診療科 集中治療科

ショックとモニタリングのガイドライン2025

1. SHOCK:ショックの定義と評価

 

ショックの診断において、何を評価すべきかが定義されています。

  • 定義: 低血圧、頻脈に加え、組織低灌流の徴候(皮膚灌流異常、尿量減少、意識変容)が典型的な特徴です

  • ただし、低血圧は一般的ですが、ショックの定義に必須ではありません

     
     

     

  • 皮膚灌流の評価: 毛細血管再充満時間(CRT)の評価を行うべきであり、皮膚温やmottling(網状皮斑)の評価で補完することが推奨されます

     

     

  • 代謝・微小循環: 中心静脈カテーテルと動脈ラインがある場合、動静脈二酸化炭素分圧差(PCO2 gap)の連続測定を行うべきです

  • また、可能な場合は微小循環の評価を補助的に考慮してもよいとされています

     
     

     

 

2. FLUID THERAPY:輸液療法

 

輸液のベネフィットとリスクのバランス、および反応性の評価について言及されています。

  • リスクとベネフィット: 輸液反応性の評価によって予測される「輸液の潜在的利益」は、「輸液のリスク」と天秤にかける必要があります

     

     

  • リスク評価指標: 輸液による害のリスクは、血管内充満圧、腹腔内圧(IAP)、血管外肺水(EVLW)、肺血管透過性指数(PVPI)、静脈うっ血エコー(VEXUS)、P/F比、肺エコー(LUS)スコアなどで評価可能です

     
     

     

  • 輸液チャレンジ(Fluid Challenge): 200~500mlのボーラスを5~10分かけて投与し、その効果を評価することと定義されています

     

     

  • 効果判定: CRT、mottling、ScO2、PCO2由来の変数、乳酸値の変化などで組織灌流の改善を評価すべきです

     

     

  • 輸液反応性の予測: 人工呼吸管理下のショック患者(自発呼吸の有無にかかわらず)では、受動的下肢挙上(PLR)テストが推奨されます

  • また、自発呼吸のない人工呼吸患者では、呼気終末閉塞テストが代替法として推奨されます

     
     

     

 

3. HEMODYNAMIC MONITORING:血行動態モニタリング

 

モニタリングデバイスの選択と血圧管理目標について詳述されています。

  • 心拍出量(CO)/ 一回拍出量(SV): 初期治療に反応しない場合、ショックの病型分類や血行動態評価のためにCO/SVをモニタリングすべきです

  • その際、臓器機能や組織酸素化と合わせて解釈します

     
     

     

  • デバイス: COモニタリングが必要な場合、経肺熱希釈法または肺動脈カテーテル(PAC)が考慮されます

  • 特に中等症~重症ARDSを合併するショック患者では、輸液誘導のためにこれらが考慮されるべきです

     
     

     

  • 動脈圧: 初期治療無効または昇圧剤を要する場合は、動脈ライン(Aライン)で血圧を監視すべきです

     

     

  • 平均血圧(MAP)目標の個別化:

    • 高めの目標: 慢性高血圧の既往がある敗血症性ショック、またはCVPが高い敗血症性ショック患者で、昇圧により臨床的改善が見られる場合。

       
       

       

    • 低めの目標: 外傷性脳損傷(TBI)のない、出血コントロールができていない外傷性出血性ショック(収縮期 80-90 mmHg / MAP 50-60 mmHg)

       

       

    • その他: TBI合併時はMAP ≥ 80 mmHg、心原性ショックではMAP ≥ 65 mmHgが考慮されます

       
       

       

  • その他の圧: 腹腔内圧(IAP)のリスクがある場合は連続測定を考慮

  • 中心静脈圧(CVP)はカテーテルがあれば測定すべきですが、特定のCVP値を治療目標にすべきではありません

     
     
     

     

 

4. ECHOCARDIOGRAPHY:心エコー

 

  • COをモニタリングしている場合でも、心機能に関する追加情報を得るために、経時的な心エコー評価を行うべきです

     

     

  • 心エコーで定義される左室・右室の収縮能フェノタイプは、予後予測や治療方針の変更に寄与します

     

     


このガイドラインは、画一的な数値目標(CVPなど)よりも、患者個別の病態(慢性高血圧の有無、ARDSの有無など)や動的な指標(PLRテスト、皮膚灌流など)に基づいた管理を強く推奨している点が特徴です。

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