総合診療内科 診療科

絶え間なき感染症への挑戦;総合診療アップデート

西伊豆の仲田先生が著された本を読んでいます。
とても分厚くて、厳密に医療と関連する部分は2/3位かもしれませんが、個人的には、その医療と関連のないところも結構気に入って興味深く呼んでいます。

また、色んな所に旅行に行かれた体験も、散りばめられており、ほんとインターネットの活用で、すごい人が僻地でも活躍し、最先端の医療を実践されているのだと感じています。

さらにすごいのが、整形外科医であるということです。
普通内科の医師は、外科的介入ができないので、内科の武器は膨大な知識ということになります。
けれども、仲田先生は膨大な知識に加え、外科医でもあるので、まさに最強といってよいでしょう。

さらに、この年まで最先端の医療を勉強し続けるその姿勢が素晴らしいです。
多分勉強だと思っておらず、遊び感覚なのだと思います。
まさに、いろんな点で神がかっています。
そんな方が著された本なので、とても読みやすいです。
単純に読み物としても楽しめます。

感染症による世界での死亡

年間5880万人が亡くなっているようです。
そのうち、1500万人は感染症によるもので内訳は以下のとおりです。

  • 呼吸器感染症250万人
  • 下痢疾患250万人
  • HIV/AIDS180万人
  • 結核130万人
  • 髄膜炎30万人
  • 百日咳20万人
  • はしか20万人
  • HBV10万人
  • その他感染症10万人

世界3大感染症

  • 結核
  • マラリア
  • HIV/AIDS

結核

結核は以前日本でも、死因のトップでしたが抗菌薬の発達に伴い、減少傾向となっています。
しかし、抗菌薬の開発された現代においても、結核は非常に怖い病気(感染症)です。

世界の1/3は結核に感染し、そのうちの10人に一人が結核を発症すると言われています。
これが結核の厄介なところなのです。

例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)やエボラ出血熱は、大変死亡率の高い感染症です。
このように、感染症が成立するためには、宿主が必要になります。
つまり、人間の体ということになります。
人間の体を使って、ウイルスや細菌は棲家とするのであれば、人間が死亡してしまうことで、ウイルスや細菌は家を突然失う事になります。
ですので、死亡率が極めて高い感染症は、とても怖い感染症ではありますが、世界的流行になる前に比較的抑え込む事に成功しているといえます。

ところが先に述べた結核ですと、人の体に永住するかのごとく共存している場合が多く、人間の免疫が低下したときにだけ悪さを前面に出す可能性があります。
悪さを前面に出すだけなら良いのですが、人に移す可能性が極めて高い感染症ですのでとても厄介なのです。

結核は空気感染により、感染が成立します。
多くは肺結核ですので、肺結核は最も神経を使います。

一度感染が成立して、発症してしまうと、6か月の抗菌薬治療が必要になります。
そして、治療の初期は入院が必要になります。

結核はホントにいろんな病気に化けますし、臓器の多くで感染を起こします。
例えば、関節や副腎や腸など、他にも様々な場所に感染を来します。

ですので、抗菌薬が開発された現代においても、とても厄介とされているのです。

また、結核菌の耐性化が近年問題となっています。

たとえば、結核を否定するまでは、ニューキノロンの使用は慎む、といった格言があります。

これは、安易にニューキノロンというタイプの抗菌薬が処方されているのもそうですが、結核菌に下手に聞いてしまい、耐性化してしまうことが問題となっています。
ニューキノロンだけに耐性化なら、他の薬を使うことも可能ですが、それらの薬剤にも耐性を示す結核菌が問題となっています。

つまり、空気感染を起こす非常に流行しやすい細菌感染症である肺結核は、さらに進化を遂げて人々の命を虎視眈々と狙っているとも言えます。

そのため、結核に限らず近年は薬剤耐性菌に対する、キャンペーン等も行われています。

その代表が、「風邪に抗菌薬はやめましょう」といったものです。

風邪=感冒の原因は、ウイルスですので、細菌=バイ菌に効く抗菌薬を使用しても、効果が得られないばかりか、副作用や薬剤耐性の問題ばかりが前面に出てしまうのです。

抗菌薬は1対1対応として、ある細菌にはこの抗菌薬というものではなく、ある細菌とその仲間たちに、ある抗菌薬は効くように作られています。

例えば、脳腸相関といって、腸は第2の脳とも言われますが、その良質な腸菌細菌叢を乱すのが抗菌薬、それも広域抗菌薬になります。

広域抗菌薬とは、たくさんのバイ菌を殺すことの出来る抗菌薬です。
通常、バイ菌も棲み分けがされており、肺ならこのバイ菌、尿路ならこのバイ菌とある程度は住所が決まっています。

