診療科 集中治療科

集中治療室での酸素投与目;ICU−HOT

酸素投の目標

結論としては、一般的な対象患者では、酸素飽和度(SPO2)で88−92%が目標でOK。
ただし、重症呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者さんでは、不利益も増加する。

最近は、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に伴う、ARDSが増加しています。
そのため、Covidによる重症の肺傷害の場合の酸素目標として明確なものはありません。

酸素を少しでも減量した場合に、著しく低酸素血症をきたす様な状況の場合は、酸素目標を少し上げてもよいのではないかと思っています。

今回の研究

ICUに入室した急性呼吸不全の患者さんの酸素目標は、高いほうがよいのか低いほうが良いのか、といった疑問です。

何事においても当てはまりますが、例えばくすりはリスクといわれるように、表と裏の側面を持ちます。

不適切な酸素投与の場合だと、最近は死亡率が増加するのではないかとか、心筋梗塞の梗塞サイズが増えるのでは無いかとか、色々いわれています。
つまり、負の側面が以前よりも強調されるようになってきています。

方法

今回の研究では、2928名が登録されています。

酸素目標は、PaO2 60mmHg群と、PaO2 90mHg群に割付されました。

主要評価項目は、90日以内の死亡率です。

結果

結果としては、90日時点での死亡率を示します。
低い酸素目標群:618/1441症例(42.9%)
高い酸素目標群:613/1447症例(42.4%)

この2群間の修正リスク比は1.02; 95%信頼区間0.94-1.11; P=0.64でした。

つまり、ICUに入室するような重症の呼吸不全患者でも、酸素目標値はPaO2で60mmHgあれば十分ということになります。

有害事象に関しても、ショック、心筋梗塞、脳虚血などで2群間に差はありませんでした。

私見

冒頭でも書いたように、最近はこの様に低い酸素目標値でも問題ないことが沢山の研究で示されています。

ただし、わたしの知る研究結果は全てICUセッティングですので、病棟患者さんに対して、どの程度まで外的妥当性を担保できるのかは疑問です。

ただ、1つ言えることは目標思考型蘇生(EGDT)で有名になったように、重症患者の場合は酸素の需給バランスの破綻が主要な問題ですので、このバランスを是正するのが、支持療法の中心になります。

つまり、重症患者さんの方が、基本的に細胞は酸素不足になりやすい環境にあるといえます。

また、病棟の患者さんが低い酸素目標にしたからと言って、ICUですら増えなかった死亡率が増加するとは思えません。

つまり、一般的な呼吸不全に対する酸素目標は、PaO2で60mHg程度あれば十分ということになります。
これは、SPO2に換算すると、90%(つまり88−92%)目標で事足りるのだと思います。

Covid-19の場合は、SPO2<94%程度で、酸素を使用するプロトコルが多いと思います。 その時点で、中等症としてデキサメタゾンやレムデシビルなどの治療が追加されています。 基本的には、同じ酸素投与目標で良いはずですが、Covidにおいて酸素投与が与える弊害に関しては、不明な点が多いので、過去のプラクティス通り、酸素投与の閾値は低めに設定している事が多いと思われます。

まとめ

酸素目標は、急性呼吸窮迫症候群以外では、基本的にギリギリを責めても悪くなさそう

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