総合診療内科 診療科

必要な検査の妥当性について

結論

  • 必要な検査は行うべき
  • ルーチンで行っている検査は、根拠に基づかない可能性もある
  • 不確実な検査の提出は、多くの医療者の負担になり、医療コスト面での不利益もある
 

検査について

 

検査の前提は、検査前確率に全ては依存します。

たとえば、風邪の診断には、咳・咽頭痛・鼻汁といった3徴が揃う事が必要とされています。

そして、病歴上も風邪が流行する時期に多くなりますし、周囲の流行状況にも左右されます。

たとえば、同居する家族であったり、学校での流行といった、検査前確率を上げるような「病歴」があれば、より風邪らしさを示唆するといえます。

風邪を検査で診断するとはいっても、結局診断する術も特にありません。

元気そうだったら、解熱剤や咳止めなどで数日様子をみてもらう、という「対症療法」が行われます。

ところが、この検査の概念を変えたのが、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)です。

Covidが流行し始めた当初は、検査がこれほどまでに必要になるとは思っていませんでした。

というのも、似たようなウイルスであるインフルエンザウイルスの場合は、検査前確率が高ければそもそも検査をしないという戦略も可能だったからです。

診断とは、医者が行うものであり検査が行うものではないとう、牙城が崩されたような気分でもあります。

Covidに関しては、検査の有用性が示されていますので、今回は省きます。

 

雑誌: 総合診療 31巻9号 (2021年9月)

 

総合診療という雑誌に、検査の特集が組まれていました。

タイトルは ”特集 「検査」のニューノーマル2021—この検査はもう古い? あの新検査はやるべき?” というものです。

臨床現場で勤務されている方には、もはや周知の事実なのかもしれませんが、少しだけ雑誌の中身を説明します。

例えば、TTKGという検査があります。

この検査は、カリウムの異常があった際に以前は行われていました。

このTTKGという方法を発案した、ハルペリン先生というとても有名な先生がいらっしゃいますが、後に自ら否定されているということは有名な話です。

 

 

とはいえ、ハルペリン先生の事は、個人的に全く知りません。

このTTKGも調べると、いろんなところで鑑別のフローチャートの最初に出てくる程とても有名なものです。

多分未だに計算している人も、たくさんいると思います。

個人的にも、フローチャート通りに以前は計算してました。

この雑誌の特集は、特定の検査を否定するものではありませんが、より有用性の高い検査を推奨しています。

低K血症の場合は、尿中K/Crということになります。

TTKGよりは、簡便で使えるということで一石二鳥です。

臨床現場では、以前は難しい式は一般化しづらい(臨床現場で使うには労力が大きい)ということで流布しづらい環境にあります。

最近はアプリありますので、多少難解な公式であっても比較的簡便に計算する事が可能になりました。

iPhoneは、わたしのような賢くない人間の底上げにも貢献しています。

話を戻してK/Crの話しに戻りますと、この公式には尿中のKとCrを使うだけですのでアプリすら不要です。

簡単な検査が有用な検査になりうるということは、とても有意義といえます。

臨床に限りませんが、少ない労力で最大の効果を発揮するということは、いろんな領域を超えた共通言語と言えるでしょう。

多くの人は、1日は24時間(1440分)しかありません。

この時間を有益に使うには、無駄な時間は徹底的に省くべきです。

色々考えることはとても大事なことです。

でも、考える上でも簡素化できる部分は簡素化する、というプラクティスは色んな意味で有用です。

この雑誌には、もしかしたら新たな発見が得られる可能性を秘めていると思います。

 

他にも

 
  • プレアルブミン
  • 急性間質性腎炎の際の尿中好酸球
  • 急性膵炎のアミラーゼ
  • 急性冠症候群の際の、トロポニンの0/1フォローの有用性

などなど、知っている事もあれば知らないこともあるはずです。

そして、知っている場合でも実際の臨床で使えない可能性の高い検査を使い続けている場合もあるはずです。

使う・使わないの2言論ではなく、適切に使い・適切に使わないという選択こそが臨床現場では難しいのです。

一人で診療を行う場合は、これらの情報を元に知識と実践をアップデートすればよいです。

しかし、多数で診療を行う場合は、何かの指標を持つ必要があります。

その指標がそもそも使えない可能性が高いパラメータである場合は、情報を提示し、共通認識を持ったプラクティスへ導く事が必要になります。

臨床現場で難しいのは、他科を含めた信念対立のような構図がときに見られます。

本来は、これらの信念対立を解決するのは「エビデンス」です。

しかし、エビデンスの使い方を間違え、エビデンスを振りかざしてしまうと対象者は聞く耳を持ちません。

アドラー的であり、コヴィー的ですが、他人を動かすことは出来ません。

自分が変わることが、相手を動かす最も簡単なプラクティスです。

北風と太陽よろしく、これらの検査を全面に出すというよりは、「使いよう」が最も大切です。

検査の話から、使い方の話になってしまいました。

何でもそうですが、臨床現場では「人」が動かないと前に進みません。

これらの共通認識を持ち、診療に様々な角度からアプローチできればよいな、と思います。

 

まとめ

 
  • 検査は使いよう
  • 根拠に基づく検査かつ簡便な検査が使い勝手がよい
  • 日々のプラクティスは、このような雑誌を景気に定期的に見直す
 

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