ですが、広域抗菌薬とは肺にも尿路にも胆道系にも効くと言ったように、体の中のほとんどの細菌を殺してしまいますので、患者さんの状態が落ち着いている状況や、その抗菌薬しか使えないと言った切羽詰まった状況でしか、使ってはいけないとされています。

結核には、世界の3人に1人が感染していると言う事でした。
注意して欲しい事は、免疫抑制を来す治療を行う際には、必ず結核に感染していないことを確認する必要があります。
必ず感染していない事を証明する検査は実は無いのですが、高い確率で感染していないという事を証明できる検査があります。
T−SPOTやIGRAやQuanti feronなどと呼ばれる検査がそれにあたります。
ときには、ツベルクリン反応という、古典的な検査を併用することもあります。

医療を受ける際に安易に使われがちで、免疫を下げる代表的な薬剤がステロイドというお薬です。
どのくらい安易に使われているかというと、完全に処方している医師の判断によると思いますが、かゆみ止めとして安易に処方されたりしています。

他には、慢性炎症と診断して、ステロイドを長期服用している人などが、いわゆる安易に処方される代表といえます。
たとえば、CRPが高いから、ステロイド飲んでおきましょうという医師は、今でも時々見かけますが、とても恐ろしい事なのです。
薬剤を処方する上で、時には間違いもありますが、このような免疫を下げる代表的な薬剤を処方するからには、その副作用を知りながら処方すべきであると言えます。

ステロイドを長期(2週間程度が目安)に服用すると、副腎というホルモンを出す臓器が活動しなくなり、血圧低下を来すショック状態になってしまう怖い病気になりえます。
ステロイドを処方した結果、副腎不全になることはありますが、医療が原因で作られた病気ですので、患者さんにとっては治療してたはずが新たな病気にかかってしまったということになってしまいます。

このステロイドというお薬ですが、振り子のように(振り子現象ともいわれます)、良い・悪い・そうでもないといった研究結果が未だにだされています。
例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)には、ステロイドは当初禁忌と言われていましたが、最近は良いのではないか、とする結果も出されています。

喘息では必ずといってよいほど使用される、ステロイドの吸入に関しては、肺の局所のみに作用しますので、副作用は比較的少ないとされています。
ここでもやはり免疫を局所的に下げますので、うがいをしなければ口の中にカビが繁殖するなどの副作用の懸念はあります。

結核の話に戻りますが、ステロイドを使用する前には、必ず結核で無いことを高い確率で検証可能な確認を行うのでした。
たまにありますが、すこし特殊なタイプの肺障害や腎障害に対して、ステロイドを使用することで、結核が一気に暴れだすことがあります。
免疫と結核とはうまい具合に共存していたはずですが、人の免疫がステロイドにより突然下がったことにより、結核菌の勢いが増してしまいます。
こうなってしまうと、病院で接触した人は検診を受け、追跡調査を行うことになります。
そして、運悪く医療者も結核に感染し、発症してしまうこともあります。

人の免疫が落ちた際に問題となるもう一つの感染症が、水痘です。
水痘は、いわゆる水ぼうそうと呼ばれます。
水ぼうそうのぼうそうは、暴走ではありませんが、ときに暴走します。
通常ウイルスは、冬眠状態で人の免疫が勝ることで、活動できないようになっています。
そのため、免疫不全と呼ばれる状態になると、ときに汎発性帯状疱疹という形で、全身に播種性に出現することもあります。
通常、帯状疱疹は神経に沿って出ますので、体幹を1週することはありませんが、このような汎発性帯状疱疹の場合は、見方にもよりますが、1週してしまうともいえます。
世の中には、1周巻いたら亡くなるという噂もありますが、ある意味嘘である意味ホントともいえます。

マラリア・HIV/AIDS

他の世界3大感染症である、マラリアやHIV/AIDSに関しては、臨床的に経験することが無いので、わかりません。
しかし、結核同様にHIV/AIDSも頭の片隅においておくことが必要です。
例えば、咽頭炎はすごくよくあるシチュエーションですが、そのような患者さんでも、HIVの可能性を考慮しています。
そして、HIV/AIDSの診断を行うには、「検査では無い」ということは認知しておくべきだと思います。

よく検査の特性の話で、この話題はあがります。
若年者の乳癌検診も同様です。

検査は万能ではありませんので、全ての人に検査を行えば、病気ではない人に検査陽性となる場合が一定の確率で起きます。
例えば、その確率が0.0001%であれば、その検査の精度はすごく高いとされます。
しかし、1万人に1人は病気では無いのに検査が陽性となってしまうのです。
上記の精度の検査を無症状の人に際限なく行えば、10万人で10人、100万人で100人の陽性者が出ることになります。

