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はじめに
プライマリケアにおいて、根拠(エビデンス)のある薬剤は、主に長期予後改善効果を期待して投与されます。
薬剤中止に伴う弊害
例えば、スタチンを中止しても心血管イベントは8年間増加しないともいわれています。
個人的な解釈ですが、今後の生命予後が10年以上ある場合は、服用を検討しても良いのかもしれません。
ある研究結果では、スタチンを中止しても8年間は心血管死亡率は上昇しないとされています。
ただし、全死亡率は上昇していますが。
骨粗鬆症に対するアレンドロン酸に関しても、5年間は臨床的な骨折を増加させないとされています。
ただし、骨密度は減少します。
何のためにその薬を使用しているのか
これらの研究のように、薬剤を使用する際は何のために使用しているのかを意識することが重要になります。
例えば、今現在の血圧を下げることは妥当なのか、といった臨床的疑問と同様です。
今現在の血圧を下げるという行為は、併存疾患の無い方にとっては特に問題になりません。
ただし、高血圧の期間が長期に続く場合に問題になります。
特に高齢者の場合は、腎臓に代表されるように臓器障害が出やすいです。
そのために、血圧を下げる薬剤を使用することで、更に血圧を下げてしまうことで起立性低血に伴う転倒の増加や、腎機能の悪化など弊害の方が前面に出てしまう可能性があります。
今回の研究
今回の研究である、スタチンに関しても基本的には長期的な心血管死亡率やイベント減少を目的に使用されます。

副作用
当然ですが、スタチンにも副作用があります。
有名なのは、横紋筋融解症が有名です。

スタチンのNNT
ちなみにスタチン使用により、心血管イベントなどのリスク減少効果は、NNTだと100を超えます。
NNTとはNumber needed to treatと呼ばれるもので、何人治療したら何人のイベント(例えば死亡率など)減少効果が得られるかというものです。
つまり、スタチン介入による利益を得られるのは、少し粗暴な議論ですが100人治療して99人は意味がないとも言えます。
高齢者対象
今回の研究の特徴は、高齢者対象としているところです。
最近は、高齢者対象の研究も少しづつでてきており、ブラックボックスとも思われていた、(超)高齢者に対する治療戦略も根拠として参照できるということは悪いことでは無いと思います。

寿命の側面も
ただし、少し話はそれますが、寿命という側面もありますので、そのあたりも含めて最も大事なのはSheard decision makingであり、そのフェーズとして最近日本語では人生会議とよばれるACP(アドバンスケアプランニング)の機会を持つことが重要だということに変わりありません。
結果として、
結果的には、スタチンは使ったほうが良さそうです。
とはいえ、先に書いたように薬物相互作用などの副作用は散見されます。
ほかには、観察研究ですので最終的には、ランダム化比較試験を行わなければなんとも言えませんが、過去高齢者に対する研究がなかったという観点からは、リスクのある方はスタチンの継続を検討してみても良いのかもしれません。
【背景】
歴史的研究の知見から,LDLコレステロールの上昇は,70歳以上の患者における心筋梗塞やアテローム性硬化性心血管系疾患のリスク増加とは関連していないことが示唆された.我々はこの仮説を70~100歳の現代人の集団で検証することを目的とした。【方法】
我々は、ベースライン時に動脈硬化性心血管系疾患や糖尿病を有しておらず、スタチン系薬剤を服用していないコペンハーゲン一般集団調査(CGPS)の対象者(20~100歳)を解析対象とした。LDLコレステロールの測定には標準的な病院のアッセイを用いた。心筋梗塞と動脈硬化性心血管病のハザード比(HR)と絶対イベント率を算出し、1つのイベントを予防するために5年間で治療に必要な数(NNT)を推定した。【結果】
2003年11月25日から2015年2月17日までの間に、91 131人がCGPSに登録された。平均7.7年(SD3.2)の追跡期間中(2018年12月7日まで)に、151515人が初の心筋梗塞を発症し、3389人が動脈硬化性心血管系疾患を発症した。LDLコレステロールの1.0 mmol/L上昇あたりの心筋梗塞のリスクは、全集団で増大し(HR 1-34、95%CI 1.27-1.41)、すべての年齢層、特に70~100歳の人で増幅した。動脈硬化性心血管系疾患のリスクも、LDLコレステロールが1-0mmol/L増加するごとに全体で増大し(HR 1.16、95%CI 1.12-1.21)、すべての年齢群、特に70~100歳の人で増幅した。また、心筋梗塞のリスクは、80~100歳の人では3.0mmol/L未満に対して、LDLコレステロールが5.0mmol/L以上(すなわち、家族性高コレステロール血症の可能性)の人では3.0mmol/L未満で上昇した(HR 2-99、95%CI 1.71-5.23)、70~79歳の人では1.82、1.20-2.77で上昇した。LDLコレステロールが1.0 mmol/L上昇するごとに1000人年あたりの心筋梗塞と動脈硬化性心血管系疾患のイベント数は70~100歳で最も多く,イベント数は若い年齢ほど少なかった。すべての人に中等度のスタチンを投与した場合の心筋梗塞または動脈硬化性心血管系疾患のイベントを1件予防するための5年間のNNTは、70~100歳で最も低く、年齢が若いほどNNTは増加していた。【結論】
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)32233-9/fulltext?dgcid=raven_jbs_etoc_email
現代の一次予防コホートにおいて,LDL コレステロールが上昇している 70~100 歳の人は,心筋梗塞と動脈硬化性心血管病の絶対リスクが最も高く,1 回のイベントを予防するための 5 年間の推定 NNT が最も低かった.我々のデータは、増加傾向にある70~100歳人口における心筋梗塞や動脈硬化性心血管疾患の負担軽減を目的とした予防戦略に重要である。