血症の場合は、極端な話急激に補正をしてもよいとされています。
ただし、臨床的には急性でおきた低ナトリウム血症というのはほとんどわかりません。
仮にわかったとしても、入院中に頻繁に採血をして急激に低下していた場合はわかりますが、自宅から救急車で来た場合などはわかりません。
そのため、ほとんどの低ナトリウム血症は、慢性として扱われます。
慢性の場合は、Rule of 6
慢性経過でのナトリウム補正速度は、24時間で6mEqを超えないような補正が好ましいとされています。
これ実際は、難しいので頻繁に採血をして上がりすぎていないかを確認します。
24時間で6mEqということは、12時間で3、4時間で1mEq上昇するくらいがちょうどよい補正速度ということになります。
そのため、可能なら4時間毎に採血をして確認を行うのがよい方法です。
集中治療室など、より頻繁に採血が可能な環境では、1時間おきに採血する場合もあるかもしれません。
裏技的な、抗利尿ホルモン
裏技的には、例えば12時間で6mEq補正された場合などは、残り12時間での補正を0にしなければなりません。
ということは、尿中のナトリウム排泄と補液などで入ってくるナトリウムの量、それぞれ同じにすれば理論的には可能です。
単純に、尿を止めれば、ナトリウム排泄は起こりませんので、これ以上上がることはありません。
抗利尿ホルモンは、その名の通り利尿を止めるための薬(ホルモン)です。
例えば、夜間頻繁に見れない場合などは、使用すると尿量が減少しますので、夜間のナトリウム補正を一時的に止めることができます。
日中だと、人もいますので通称逆補正と呼ばれる、5%ブドウ糖の点滴を行います。
ブドウ糖液は、代謝されるとただの水になります。
ラーメンを食べると水を飲むのと同じく、水を点滴しているようなものですので、ナトリウムを下げる方向に作用します。
偽性低ナトリウムでないかを確認
低ナトリウム血症で、症状のない場合は、比較的時間があります。
そのため、偽性(嘘の低Na)の要素がないかを確認します。
偽性の代表は、血糖とトリグリセリドです。
血糖は、100mg/dlの上昇で、約1.6ナトリウムを下降させます。
四捨五入でだいたい血糖100あたり、2とおぼえます。
血糖500の人が来た場合の、血性ナトリウムが125だったとします。
100あたり2でしたので、通常の血糖値100まで下げるには、あと400下げる必要があります。
つまり、血性のナトリウムは+8されて(補正Na)133ということになります。
偽性低Na:高トリグリセリド血症
トリグリセリドが高値の場合は、通常の血液成分に加え、単純に脂が上乗せされています。
脂が入ったドレッシングをイメージしてもらうとわかりやすいです。
脂のない部分が血液だとします。
けれども、検査で測定される部分は、脂の部分も併せて測定されます。
ドレッシングのように、振って混ぜたとしても実際は混ざっていなくて、あくまでも血液に脂が上乗せされた状態です。
例えば、水99mlに対し塩1gを入れると1%の食塩水になります。
これに、脂を10ml足します。
水と脂は分離していますので、実際の塩分濃度は1%ですが、検査機器では1/109で計算されます。
そのため、実際は1%のはずが、0.9%として表示されるようになります。
偽性低Na:高血糖
高血糖の場合は、トリグリセリドのように分離していません。
血液の中に、糖は含まれて計算されています。
そのため、血液の中の浸透圧物質の1つである、糖が上昇し高張性の低Naになります。
血液と尿の浸透圧を確認
血性の浸透圧が低い場合(280mOsm未満)が、真の低ナトリウム血症です。
これを、低張性低ナトリウム血症といいます。
等張性の場合は、トリグリセリドが高値の場合などでした。
逆に、高張性の場合は高血糖などの場合でした。
浸透圧を確認し、低張性であることの確認は重要になります。
浸透圧を提出するのが最も簡便で正しい値が出ます。
血性浸透圧= 2Na+glu/18+BUN/2.8 で計算されます。
計算された値とのギャップがある場合は、何らかの浸透圧物質があると考慮されます。
有名なものは、エタノールがあります。
尿中のナトリウムとカリウムを確認
単純に、尿中のNa+Kの量が、血性Naよりも多ければ低Naは進行します。
そのため、補充を行うなどの対応が必要になります。
逆に、尿中Na+Kの量が、血性Naよりも少なければ、低Naは改善傾向になると予測されます。
まとめ
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低Naをみたら、症状があるかを確認
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症状がある場合は、急いで治療
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症状がなければ、慌てなくてよいので低張性低Na血症かどうかを確認する
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低張性低Na血症で慢性経過の場合は、1日に補正してよいNaは6を目安にする
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6を目安にすれば、多少上がりすぎても余裕が持てる(余裕は大事)。