もちろん、この検査のみで診断になるわけではなく、より詳しい検査を受けることになります。
しかしその間は、HIV/ AIDSに罹ってしまったかもしれないという、強い不安に駆られることになります。

そのため、検査を行う場合には、事前確率が重要になります。
HIV/AIDSを例にあげますと、突然このウイルスには罹患しませんので、必ずどこかからやってくる必要があります。
そして、結核のように空気感染ではありませんので、接触の機会が必要です。
そのため、パートナーや薬物に加え、医療現場での感染リスクの高い方には、プライバシーに配慮したうえで、詳細な問診が必要になります。
その問診が、検査するかどうかを決める、事前確率になります。
検査を行う上で、もっと重要な事です。
検査のほとんどは、事前確率に依存している、言えるのではないでしょうか。

けれども、主に外来では検査をしたほうが病院の儲けになります。
そして、検査をした方が、患者さんの満足度も高くなることがあります。
その代表とも言えるのが、インフルエンザの検査です。

毎年冬になると、適切な医療を行っている人には、インフルエンザの闇ともいえる季節かもしれません。
インフルエンザの可能性が高ければ、検査の如何によらず、インフルエンザとして対応します。
一方、インフルエンザの可能性が高いのに、検査を行ったばかりに、陰性となってしまい、患者さんががっかりするケースもあります。

診断とは医師が行うもので、検査が行うものではありません。

そのため、検査ばかりに頼る医師は、流行時期のインフルエンザに検査を連発して、陽性なら治療、陰性なら検査が早かったね、また明日来てね、という場合もあります。
結果的に、インフルエンザではなく、尿路感染症など他の感染症である場合もありますので、やはり問診による事前確率に応じて、検査は行われるべきだと思います。

比較的事前確率に応じた検査がなされているのは、急性細菌性咽頭炎だと思います。
細菌性咽頭炎の多くは、A群β溶連菌という細菌が関与していますので、Centor基準やcentor基準に年齢を加味したMcclsaacスコアを利用します。
この点数が上がれば上がるほど、細菌性咽頭炎の可能性が上がるとされており、通常2点以上は迅速検査を行います。
最も最近は、溶連菌のみが咽頭炎の原因菌では無い、とも言われていますので、急性細菌性咽頭炎=溶連菌の図式は成立しなくなってきたと言えます。
このように、検査はその特性を理解して使う方が、スマートだと思います。
そして、診るべきは検査の結果ではなく、患者さんだということです。
患者さんを丁寧に診察すると、いろいろ医療者に問いかけてきてくれます(言葉だけではなく、症状なども含めて)。
咽頭炎に関しても、検査結果を鵜呑みにするのではなく、患者さんを丁寧に診察した結果、治療介入すべきかどうかは、検査がなくても判断出来ると思います。

このような迅速検査は、病気がある/なしの二元論ではなく、悩ましい時に補助的に使うことで役に立ちます。
そのため、臨床的にはある病気の可能性が高い・低いにまず分けます。
これらは、検査に頼らずとも多くは診断できます。
問題は、よくわからない場合ですので、そのような時に検査は上手に使われるべきであると思います。

Mcclsaac基準

38℃以上の発熱 +1
咳がない +1
前頸部リンパ節腫脹と圧痛 +1
扁桃腫大・浸出物 +1
3〜14 歳 +1
15〜44 歳 +0
45 歳以上 -1

メディカルスタッフの活用

検査の連発は、思考停止と同義とも言われますが、検査をたくさん行うのにも理由がある場合があります。
その理由が、「多忙」です。
医療現場は忙しいのです、たいていの場合は。
そのため、インフルエンザであったとしても、抗インフルエンザ薬は必要ない、という説明を行う必要がありますが、後ろにはたくさん次の患者さんが待っています。
インフルエンザの検査についても同様に、検査の必要性を説明する時間よりは、検査結果で陰性・陽性と白黒つけてもらったほうが患者さんはわかりやすいのです。

しかし、そのような検査至上主義が良いことではありません。
そのために、メディカルスタッフの活用が良いのではないかと思います。
例えば、看護師、特に訓練を受けた診療看護師(NP)や特定看護師、トレーニングを受ければ薬剤師や検査技師でも可能だと思います。

このコメディカルの活用をできないようにしているのが、日本の法律でした。
現在多少改変され、特定行為を資格取得した看護師でも、一部の医行為が可能となっています。
その法律により、医師は絶対的な権力を持ち、どんな些細な事でも医師に確認が必要になりました。
その結果、医師は「そんなわかっている事聞いてくるな」となり、医師にしかできないオーダーであったり書類であったり、医師の負担ばかりが増えていきました。

医師の負担が増えるということは、時間外の指示も増え、看護師を始めとした医療スタッフの負担まで増加するという事になってしまいました。
最近政府は働き方改革ということで、このタスクシフティングやタスクシェアリングという動きが見られており、医療の健全化に寄与出来る可能性を期待しているところです。

世界5大感染症

上記3つに加えて

  • 肺炎
  • 下痢症

肺炎にしても下痢症にしても、先進国である日本でも、とてもポピュラーな病気です。
ちなみに、下痢には定義がありますので、患者さんの言っている下痢と、医療者の認識する下痢はときに異なる認識であることが多いです。

一般的に、1日3回以上の水溶性の排便のことを、医療者は下痢と言っています。

特に肺炎は、日本人の死因3位となっており、がんや心疾患に続き、死亡の原因となる病気になっています。

一方下痢については、先進国で病院を受診すれば、死亡することはほとんど無いと言ってもよい病気ですが、途上国では下痢は死亡の大きな原因を占めます。

この世界の3大感染症に2つ加えた5大感染症では、感染症の原因菌が1つでは無いということが大きな問題点であり、特徴とも言えます。

例えば、肺炎の最もポピュラーな原因菌は肺炎球菌ですが、肺炎球菌性肺炎であれば、肺炎→原因は肺炎球菌といった具合に、肺炎球菌をターゲットに治療することが肺炎の治療であったはずです。

ところが高齢化が進み、高齢者肺炎の原因の多くが誤嚥によるものとなってきています。
いわゆる誤嚥性肺炎と呼ばれるものです。
一般的には、嚥下機能が低下し、誤嚥により無菌に近い状態であるはずの肺に、食物や上気道の常在菌が侵入し、加えて咳嗽も弱くなった高齢者は、肺炎を容易に来してしまいます。

誤嚥性肺炎の多くは、嚥下機能の低下によりますので、嚥下能力を鍛えることで再発予防が期待できます。
嚥下を行うにも筋肉を使いますので、要は筋力トレーニングと同じく、蛋白リッチな食事を行い、嚥下に伴う筋肉を鍛える事で、筋力低下が問題であるタイプの誤嚥であれば改善が期待できるのではないかと言われています。

誤嚥性肺炎患者さんの喀痰を培養しても、その多くは上気道常在菌として結果が帰ってきます。
つまり、上手に共存しているはずの細菌が、異なる臓器で悪さをして肺炎の原因になっているということです。

人体では、そのような現象は時に見られます。
逆流性食道炎なども、その類で胃と食道のpH(酸性度)は異なりますが、主に加齢に伴い、胃液が食道内に逆流するようになると、逆流に伴う食道炎ということで、逆流性食道炎が見られます。
人体はそもそも、機能的に作られているはずですが、人間を作った神様の予想よりも人間は長生きする術を身に着けた事により、様々な人体の弊害とも言える病気も顕在化して来ているとも言えるのでは無いでしょうか。

このように誤嚥性肺炎は、原因微生物を抗菌薬でやっつけてしまえばよいという単純な肺炎ではなくなって来たのです
そのため、先に述べたように、嚥下機能回復へのリハビリテーションや、摂食しやすい食事形態など、様々な調整が必要とされています。
もちろん、睡眠薬として使用されている、ベンゾジアゼピン系の薬剤も、誤嚥性肺炎のリスク因子とされています。

ベンゾジアゼピンは、せん妄や、転倒リスク、誤嚥性肺炎、健忘効果による認知機能知低下など、様々な弊害があります。
また、長期内服患者さんでは、依存状態となっていますので、ベンゾジアゼピンの中止にも時間を要します。
そのような影響もあり、極力使用しないことが勧められています。

下痢症に関しては、先に書いたように先進国では亡くなる病気ではなくなってきました。
しかし、体力の無い高齢者などではときに亡くなることもあるようです。
基本的には、下痢の問題点は水分喪失に伴う脱水ですので、喪失した分の水分を補うことが治療の主体となります。

腸液は、ほとんど細胞外液の組成と類似していますので、最低限出た分は輸液を行う必要性があります。
院内での下痢の代表は、クロストリディオイディス・ディフィシル感染症です。
これは、特殊な抗菌薬で治療しないと基本的には治りません。
また、アルコールが効きませんので、感染症伝播予防には、流水と石鹸による手洗いが必要です。

また、冬季で問題になるのは、ノロウイルスです。
ノロウイルスの感染は驚異的で、免疫も付きませんので、何回でもかかります。
巨大客船で、COVID-19の集団感染が問題となりましたが、ノロウイルスの感染力の強さはそれを凌ぎ、以前どこかの船で全員罹患したという報告もあります。
基本的には、接触感染ですので、きちんと手洗いをすれば防ぐことは出来るはずですが、なにせ感染力が強すぎて、家庭内でも感染管理に対する知識と実践能力がないと、全員罹っていまう病気とも言えるでしょう。

ノロウイルスは、いわゆる胃腸炎と呼ばれる、お腹の風邪とも称されます。
そもそも風邪は風邪ですので、メタファーなのですが、たしかに3日程度で通常症状は改善します。
通常、嘔吐→腹痛→下痢の順番で起こりますが、人により症状の出方にも多少差があるように思います。
胃腸炎は、ゴミ箱診断の代表疾患ですので、嘔吐・下痢・腹痛の3つの症状が出揃っていないときには、他の病気の可能性も考える必要があると思います。
また、その順番も重要で胃腸炎だと、嘔吐→腹痛→下痢が通常のパターンです。
例えば、虫垂炎の問診では、腹痛が先なのか、嘔吐が先なのかで、虫垂炎に対する可能性が変わってきます。
通常の虫垂炎の場合は当然、腹痛が先なので、胃腸炎とは症状出現の仕方が異なります。
胃腸炎症状の嘔吐や下痢は、比較的重症病態では起こりやすい症状と言えますので、注意がが必要です。
嘔吐はいろんな原因で起こりますので、必ず原因はないかということと、3徴が揃っていることを確認する必要があります。

また、ノロウイルスの診断目的に検査も開発されていますが、結果が帰ってきた時には、患者さんは通常ピンピンしていますので、検査を出す必要性はないと言われています。
ただし免疫不全を伴う慢性下痢の際には、ノロウイルスが原因のこともあるようです。
ノロウイルスかどうかの判断は、症状マネジメントの観点からは重要になります。
例えば、下痢止めを使ってしまうと、症状増悪の可能性もあります。
そのような観点からも、検査の意義はあると思われます。

下痢で比較的多いのは、キャンピロバクター腸炎が多いように思います。
キャンピロバクター腸炎の原因は、鶏肉が多いですので、過去1週間程度にさかのぼって病歴を聴取する必要があります。
例えば、焼き鳥・焼き肉・バーベキュー、さらには生の鶏肉調理歴などでの感染も時々あります。
多分最もリスクが高いのは、鳥刺しでは無いでしょうか。
地域によっては、ポピュラーですが、都会の方々は怖がってあまり食べません。
その嗜好も最もで、都会で売られている鶏肉のほとんどはキャンピロバクターが付着していたという報告もあるようです。

またキャンピロバクター腸炎は、細菌性の食中毒ですので、病歴聴取で聞いたように、1週間程度は可能性があります。
ときに惑わされるのが、下痢のない発熱を主訴に来院された場合です。
発熱だけで、突然患者さんは「焼き鳥食べましたか?」と聞かれるので、全然関係ない質問に、なんで分かったんだろう、と思うこともあるようです。
その後、下痢するというパターンが多いです。
家族や友人も同様の症状があれば、より病気の可能性を上げます。

診断は病歴と症状がメインですが、便培養検査がゴールドスタンダートでしょうか。
しかし、慣れた人がみると便のグラム染色でも、いわゆるカモメが見えますので、迅速性の観点からは有用です。
ただ、カモメ(ガルウイング)を見つけるのは、普通の細菌よりも難しいですので、慣れた人と見ないと最初は多分わからないと思います。
また、以外に血液培養も陽性になります。
これもまた、通常の培養時期よりも遅く培養検出されますので、困ったときには血液培養を採取して置くということは有用だと思います。
血液培養陽性でも、便培養陰性のこともあります。
血液培養は、診断に迫れる検査であると改めて認識させられます。

治療は基本的に経過観察で、入院を要するような比較的重症の場合は、マクロライド系抗菌薬で治療を行うこともあるようです。

ざっと、5大感染症とその周辺について書きました。
先進国である日本では、誤嚥性肺炎への治療戦略の構築がこれからの過大であると思います。
また、長寿先進国である日本では、世界へ向けてそのようなデータを発信していくフィールドは整っていますので、高齢者のデータはどんどん世界へ発信していくべきだと思います。

まとめ

世界3大感染症の1つである、結核は人との共存が上手なだけに、結核発症には気をつける
世界5大感染症の1つである肺炎は、高齢社会である日本では、誤嚥性肺炎に対する治療管理戦略が重要

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